EYのチームはこのほど、250以上の世界の大手シングルファミリーオフィス(SFO)を対象に、圧力が大きく急速に変化する今日の環境におけるSFOの優先事項に関して、より深い知見を集め、共有することを狙いとした調査を実施しました。
EYのシングルファミリーオフィス調査は、SFOが自らの能力をどのように認識しているか、成長機会や市場の課題をどこに見いだしているか、そして、ベストプラクティスからどのように学んでいるかについての核心に迫ることを目的として、委託して行われました。今回の調査で得られた情報を活用し、ファミリーに以下の支援を行います。
- 長期的価値の創造と保護
- ファミリーオフィスの戦略と業務の最適化
- 目的、優先事項およびレガシーを軸にしたイノベーション
経済・社会・地政学上の混乱が加速し、その多くが予測困難な時代において、SFOの戦略的役割は増⼤・拡⼤し続けています。
大手SFOに話を聞いたところ印象的だったのは、その所在地や業務内容に関係なく、多くの共通の重点領域が浮き彫りになったことでした。
主な調査結果はこれらの重点領域にわたって示されており、回答者が共有したインサイトを反映しています。
- 富と規制
- デジタルトランスフォーメーション
- リスクとレピュテーション(評判)
- 戦略とガバナンス
この4つの重点領域それぞれについて、変化する環境に対応し、ファミリーオフィスのステークホルダーに最高水準のサポートを提供するために大手SFOが取っている行動とともに、順番に紹介していきます。
1つ目の重点領域である富と規制(経済や、おそらく最も重要な税務政策や透明性イニシアチブなど)に関しては、変化のペースが非常に速いことが挙げられます。富と規制を巡る状況の変化は、ファミリーオフィスの戦略・計画・実行のあらゆる側面に影響を与えており、その発展の速さから、かつてないほどの敏しょう性が求められています。例えば、世界中の国・地域が、より広範な経済・社会政策上の問題に取り組むためのプラットフォームとして、税務政策や透明性イニシアチブを利用するようになってきています。ファミリーのステークホルダーを支援する戦略的焦点を維持しながら重要な義務を果たすためには、これまで以上に新鮮な視点が必要とされています。
2つ目に、SFOの重要な優先事項として、テクノロジーやデジタルトランスフォーメーションのトレンドは、SFO自体だけでなく、関連するビジネスやファミリー自身に関して、より多く取り上げられていることが分かりました。サイバーセキュリティであれ、効率向上とリスク管理のためのインテリジェントオートメーションであれ、多くのSFOが明確に「デジタルファースト」の考え方を推進しています。デジタルトランスフォーメーションは、ファミリーと事業運営の双方において、SFOに非常に大きな機会と重要な検討事項を提供します。これからは破壊的な技術(従来の技術や業界の価値基準を根底から覆す程の革新的な技術)の時代です。
SFOによって提起された3つ目の重点領域は、拡大するリスクとレピュテーションに関する検討事項を管理するための、より高度かつ厳密なモデルの必要性でした。リスク管理は、ほとんどのSFOにとって長い間戦略的焦点となってきましたが、多くのSFOは、その範囲、方法およびリーディングプラクティスを再検討する必要性を感じています。これを怠ると、ファミリーやファミリーオフィスのリーダーが予期せぬ事態に晒される恐れがあります。新しいリスクとレピュテーションに関する枠組みを推進する原動力の1つは、価値とリスクの定義を拡大し、環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する新しい検討事項を含めることです。SFOは、ESG重視の傾向がより顕著になる中で、特に進化する多世代にわたるファミリーの優先事項やレガシーに関連し、この領域をより重視し、行動すべき領域であると位置付けました。
このような背景の中、何よりもSFOや著名なファミリー自身が、より高度で戦略的なガバナンス構成を設計および運用しようとしています。デュアルガバナンスは、ビジネスのガバナンスとファミリーのガバナンスとを区別して調整し、必要に応じて統合し、ファミリーオフィスの戦略的かつ重要な役割を考慮するもので、明確化や実行、ステークホルダーの連携を促進します。