ニュースリリース
2024年4月10日  | Tokyo, JP

EY調査、企業はグローバルな税制改革が二重課税を招くことを懸念

プレス窓口

  • 移転価格の専門家の84%が、グローバルな税制改革により二重課税のリスクが高まると回答
  • 75%が、異なるシステムの混在と、テクノロジーを有効活用できていないことが最大の課題と回答
  • リスクの高まりで、移転価格の確実性確保の動きに拍車

EYは、新しい移転価格に関するレポート「2024年EY移転価格動向調査(以下、本調査)」を発表したことをお知らせします。本調査によると、グローバルな税制改革とテクノロジーを有効活用できていない現状があり、経済的不確実性が、企業の移転価格の対応能力に非常に大きな負担をかけていることが明らかになりました。

移転価格は世界中の企業にとって重要な税務部門であり、子会社間の国境を跨ぐ支払い、不動産のリース、知的財産権のライセンスなど、企業内の取引を監督しています。本調査の回答者は、サプライチェーンのシフトやグローバルな税制改革、インフレなどの要因により、実効税率が不安定化する時代に入りつつあるとみています。

47の国と地域の移転価格の専門家やステークホルダー1,000名を対象としたグローバルな調査を実施した結果、回答者の84%が、グローバルな税制改革に伴い二重課税の「中程度」または「重大な」リスクに直面していることが分かりました。また、71%が、グローバルミニマム課税は移転価格ポリシーに「中程度」または「重大な」影響を及ぼすと回答しています。移転価格ポジションについて事前に確実性を確保することを求める回答者は倍増しました。

EY Global Transfer Pricing LeaderのTracee Fultzのコメント:
「グローバルな税制改革の実施をめぐる複雑性が引き続き税務部門に打撃を与えています。二重課税のリスクが高まる今、確実性の確保は極めて重要です。そのためには、タックスプランニングから、移転価格ポジションについての確実性を可能な限り高める取り組みへと、抜本的な転換を図る必要があります。つまり、可能な限り先を見越して、現行および予想される税務係争に対応していかなければならないということです」

移転価格戦略に影響を及ぼす外部要因

外部圧力の連鎖が、幅広い経営判断に影響を及ぼし、移転価格部門のリーダーが果たす役割を複雑なものにしています。回答者の77%が、インフレは今後3年間で移転価格ポリシーに「中程度」または「重大な」影響を及ぼすと答え、51%が、金利上昇は中・長期的な企業間債務に係る価格設定(intercompany debt pricing)に影響を及ぼしていると回答しました。

さらなる課題をもたらしているのが、サプライチェーンの変化/変更と、環境・社会・ガバナンス(ESG)目標に向けての取り組みです。28%が、ESGポリシーに合わせて移転価格ポリシーをすでに変更したと答え、また42%が、地政学的問題を受けて、過去3年間にある国や地域から、他の国や地域に生産拠点を移転したと回答しています。今後3年間でサプライチェーンの変化/変更が移転価格ポリシーに「中程度」または「重大な」影響を及ぼすと予想している人も10名に6名(62%)いました。
Fultzは、「組織がサプライチェーンリスクに対処し、気候目標を達成するために事業運営戦略を調整するなか、今後は税務部門も事業目標の変化に合わせて移転価格へのアプローチを調整する必要があるでしょう。税務データと移転価格データを標準化する明確なロードマップが必要です。これらのデータへの効率的なアクセスと分析が可能になり、こうした課題に企業がより的確に対応する一助となります」と述べています。

新しいテクノロジーを導入し、戦略的価値を高める

75%が、テクノロジーを有効活用できていないことが最大または2番目に大きな課題と回答し、67%が、「データの質の低さ」を最大または2番目に大きな課題に挙げています。興味深いのは、73%が、より高度な移転価格業務関連技術への投資はリスク管理の「中程度」または「重大な」向上につながると回答し、88%が、移転価格関連技術で今後3年間にコストを削減できると予想していると答えた点です。

EY Global Vice Chair – TaxのMarna Rickerのコメント:
「企業が今、世界各地で直面する極めて複雑な新しい税務情報開示要件は数多くあり、近い将来さらに増える見通しです。この要件の多くには、取引の発生に伴う源泉地での課税が盛り込まれています。
こうした要求を税務の専門家が満たすサポートの鍵を今後握ると思われるのが、生成AIやロボティクスオートメーション、量子コンピューティングなどの新しいテクノロジーです。とはいえ、現在のところ企業の多くが、こうしたテクノロジーの利用・導入の方法を学ぶ、ごく初期段階にあります。税務を重視した、データ/テクノロジートランスフォーメーションのロードマップを策定することが肝要です。チームがこうした課題に対処する体制を整える一助となります」

リスクの高まりで、移転価格の確実性確保の動きに拍車

今回の調査の結果から、事前確認(APA)に関心を持つ企業が劇的に増えていることも分かりました。事前確認とは、税務申告前に企業が複数年間、企業間取引の条件について税務当局と協議できる制度です。それにより、移転価格ポジションをめぐる確実性を高め、税源浸食と利益移転(BEPS)2.0導入後の環境で、より多くの価値を創造することができます。二国間APAと多国間APAが「非常に役立つ」と答えた人は、それぞれ61%と59%で、2021年の34%と30%から大幅に上昇しました。また、国内APAは今後3年間、移転価格関連の係争への対応で「非常に役立つ」と回答した人は59%で、やはり2021年の29%から約倍増しています。

Fultzのコメント:
「移転価格部門は今こそ、まず計画、実行してから、最終的に税務ポジションを守るという従来の直線的なアプローチから脱却しなければなりません。今後は、自動化とデータの標準化を活用した係争解決計画の整備など、確実性を確保する最善な戦略に注力すべきです」

結局のところ、移転価格ポリシーを支えるのは企業の事実とデータです。現在の規制環境と財務環境の変化を受けて、移転価格の専門家は、経営幹部と協働し、今まで以上に先を見越して、移転価格問題に関わる確実性を高め、経済的・地政学的混乱に早期に対応することが求められるようになると考えられます。

EY Japan 国際税務・トランザクションサービス 移転価格アドバイザリーリーダー EY税理士法人 パートナー 谷津 剛(やつ たけし)のコメント:
「BEPS第1、第2の柱の最終化、実施時期が迫る中、サプライチェーンの複雑化やインフレの深刻化に伴う経営環境の複雑化と相まって移転価格対応の難易度は大きく高まっています。これらの状況は、日本企業にとって非常に重要な経営課題と言えます。一方、移転価格対応のための人員、予算等のリソースは極めて限定的であることがほとんどであり、グローバルな範囲で包括的かつ高精度な対応を実現することは、従来の延長線上では非常に困難です。税務ガバナンスの強化、現場を巻き込んだテクノロジーの活用、内外の専門家の有効活用など、さまざまな角度からの積極的なアプローチが求められていると言えるでしょう」

本調査について

2024年のEYの移転価格動向調査は、2023年9月から10月にかけて実施しました。このダブルブラインド調査(調査する側も、される側も相手が分からない)では、47の国と地域における19業界の大企業の経営幹部1,000名を対象に、国際税務と移転価格のさまざまな問題について質問をしました。EYが調査のスポンサーであることは明かされていません。

※本ニュースリリースは、2024年1月9日(現地時間)にEYが発表したニュースリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

英語版ニュースリリース:
Businesses fear global tax reform will lead to double taxation, according to new EY survey


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