外部委託は必ずしも容易にできるとは限らない
給与計算サービス事業者への業務委託は容易にできると答えた回答者は全体の42%にとどまりました。さらに、複数の分野における給与計算サービス事業者に対する評価を尋ねたところ、分野を問わず「優れている」を選んだ回答者はごくわずかで、「普通」や「あまり良くない」を選んだ人が、「優れている」や「とても良い」を選んだ人を上回りました。外部委託で問題を抱えている残りの58%の企業が、その状況を改善するために今すぐ取り組むことのできるソリューションがあります。
企業によっては、外注先に関する状況を変えることが理にかなった解決法となる場合もありますが、現在のシステムとパートナーを見直すことで業務を改善できる可能性があります。非常に有益な取り組みの1つとして、テクノロジーの評価を行い、適切に設定されていない機能がないか、あるいはモジュールを追加できるところはないかを確認することなどがあります。給与計算サービス事業者の重要業績評価指標(KPI)の設定や厳格化、作業の重複の解消や役割と責任の明確化を含めたプロセスの刷新、承認申請の適切な基準と管理策の決定などを行うこともできます。
利用する給与計算サービス事業者の最適な数は?
自社に最適な給与計算サービス事業者の数について、多くの企業からEYの見解を尋ねられます。万能な答えはありませんが、何がうまく行き、何がうまく行かないかが、今回の調査結果からよく分かります。2013年に調査が始まって以来、一貫して得られた重要な知見は、事業者1社だけでは自社のニーズに対応できないということです。それでも、利用する事業者の数をある程度絞り込むことにはメリットがあると企業は考えています。
企業が事業を展開する国の数と、推奨する給与計算サービス事業者の数の間には相関関係がある
今年の調査結果によると、利用する給与計算サービス事業者の数は平均で5社でした。当然のことながら、世界各国に数多くの拠点を持つ大規模なグローバル企業ほど、利用する事業者の数は多くなります。このように、企業が事業を展開する国の数と、利用する事業者数には強い相関関係があります。
複数の事業者の利用は課題を生みかねない
EYのデータから、6社以上の給与計算サービス事業者を利用している企業の場合、管理とグローバルレポーティングの難しさについて言及する回答者の数が、そうでない企業に比べ倍以上多いことが分かりました。また、主な課題としてデータ関連の問題を挙げる回答者の数も、そうでない企業を大幅に上回っています。
コンプライアンスとデータに関わる課題についてのセクションでも述べたように、給与計算担当者がグローバルな戦略を策定し、リスクを軽減できる対応策をいくつかご紹介します。
- EYなどの外部委託先やアドバイザーとの関係を構築し、緊密な関係を維持する。
- AIやロボティクスなどのテクノロジーを活用し、給与計算業務の処理を最適化する。
- 給与部門、人事部門、財務部門が協力して、人事データ、給与計算、財務部門の接続性を改善する協調的なプロセスを構築する。
- コンプライアンス面の変更と、それがGDPRなどの政策からどのような影響を受けているかを把握する。離職者を減らし、新たな人材を採用し、給与計算担当者のやる気を高める。第1章でも述べたように、人材の呼び込みとつなぎ留めを強化することが、人事担当者にとっての当面の課題となるでしょう。
こうした課題を念頭に置きながらも、企業は利用する事業者の数を絞り込みたいと回答しています。全体的に見て、55%がある程度の絞り込みにはメリットがあると考えており、平均すると2年以内に事業者を4社に絞り込むことを望んでいます。とはいえ、事業者1社だけで組織の課題を解決できるとは考えていません。注目すべきなのは、事業者1社だけで自社の全てのニーズを満たし、戦略的目標を達成することができるとした回答者が38%にとどまった点です。
給与計算業務の外注先の選定
外部委託先にとってベンダー満足度は引き続き課題であり、企業は外部委託関係に対する見方を再検討するようになってきました。この結果、オペレーティングモデルの変更を望んだり、現在の外注先により多くを求めたりする企業が増えています。エンドカスタマーエクスペリエンスを向上させるために、企業は頻繁に外注先を変えたり、給与計算業務の一部を内製化したりしています。外注先はというと、サービスの質を高め、業界内のイノベーションを推進するために、よりグローバルに統合された、使い勝手の良いソリューションを提供するようになっています。