ケーススタディ
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ケーススタディ
協和キリンのグローバル戦略に付加価値を生み出す国際税務のワンシステムとは
日本発のグローバル・スペシャリティファーマである協和キリン株式会社(以下、協和キリン)が課題としていた国際税務の効果的な管理運用。EYは世界各国に展開する拠点の税務をワンシステムで管理するプロジェクトに構想段階から伴走し、世界に一つしかないシステムを実現させました。
The better the question
グローバルなビジネス成長と税務ガバナンスを両立させる方法とは?
協和キリンは2018年のグローバル戦略品の発売から、国内外に広くバリューチェーンを展開する急速なグローバル成長に伴い、国際税務の管理業務が拡大。アンメット・メディカルニーズ(未充足の医療ニーズ)を満たす医薬品を患者さんへ届けるべく事業を推進したい同社にとって、無視できない課題となっていました。
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協和キリンは今までに有効な治療法が確立していなかった疾患の医薬品によって病気と向き合う人々の人生を変え、笑顔をもたらすことを提供価値として掲げています。患者数が極めて少ない希少疾患や難病の患者さんにも医薬品を届けるべく、研究開発に注力しています。
広く世界に35社の連結子会社を展開する同社は、日本・EMEA・北米・アジア/オセアニアの4つの「地域」軸、製薬会社として必要な「機能」軸、そして「製品」軸を組み合わせたマトリックスマネジメントを行うOne Kyowa Kirin体制を構築し、グローバルな事業体制を確立しています。
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2023年に海外売上比率は65%にのぼり、国や地域を越えた複雑な取引が増加しました。
医薬品を市場に提供するまでには、研究 、開発 、製造、品質保証、薬事、安全性監視など、さまざまな部門がバリューチェーンを構成しています。バリューチェーンがグローバルにわたっている同社にとって、ビジネスプロセスの停滞は大きなビジネスリスクになります。
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One Kyowa Kirin体制では、ビジネスサイドによる「機能」軸がグローバル一体となってビジネスアクティビティの標準化を推進するのに対し、税務サイドは「地域(国)」軸で、多国籍企業の責務として必要とされる利益や費用負担の各国への適正な管理と配分を行うため、ビジネスのスピード感との間でギャップが生じていました。
さらに、グローバルなビジネス活動に適合した予算管理システムが導入され、予算管理外となる会社間の内部取引は見過ごされやすく、各国・法人別の予測データの作成が困難となるなど、ビジネス予算管理と財務管理の両立はグループ全体の問題に発展し得る状況に直面していました。
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このように拡大するグローバルなビジネス管理とグループ税務ガバナンスのリソースを効果的に圧縮し、全体コストの最適化を目指すことで、社内資源を有効な治療方法が確立していない疾患の患者さんへLife-changing な価値のある医薬品を届けられるようにいち早く割り当てていくことは、協和キリンの理念実現のために重要なことでした。
「ビジネスのグローバルスタンダードを推進したい現場担当者との調整で、グローバルという名の国に納税できたらいいのに、と冗談を言ってしまうほどでしたが、これは深刻な状況になると解決策を真剣に考え始めていました」と、財務経理部 国際税務グループ グループ長の石坂 紀子氏は当時を振り返ります。
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「グローバルなコラボレーションを推進するという経営層が目指すビジョンと、法人ごとに適正なサービス対価を分析して請求する非常に労力がかかる税務コンプライアンス対応とのギャップを解消しなければならない。この課題を解決するには、最新税制に対する深い知見と効果的なシステム設計、この2つが必要だと考えていました」
協和キリンは国際的な課税ルール「BEPS」が始まる以前から EY をアドバイザーとして起用し、ナレッジを深め合っていたという経緯がありました。
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The better the answer
ワンシステムでオペレーションを一元化。工数削減だけではなく経営管理全体に有効なシステムを実現
クロスボーダー取引の全てを整理することから取り組み、今までどこにも存在しなかったオンリーワンのシステムを作り上げ、経営戦略に活用しています。
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プロジェクトが発足したのは2022年。EYは国内外の税務、システム(ウォルターズ・クルワー社が提供する経営管理システム CCH® Tagetik(以下、CCH® Tagetik))のプロフェッショナルからなるチームを編成して、協和キリンが抱えていたクロスボーダー取引の課題と、グローバル税務戦略を見据えた経営管理全体の課題解決までを視野に、ワンチームとなって一から取り組みをスタートさせました。
プロジェクトは、まずクロスボーダー取引と税務全般について棚卸しすることから着手。グループ内で発生している取引に伴う税務上の課題整理を行い、予算および実績管理の業務観点からも実現性の高いフローを再構築していきました。
「このシステムはまだどこにもなく、私の頭の中だけの構想でした」 チームでディスカッションを重ねるプロセスを経て、システムの形を具現化していくことが実感できたという石坂氏。
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「税務規制に準拠したシステムは精緻に際限なく作り込むことができてしまう。しかし、実行できなければ意味はないので、現実的で合理的に要点をつかんだ規制対応をチームで組み上げていきました。既存の予算システムや会計システムのハブとなって、税務上の正しい配賦データを連携する仕組みづくりについて、協和キリンが直面しているビジネス上の真の課題とも向き合って、じっくりと建設的な議論を重ねることができたことが本当に良かったです」
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こうして完成したシステムは、国をまたぐ関係会社間の費用配賦計算、請求書発行業務を自動化し、担当者の工数を大幅に削減しました。
これまで何百とあった関係会社間の請求、各地域の担当者が個別に行っていた業務運用を共通のシステムに統一して標準化し、ワンタイムで全て実行できる仕組みを実現しました。
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「このシステムのワークフローに沿うことで、予算管理と実績請求の両方が間違いなく導かれ、安心して業務を進めることができる、いわば”灯台”のような存在を作ることができたことに、大きな達成感を感じています」
さらにシステムには税務観点で配賦したデータが予算/実績管理システムに自動連携される機能、各地域での製品別、国別の単独/連結P/Lを自動作成する機能が実装されています。
「グローバルの活動部分の定量ボリュームを測るにはどう見たら良いか、プロダクト個々の利益性を見るにはどう見れば良いかといったニーズがありますが、システムで生成したデータを経営陣が見た時に、財務観点での情報を的確に提供できることに手応えを覚えました。プロセスやオペレーションの標準化や工数削減だけではなく、財務および税務の観点から正確な経営判断を行うための情報提供を実現していることがプロジェクトの重要な成果だと実感しています。経営管理に不可欠な財務データと税務情報を的確かつ迅速に入手し、これらの情報を有機的に役立てていただくことで、経営戦略の策定や意思決定においてより有効な方針を打ち出すことができるサポート基盤を築くことができました」
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システムによって、短期的な視点の課題解決だけではなく、少しでも早く、そしてより多くの患者さんに笑顔をもたらし、“人生を変えていく”価値を提供することにも中長期的な視点から貢献できたと言います。
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協和キリンのグローバルビジネス全体を網羅的に管理できる最終形を目指す
プロジェクトにより協和キリンは、拡大するグローバルビジネス管理と、さらに税務ガバナンスのリソースを圧縮し、全体コストを最適化。その分を同社の理念であるLife-changingな価値の実現につなげる情報基盤を確立しました。
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今回構築したシステムによって、協和キリンはグループ内の役務サービス、グローバル経費の最適請求を実現することができました。今後はロイヤリティ請求や個々のサービス請求までもカバーし、それが予算と予測データ、実績処理の両方につながる仕組みでグループ全体の取引をカバーできるようにスコープを広げ、豊かな財務データを将来の活用につなげることがプロジェクトの展望です。
「今後はわれわれのグローバルビジネス全体を網羅的に把握し、管理できる形まで発展させることを目指しています」(石坂氏)
CFO & Global Finance Headの川口 元彦氏はプロジェクトについてこう語ります。
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「システムのプロジェクトにおいて大事なのは、そこで使うツールをいかに熟知しているか。ツールによってできることは変わってくるので、ユーザーが要望していることとツールでできることをうまく融合させないと優れたシステムはできないと考えています。今回はCCH® Tagetikのシステムに精通したメンバーがチームにアサインされたことと、チームのイノベーションへの情熱の力が成功の鍵だと思っています」
今回のプロジェクトの成功要因は、石坂氏率いる協和キリンチームとEYチームそれぞれの専門性がワンチームとして発揮されたことだと川口氏は言います。
「システムの完成度は、プロジェクト開始当初の期待値を下回ってしまうことが多いですが、グローバルCFO会議でも『素晴らしいものを作ってくれた』という声が寄せられました」
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川口氏は、プロジェクトの今後の展開にも大きな期待を寄せています。
「私は、このシステムは今後も進化の余地があると考えています。このプラットフォームをベースに、きっとイノベーティブなメンバーがまた素晴らしいアイデアを考えてくれるものと期待しています」
プロジェクトが初期フェーズを終え次の段階を迎えた今、ここまで一丸となって乗り越えてきた課題を教訓に、システムの可能性をさらに高めていきたいと石坂氏は語ります。プロジェクトを担当したEY税理士法人の山口君弥は、今後も専門性を生かして伴走していくことでプロジェクトの発展に貢献していきたいと意欲を見せます。
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石坂氏:「業務とシステムを熟知したメンバーをアサインいただいて初期フェーズを終え、そして継続して次フェーズにも移行できる体制を整えていただいたことに感謝しています。ここまで一緒に頑張ってきたナレッジの蓄積を次に生かしていきたいです」
EY山口:「そうですね、このシステムはさらに発展できる可能性があると考えています。今回はEYの幅広いサービスラインの中で、“タックス”と“コンサルティング”という2つのサービスラインでご支援をしています」
一般的に、専門分野が異なるメンバーがプロジェクトにアサインされ、推進していく過程ではさまざまな困難に直面します。しかし、EYは「Building a better working world ~より良い社会の構築を目指して」というパーパス(存在意義)のもと、異なるスキルを持つプロフェッショナルがタッグを組んで課題を解決できることを強みとしています。
今回のケースでも、それぞれの専門サービスをうまく融合したことによりプロジェクトを成功に導きました。
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石坂氏:「システムに熟知したメンバーとタックスのメンバーが同時にアサインされ、コミュニケーションのズレが生じないことは、ワンチームとして進めていく上での安心感になります」
クロスボーダー取引における税務管理の観点から立ち上がった今回のシステムプロジェクトは、これからさらに協和キリンのグローバル経営戦略の羅針盤として、その役割を高めていくものと期待されています。
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【EY Japan】日常生活、政治経済、グローバル税務における変化が日常となっています。その変化に対応するために、サステイナブルなグローバル税務ガバナンス体制の構築をサポートします。
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テクノロジーは、税務がグローバルなデジタル経済の要件に応えるため、新たなデジタル税務の作業を定義して支えています。税のビッグデータ管理により、効率的なコンプライアンスが可能となり、戦略的なビジネスの意思決定を円滑に進めることができます。
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EYがこれまで培ってきた業績管理・管理会計に関する深い知識と、Wolters Kluwer社が提供する統合プラットフォームアプリケーション(CCH® Tagetik)を組み合わせて、クライアントの経営管理の高度化をサポートします。
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