令和5年度税制改正大綱

令和5年度税制改正大綱

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令和5年度税制改正大綱が昨年12月に公表されました。本稿では、主要な改正・見直し項目について概要を説明します。


本稿の執筆者

EY税理士法人 エグゼクティブ・マネジメント 公認会計士 税理士 南波 洋

1993年から、太田昭和アーンスト アンド ヤング(現EY税理士法人)にて、日本企業・外資系多国籍企業に対する国内および国際税務アドバイザリー業務に従事。国際税務、税制改正、組織再編税制などに係る講演、寄稿、執筆多数。日本公認会計士協会 租税調査会国際租税専門委員会 専門委員(2004年~2020年)。EY税理士法人 マネージャー。


要点

  • 研究開発税制の見直し
  • グローバルミニマム課税の導入
  • NISAの拡充・恒久化

Ⅰ はじめに

令和4年12月16日に、令和5年度与党税制改正大綱が公表されました。本稿では、大綱で明らかにされた主要な改正・見直し項目の概要を説明します。なお、今後の国会における改正法案審議の過程において、一部項目の修正・削除・追加などが行われる可能性があることにご留意下さい。


Ⅱ 法人課税

1. 研究開発税制の見直し

投資を増加させるインセンティブを強化するため、一般型における税額控除率のカーブを見直します。控除率の下限を1%(現行:2%)に引き下げ、その上限を14%(原則:10%)とする特例の適用期限を3年延長します。また、税額控除上限(法人税額の25%)に到達した企業に対してもさらなるインセンティブを付与するために、試験研究費の増減率に応じて税額控除上限を変動させる仕組みを導入します。オープンイノベーション型において、研究開発型スタートアップ企業の定義を見直して対象を大幅に拡大します。博士号取得者などの高度人材を研究開発に活用する場合の優遇措置も導入されます。サービス開発のための試験研究について、既存ビッグデータを活用する場合も対象とする等の見直しが行われます。

2. オープンイノベーション促進税制の見直し

新規発行株式の取得に加え、ニューマネーを伴わない既存株式の取得の場合も適用可能となります。その際、取得から5年以内に「成長要件(売上高1.7倍かつ33億円以上など)」を満たした場合は減税メリットがその後も継続する仕組みとなります。

3. その他

  • 法人が期末において有する暗号資産のうち、自己が発行した暗号資産でその発行の時から継続して保有するものを、時価評価により評価損益を計上するものの範囲から除外することとされます。
  • スピンオフ税制が拡充されます。改正により、企業が一部の出資持分(20%未満)を継続保有しながら完全子法人を分離させる場合も、一定の要件を満たせば税制適格が受けられるようになります。

Ⅲ 国際課税

1. グローバル・ミニマム課税の導入

BEPS2.0における国際的合意は、市場国への新たな課税権の配分(「第1の柱」)とグローバル・ミニマム課税(「第2の柱」)からなります。「第2の柱」については、わが国において導入を進めることになりました。令和5年度税制改正においては、制度の詳細に係る国際的な議論の進展や、諸外国における実施に向けた動向等を踏まえ、所得合算ルール(IIR:Income Inclusion Rule)に係る法制化が行われます。その際、対象企業の事務手続の簡素化に資する措置が導入されます。適用開始時期については、諸外国の動向を踏まえることが重要であり、対象企業の準備に要する期間を確保する観点も考慮し、令和6年4月以後に開始する対象会計年度とします。軽課税所得ルール(UTPR:Undertaxed Profits Rule)と国内ミニマム課税(QDMTT:Qualified Domestic Minimum Topup Tax)を含め、経済協力開発機構(OECD)において来年以降に実施細目が議論される見込みであるものについては、国際的な議論を踏まえ、令和6年度税制改正以降の法制化が検討されます。

2. 外国子会社合算税制の見直し

「第2の柱」の導入により対象企業に追加的な事務負担が生じることを考慮し、制度の見直しが行われます。特定外国関係会社の各事業年度の租税負担割合が27%以上(現行:30%以上)である場合に、会社単位の合算課税の適用が免除されることになります。また、申告書添付要件のある外国関係会社に関する書類の範囲から一定の部分対象外国関係会社に関する書類が除外されて保存要件のみとなります。これらの改正は、「第2の柱」の適用開始に合わせて、令和6年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。


Ⅳ 所得・資産・消費課税

1. NISA拡充・恒久化

岸田文雄政権が掲げる「資産所得倍増」に向け、少額投資非課税制度(NISA)が令和6年1月に抜本拡充されます。非課税保有期間を無期限化するとともに、NISAは恒久的な措置となります。年間投資上限額の合計は360万円となります(内訳は「つみたて投資枠」120万円と「成長投資枠」240万円)。また、高所得者層に対する際限のない優遇とならないように、一生涯にわたる非課税限度額(1,800万円)が設定されます。「成長投資枠」は1,200万円が上限とされます。

2. 相続税の見直し

「相続時精算課税制度」の使い勝手を向上させるため、暦年課税と同水準の基礎控除(110万円)が創設されます。また、現行制度上、相続開始前3年以内に受けた贈与は相続財産に加算することになっていますが、この期間が7年に延長されます。

3. インボイス制度の見直し

令和5年10月から消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)が施行されます。円滑な制度移行と事業者の事務負担軽減のために、税制上の措置が講じられます。これまで免税事業者であった者がインボイス発行事業者になった場合の納税額を売上税額の2割に軽減する3年間の負担軽減措置を講ずることにより、納税額の激変緩和を図ります。また、インボイス制度の定着までの実務に配慮し、一定規模以下の事業者の行う少額(支払対価1万円未満)の取引につき、帳簿のみで仕入税額控除を可能とする6年間の事務負担軽減策が講じられます。


Ⅴ 納税環境整備・その他

1. 電子帳簿等保存制度の見直し

電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度については、システム対応が間に合わなかったことにつき相当の理由がある事業者等に対する新たな猶予措置が講じられます。

2. 加算税制度の見直し

高額の無申告や連続する無申告等の事案について、無申告加算税の加重措置等が講じられます。

3. 防衛力強化にかかる財源確保のための税制措置

防衛力の抜本的強化に必要な財源を確保するために、法人・所得・たばこの3税を増税する方針が大綱に盛り込まれました。法人税に関しては、法人税額に対し税率4~4.5%の新たな付加税を課すことになります。中小法人に配慮する観点から、課税標準となる法人税額から500万円を控除することとします。所得税に関しては、所得税額に対し税率1%の新たな付加税を導入します。「復興特別所得税」の税率は1%引き下げ、課税期間は延長されます。以上の措置の施行時期は、令和6年以降の適切な時期とされています。


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サマリー

令和5年度税制改正大綱が昨年12月に公表されました。本稿では、主要な改正・見直し項目について概要を説明します。


情報センサー
2023年2月号

 

※ 情報センサーはEY新日本有限責任監査法人が毎月発行している社外報です。

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