グループ通算制度における投資簿価修正の見直し

グループ通算制度における投資簿価修正の見直し

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令和4年度税制改正によりグループ通算制度における投資簿価修正に見直しが行われます。本稿では、グループ通算制度における投資簿価修正の問題点と令和4年度税制改正での改正点を中心に解説します


本稿の執筆者

EY税理士法人 發知謙次

2018年よりEY税理士法人ビジネスタックスサービス部にて連結納税制度・グループ通算制度の導入支援やコンサルティング業務、連結納税グループを含む法人税申告業務や国内税務アドバイザリー業務に従事している。



要点

  • 令和4年度から適用されるグループ通算制度では、通算子法人株式の投資簿価修正において通算子法人株式の取得価額に含まれる買収プレミアム相当額が株式譲渡時の譲渡原価に算入されないなどの問題点がありました。
  • 令和4年度税制改正では、この投資簿価修正の問題点に対処するため、一定の要件のもと買収プレミアム相当額を通算子法人株式の譲渡原価に算入できる特例措置が設けられます。

Ⅰ はじめに

投資簿価修正は、連結納税制度において子法人が稼得した利益に対する子法人株式の譲渡を通じた二重課税や損失の二重控除の排除を目的として設けられた制度です。令和4年4月1日以後の事業年度から連結納税制度はグループ通算制度に改組され、グループ通算制度では事務負担の軽減及び二重課税や二重控除の排除を強化するために、投資簿価修正の計算方法が大きく変更されました。しかし、グループ通算制度における投資簿価修正の計算方法では、通算子法人株式の取得価額に含まれる買収プレミアム相当額の損金算入機会がなくなるなどの問題点が指摘されていたことから、令和4年度税制改正では、その問題点に対応するための措置が設けられます。

Ⅱ グループ通算制度の投資簿価修正と問題点

グループ通算制度の投資簿価修正は、<図1>のように、離脱する子法人株式の離脱直前の帳簿価額に簿価純資産不足価額を加算し、又は簿価純資産超過額を減算することによって行うこととされています(法人税法施行令119の3⑤、9①六)。

図1 令和2年度税制改正における投資簿価修正

すなわち、離脱法人株式の帳簿価額を離脱法人の離脱直前の簿価純資産価額と一致させることになります。

そのため、企業買収により取得した通算子法人株式をグループ外に譲渡する場合、通算子法人株式の譲渡原価が簿価純資産相当額に修正され、その通算子法人株式の簿価純資産相当額を超える金額で取得していた場合に、その超える部分の金額(いわゆる買収プレミアム相当額)が通算子法人株式の譲渡原価として損金算入できないことから、単体納税・連結納税に比べて不利益が生じ、グループ通算制度の適用がM&Aを阻害する要因となることが懸念されていました。

Ⅲ 令和4年度税制改正の内容と実務的な影響

令和4年度税制改正では、一定の要件を満たす場合に、離脱する通算子法人株式の帳簿価顛について、その通算子法人の離脱時の簿価純資産価額にその子法人株式に係る「資産調整勘定等対応金額」を加算することができる特例措置が設けられます(<図2>参照)。この特例措置の適用を受ける場合、買収プレミアム相当額が通算子法人の譲渡原価として損金算入されることになります(<図3>参照)。

図2 令和4年度税制改正における投資簿価修正
図3 買収時にプレミアムを付して取得した子法人株式をグループ外に譲渡する場合

この「資産調整勘定等対応金額」とは、通算子法人の開始・加入前に通算グループ内の法人が時価取得したその通算子法人株式の取得価額のうち、その取得価額を合併対価としてその取得時にその通算子法人を被合併法人とする非適格合併を行うものとした場合に資産調整勘定又は負債調整勘定として計算される金額に相当する金額をいいます(<図4>参照)。

図4 資産調整勘定等対応金額のイメージ

資産調整勘定等対応金額」の具体的な計算方法は今後公表される政令を確認する必要がありますが、次のような取扱いとなります。

  • 「資産調整勘定等対応金額」は、通算子法人株式の取得時の金額として計算されますが、償却は行われず、譲渡時に譲渡原価に含まれて損金の額に算入されます。
  • 通算子法人株式の時価取得が段階的に行われる場合又は通算グループ内の複数の法人により行われる場合には、各通算法人の各取得時における調整勘定として計算される金額に対応する金額に取得株式数割合を乗じて計算した金額の合計額とされます。
  • 対象となる通算子法人からは、主要な事業が引き続き行われることが見込まれていないことにより通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価制度の適用を受ける法人が除かれます。
  • その通算子法人を被合併法人等とする非適格合併等が行われた場合には零とされます。
  • 本特例措置は、離脱する通算子法人株式ごとに適用の有無を判断することができます。
  • 本特例措置は、通算子法人株式に係る「資産調整勘定等対応金額」について、離脱時の属する事業年度の確定申告書等にその計算に関する明細書を添付し、かつ、その計算の基礎となる事項を記載した書類を保存していることが適用要件となります。

Ⅳ 実務的な影響

連結納税制度からグループ通算制度に移行したグループの連結開始・加入子法人についても本特例措置の対象とされますが、段階的に取得している場合や取得から相当期間経過している場合には、取得時の関連資料の有無により資産調整勘定等対応金額の計算自体が困難な場合が想定されます。また、今後はこの特例措置の適用を見据えて、企業買収時には段階取得ごとに必要な書類を用意しておき、帳簿書類の保存期間を超えて保存しておく必要が生じます。

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サマリー

令和4年度税制改正によりグループ通算制度における投資簿価修正に見直しが行われます。本稿では、グループ通算制度における投資簿価修正の問題点と令和4年度税制改正での改正点を中心に解説します。

情報センサー
2022年4月号

 

※ 情報センサーはEY新日本有限責任監査法人が毎月発行している社外報です。

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