EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EYの関連サービス
-
EYの間接税および国際貿易チームは、税務上の義務を戦略的に果たし、税務係争を解決するサポートを行います。詳細を表示
続きを読む
このように発生した過少申告は、税関における関税での再調査や罰則処分につながる可能性があります。また一方で、不必要なロイヤルティの加算とそれに伴う関税の過払いも、同じく知識不⾜が引き起こす潜在的なコスト要因となります。
関税の観点では、ロイヤルティは輸入貨物に関連する無形資産の経済的価値のみを考慮すべきであり、その他の部分に対する無形資産は課税価格への加算を考慮する必要はありません。前述の靴の例では、例えば輸入国内にある店舗の外観や実際に使⽤されるマーケティングや広告⽤の宣伝材料などが、後者で挙げた輸入貨物に関連しないものに該当する可能性があります。
Ernst & Young Belastingadviseurs LLPのSenior Manager of Indirect TaxであるMartijn Schippersは「ロイヤルティの多くは、関税の観点で課税対象と⾮課税対象の両⽅の要素が含まれています」と説明しています。また、「ロイヤルティに関するルールを⼗分に把握できていない場合、ロイヤルティに含まれる課税・非課税の対象をそれぞれ個別に判断することなく、ロイヤルティ⽀払額の全体を安易に加算してしまうことがあります。その場合は輸⼊関税の過⼤申告となり、余分な税コストが発生することとなる可能性があります」と語っています。
これらのロイヤルティの論点に対応するためには、ロイヤルティ契約のドラフト作成の段階から対策を始める必要があります。関税コンプライアンス確保のためには、契約締結前の早い段階から、税務・財務・移転価格などの専⾨家と自社のバリューチェーンをよく理解している専⾨家とが共同で、契約締結前に合意内容について関税⾯での影響を評価する必要があります。
この段階で契約が正しく整理されていれば、ロイヤルティを課税価格に対して非加算とする可能性が残されています。ロイヤルティ契約には、製品を輸⼊する権利、製品を国内⽣産する権利、商標を使⽤する権利、その地域で製品名を使い、マーケティングと販売の費⽤を負担する権利など、さまざまなバリュードライバーが組み込まれます。バリュードライバー分析を徹底的に実施することで、ロイヤルティの対象とする無形資産を明確に把握し、それらの無形資産の種類に応じた適切な配分を判断することができます。
さらに、ロイヤルティに関する自社内のグローバル・フレームワークを構築し、それらを⻑期的な変化に適合させるアプローチも必要になります。
以上を踏まえれば、ロイヤルティに対する適切なプラクティスの構築に関する作業には大きな負荷を伴います。ただでさえ、本来業務である税務の対応で⼿⼀杯のチームを、関税の観点でのデータ収集・分析といった、時間を要する難しい業務に当たらせることになるからです。企業側は、組織において、コアとなる付加価値の高い業務からこれらの対応に税務・財務の⼈材を割く余裕が組織にあるのかをよく検討する必要があります。
EY Global Trade Analyticsといったデータ分析手法を用いることで、企業の貨物の輸入通関の状況、輸出⼊の状況に関するダッシュボード表⽰、適用される関税率の計算・検証、当局への報告を要する違反事例などの実情を⼀元的に把握できます。
また、関税業務など、専門性の高い業務の⼀部または全部を外部にアウトソースし、無形資産の⽀払いの定性的な再点検や、ロイヤルティに適切に対応できているかといった判断を仰ぐことも賢明でしょう。
以下に、ロイヤルティに対する、グローバル・フレームワークの構築において後れを取らないようにするための、5つのステップをご紹介します。
- 関税の観点からビジネスを理解する。輸出⼊貨物を把握していることと、グローバルな関税に関するルールや税関申告手続きを⼗分に理解していることの間には大きな差がある。
- 輸入される商品の背後にあるバリュードライバーを把握する。無形資産がある場合は⽣産に関連するものなのか、完成品の流通に関連するものなのか。製品価格にはすでに無形資産の対価が含まれているのか、あるいはサービスやロイヤルティ、販売権など、個別の⽀払いが発生するのかを確認する。そうした無形資産を⽀払うための仕組みはあるか。移転価格への影響はどうか。
- 税関当局が何を期待しているかを⾒極める。関税におけるルールの枠組みは国際的に適⽤されるものではあるが、事業展開するそれぞれの地域の税関プラクティスに照らし合わせて、⾃社のアプローチが適切かを確認する必要がある。
- ロイヤルティの取り扱いを徹底的に評価し、関税の過払いがないことを確認する。
- ロイヤルティの内容を定期的に⾒直す。多くの国際的な税制と同様に、ロイヤルティは、自社のバリューチェーンの⾯でも、外部の規制・監査の⾯でも、その取り扱いが急速に変化する。各種システムやプロセスに柔軟性があるか、⽬的に合致しているかを確認することが不可⽋である。