EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
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CEOが直⾯する喫緊の課題︓地政学的情勢がテクノロジー戦略に与える影響とは
EYが実施したCEO Imperative Studyから、地政学的リスクが⾃社のデジタル課題にどのような影響を及ぼすかについて、最⾼経営責任者(CEO)の理解と実態との間には大きなギャップがあることが分かりました。
持続可能で回復力に優れた事業運営を目指して変革のロードマップを構築するにあたり、サプライチェーンの改革やテクノロジーでは簡単に解決できない複雑な問題があります。
自由な国家間取引を目指した世界経済の秩序は、安定と成長をもたらすと同時にグローバルなビジネスモデルや経営モデルの基盤となっていた一極集中型から、多極分散型へと進化しています。不安定な状況が続き、経済ナショナリズムがグローバリゼーションに取って代わろうとしているのです。EYの地政学戦略グループは、2021年の10大政治リスクの1つに新国家主義(ネオステイティズム)の台頭を挙げています。
次世代の国民国家の超大国が経済的、軍事的、文化的な覇権を争う中、同盟関係の変化により、地政学的な要所、サプライチェーンの難所、サイバーセキュリティのリスクなど、オペレーショナルレジリエンスを脅かす要素が生まれています。
また、政府間の競争で規制当局同士の関係が薄れ、グローバル化、企業のレジリエンス、サステナビリティを危うくする脅威に対し、企業が規制当局と力を合わせてグローバルに対応することが難しくなっています。
この難問が浮き彫りになっているのは、サイバーセキュリティと関連しているからです。テクノロジーの脆弱性との闘いに取り組む上で、グローバル企業はテクノナショナリズムの拡大という課題に直面しています。一例として、各国がサイバーセキュリティやデータ保護の独自基準を採用していることが挙げられます。こうした独自基準が、サイバー脅威の監視や対応を過度に複雑化したり、事実上不可能にしたりする可能性があります。
これは、サイバーセキュリティ部門だけが解決にあたる問題ではありません。グローバルにつながり、常時稼働しているオープンな事業環境において、より持続可能で目的主導型の成長に向けて事業を導く役割を担うCOOは、新国家主義やテクノナショナリズムのリスクを回避していかなければなりません。そのためには、役員同士や業界内での協力にとどまらず、世界中の規制当局が力を結集して基準を策定する必要があります。それにより、企業間のグローバルな貿易やサイバーセキュリティに関する規制を簡素化および合理化し、一部の国を優遇するのではなく、最終的に全ての国に利益をもたらすことができるのです。