EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
サプライチェーンの上流から下流まで一連のプロセスを単独で管理することは難しく、スピードと信頼性を確保した流通には、各プレーヤーの相互連携が不可欠であることは言うまでもありません。しかし現状は、リアルタイムで発信された情報が特定の部門内のみで管理されているか、記録登録が事後となり、管理情報にタイムラグが生じています。そのため、物流の進行状況をサプライチェーンの全プレーヤーの間でリアルタイムに共有することにより、先を見越した対応をすることが求められています。
ブロックチェーンは、分散台帳として知られているデータベースであり、またネットワークでもあるため、サプライチェーンのさまざまなプレーヤーが時差なく常に情報を共有することができます。ブロックチェーンという言葉は今、業界のバズワードになっています。特に、金融業界と保険業界ではその信頼性と即効性に高い関心が寄せられています。情報を素早く共有するにあたり、ブロックチェーンが、安全で確実な情報共有のプラットフォームとなっています。
今、絶え間なく変化する経済環境の中で、顧客は少しでも早く商品が手元に届くことを望んでいます。オンライン・ストアの増加に伴い、実店舗ではサプライチェーンの最適化にますます難しい対応を迫られています。Amazonをはじめとするオンライン・ストアでは、他社に負けない価格で、注文確定から2日以内に商品を届けるというサービスを提供しており、企業も小売業者も、「どこまで早く商品を顧客の元に届けることができるのか」を追求することがとても重要になってきました。このような市場競争においては「サプライチェーンの全プレーヤーがどのように情報を共有するか」、また、「関係者や当事者へ、迅速かつ確実に最新の情報を伝えるにはどうすればよいか」という2点が課題解決の鍵となります。
複雑な実社会は、多数のプレーヤーによって膨大な取引が実行されているにもかかわらず、サプライチェーン・プロセスは信頼性に欠ける、というまさに組織化された「カオス」とも呼べる状況です。その解決には、ブロックチェーン技術により高い信頼性を備えたピア・ツー・ピアネットワーク分散台帳が適したソリューションであると言っても過言ではありません。
調達担当者は、ベンダーやサプライヤーから原材料を入手した時点で、発注量、原材料の特性、取引地点等の情報をブロックチェーン・プラットフォームにアップデートすることで、製造業者や輸送業者等他のプレーヤーと最新情報を共有することができます。最新情報を入手した製造業者は、余裕をもって原材料の到着予定日を知ることができるため、何らかの問題や特殊なケースへの対応が必要な場合、ブロックチェーン・ネットワークを介して調達担当者や輸配送業者と速やかに連絡を取ることができます。例えば、製造業者は、変更が必要な場合、原材料の受取先となる倉庫の予定表に到着日をアップデートし、その内容をブロックチェーン・ネットワーク上の関係者にも共有します。ネットワーク内の輸配送業者は、製造業者が営業時間内に更新した情報に基づき、余裕をもって原材料の受取日と配達日を把握することができます。アップデートされた受取日と配達日の情報は、調達担当者にも共有され、必要に応じて事前準備を行うなど、遅延や問題が予測される場合には輸配送業者へ事前に連絡することが可能になります。変更通知を受けた輸配送業者は、アップデートされた情報を基に適切な計画を立て、製造、調達、販売を担当する各プレーヤーに知らせることで、先を見越したスケジューリングが可能となります。
事前に合意された配送ルートに基づき、倉庫側は、アップデートされた発注履歴を確認して、到着予定の品物の保管場所やルート変更に伴う作業を事前に検討することができます。このように、ブロックチェーン・ネットワークでリアルタイムに事前出荷情報(ASN)の共有が可能となります。この一連の情報共有により、顧客は商品の配送状況をリアルタイムで確認できるようになります。ブロックチェーンによるサプライチェーン・プロセスでは、多数のプレーヤーからの情報がリアルタイムに同期されることで、配送状況が大幅に透明化され、リードタイムなどの取引情報がより正確になり、取引にかかる時間が短縮されます。そして、各プレーヤーのサービスレベル合意書(SLA)の順守状況の追跡においても、様々な利点があることは言うまでもありません。
企業価値を高める上で商品の納期を厳守することが重要な業界では、配送中の品物を代替ルートで配送する方が良いと判断される場合、ブロックチェーン技術を活用することにより、代替ルートをほぼリアルタイムで知ることができます。これは、サプライチェーン・マネジメントの最適化につながります。例えば、交通渋滞パターンの分析結果を参考にして、商品を配送中のトラックは比較的交通量が少ない道を選んで走ることができます。
ブロックチェーンをこのような用途で活用する場合、代替ルートの提案は、多数のプレーヤーにメリットをもたらします。まず、トラックの運転手には、予定通りに商品を配送できるというメリットがあります。そして、受取側の顧客は、品物の到着時間をほぼ正確に知ることができ、その時間帯に搬入を手配することができます。さらに、ブロックチェーン・ネットワークにデータを提供する交通局や輸配送業者等にとってもメリットがあります。先にも述べた通り、これらのプレーヤー間の信頼関係が重要なことは言うまでもありません。しかし、異なる企業に属するプレーヤー間で十分な信頼関係を築くことは容易ではありません。取引記録およびマスターデータの改ざん防止がなされていることも信頼性を確保する上で欠かせません。その信頼性が保証されてこそ、配達日、配達時間、配達場所、配送会社から配達先までのルート、商品の現在地等の正確な情報を提供することができるからです。ブロックチェーンを活用し、サプライチェーンの各プレーヤーが提供する情報の透明性が確保されれば、全てのプレーヤーがそのメリットを享受できるに違いありません。トラックの到着時間変更は、商品の受取側に関係し、配送ルートの変更は、次の地点まで商品の管理責任を負うサービスプロバイダーにとって大いに関係があります。配達の完了により最終的な財務支出が左右される委託者にとっても非常に重要なことなのです。
複雑なサプライチェーン・ネットワーク内で取引される品物の保管責任や所有権が引き継がれるタイミングで、ブロックチェーンの取引台帳がどのようにアップデートされるのかに留意する必要があります。サプライチェーン・プロセスの各ポイントで商品の所有者が変わるため、複数の組織間で調整が必要となった際に、取引台帳に記録された情報が参考として利用されます。クロスボーダー取引に伴う品物の保管責任、偶発的な事故等による保険請求、支払勘定の調整、および複数の国に跨る複雑な国際取引に関わる輸出入等が例として挙げられます。
顧客、そして顧客からその経営幹部へ、ブロックチェーン技術の価値をどのように数値化して伝えることができるでしょうか。EYは、ブロックチェーン技術がもたらす価値と、ブロックチェーン技術を用いて開拓可能な機会を取り戻す支援をします。まずは、多くのクライアントが関心を寄せる以下のような質問にお答えしながら問題を対処していきます。
ブロックチェーンが、前述のシナリオに適した技術であるとしても、主要ステークホルダーがその価値を理解し、採用しなくては技術の活用に至りません。つまり、ブロックチェーン技術が適切に機能するかどうかが問題ではなく、主要ステークホルダーにブロックチェーンの付加価値を理解して、ブロックチェーンを活用したネットワークに参加してもらうことが重要です。
ブロックチェーン技術による分散台帳は、サプライチェーンのエンド・ツー・エンドの全プレーヤーに対して正確な情報を迅速に共有するキーソリューションであり、その価値を多くのステークホルダーが理解する事ことで、企業をまたぐサプライネットワークを構築する事ことが可能となります。
ブロックチェーンによるサプライチェーンのオンデマンド・ビジビリティを実現するためには
サプライチェーンが果たす役割の主軸となる調達、製造、輸送、流通、販売 の流れを、サプライチェーンの全プレーヤー間でリアルタイムに情報共有し、先を見越した対応を行うことは、企業の戦略的必要事項となっています。