監査×衛星データ×AIが生み出す価値とは

監査×衛星データ×AIが生み出す価値とは


EY新日本と株式会社Ridge-iは、それぞれの専門性を最大限に生かすことで、衛星データの信頼性確保や解析技術の向上、人材育成、市場の発展といった課題に対して効果的なアプローチをもたらします。


要点

  • 広範で詳細な情報を提供し、組織や社会全体に対して高い価値を提供する衛星データの活用可能性は多くのプレーヤーから注目を集めている
  • 衛星データの活用を拡大し、その可能性を最大限に引き出すためには高度な解析技術が必要不可欠である一方、データの信頼性確保や人材の育成という課題も存在する
  • 監査・保証業務における深い知識と豊富な実績を持つEY新日本とAIを活用した宇宙・衛星データの解析技術に長(た)けた技術を持つ株式会社Ridge-iが課題への解決策を見つけ出すべく取り組んでいる

EYの関連サービス

Space Tech

宇宙ビジネスの進歩とデータ分析の発展が交差する上で、ビジネスの可能性をさらに拡大する重要なキーとなっているのが、地球観測データの活用です。地球観測データの1つとして今では誰もが見ることのできる衛星データがあります。衛星データは、さまざまな解像度のデータやあらゆる種類のセンサーによるデータに及びます。衛星コンステレーションなどの発達とともにデータが増加の一途をたどっており、衛星データの有用さは多くのプレーヤーから注目を浴びています。衛星データはその性質上、広範で詳細な情報をもたらし、それが組織や社会全体に対して高い価値を提供します。

 

しかしながら、衛星データの活用を拡大し、その可能性を最大限に引き出すためには衛星データの高度な解析を行える人材の育成や、データの信頼性確保という課題も存在します。

 

EY新日本では、監査・保証業務およびガバナンスにおける知見と未来の監査・保証サービス「Assurance 4.0」の実現に向けた取り組みの1つとして、監査品質向上のためにAI監査ツールを開発し、財務データを中心とした構造化データを対象としたデータ分析を行っています。EY新日本ではこれらの知識を展開する形で「Space Tech」を立ち上げています。

 

Space Techでは、高度かつ効率的な監査・非監査業務を提供するため、衛星データ等の非構造化データの活用の検討を進めています。例えば遠隔地において広域に展開されている建物や設備など、資産の実在性を把握する実査において、衛星データは強力なサポートを提供します。現在、大規模な太陽光パネル施設の実在性や、海外の山奥にある鉱山施設の切削状況の確認といった、監査業務への活用方法について実証実験を行っています。また、この非構造化データの活用においては、解析技術などの専門知識が必要になります。そのため、AIを駆使して人工衛星画像・衛星データを解析するノウハウを持つ 株式会社Ridge-i※1から技術協力を得て、監査・非監査業務に役立つソリューション開発に取り組んでいます。

 

※1 AI・ディープラーニング技術開発のリッジアイ、EY新日本有限監査法人と衛星データを活用したサービス化の検討を開始(ridge-i.com/news/4214/)

現代社会を取り巻く大きな課題である脱炭素やカーボンクレジットなどのサステナビリティに関する課題について、衛星データは効果的な解決ツールとなり得ます。EYオーストラリアでは、例えば森林再生活動の実施地での復元状況の把握に衛星データを活用する概念実証(PoC)を行っております。このような海外EYのサステナビリティ領域への衛星データの活用実績や知見も取り入れ、日本国内でのサステナビリティ領域への利用可能性を探求していきます。衛星データは地球環境の変化に対する広範なデータを継続的に取得できるため、企業が自身のサステナビリティに関連するパフォーマンスを評価、報告、改善する際に有効なツールとなります。これにより、企業はサステナビリティに対する説明責任を果たすことが可能になります。

さらに、安心・安全に衛星データをビジネスに活用するためには、その信頼性の確保が必要となります。ビジネスの重要な意思決定に利用される局面となれば、その重要性はさらに増します。EY新日本では、衛星データの流通に係る保証業務の確立を目指し、検討を進めています。衛星データなどの幅広い非構造化データを含めた信頼性のあるデータ流通(DFFT)が実装された社会の確立に貢献していきます。

そして、これらの取り組みを進展させるためには、適切な人材育成が欠かせません。衛星データ自体の特性に関する知識、データエンジニアリングやデータ分析に関する知識、AIを活用する場合にはその関連知識など、求められる知識は多岐にわたります。そうした専門性を備えた人材の育成が求められています。EY新日本は、これまでに培ってきた異常検知などの構造化データの分析技術と、非構造化データ特有の知識を組み合わせた独自の知識体系を構築し、より高いレベルの専門人材を育成してまいります。

EY新日本が、積極的に衛星データを活用し、それを扱う専門人材を育成することは、衛星データの流通マーケットそのものの発展につながるものと考えています。マーケットが持続的に成長すれば、それは長期的な視点での新たなチャレンジを可能にします。EY新日本は、宇宙ビジネスの発展と新たなイノベーションを生み出す環境整備に貢献していきます。


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期待されている衛星データの民間利用に向け監査法人が貢献できることとは

EY新日本は、宇宙ビジネスの官民連携や宇宙スタートアップのIPO支援のほか、衛星データの監査・保証やサステナビリティでの活用を通じて、日本の衛星地球観測分野の発展に積極的に貢献していくために監査法人業界で初めてCONSEOに加入しました。

EY 新日本、「宇宙ビジネス支援オフィス」を新設

EY 新日本有限責任監査法人(東京都千代田区、理事長:片倉 正美)は、宇宙ビジネス分野の拡大を支援する「宇宙ビジネス支援オフィス」(室長:宮川 朋弘)を新たに設置したことをお知らせします。

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宇宙からの視点が戦略的優位性にどのような影響をもたらすか

衛星データは今やあらゆる企業が利用でき、驚くべき可能性を秘めています。インフラのリスク管理からサステナビリティの向上まで、その可能性は広範囲に及びます。地球観測データの可能性について詳しく知り、ビジネスの機会を捉えてください。

スペーステックの好機~地上ビジネスの課題解決で宇宙へ乗り出す理由とは

アメリカ航空宇宙局(NASA)出身のBrian Killough博士がEYに加わりました。その専門知識とオープンサイエンスへの情熱をEYでも生かし、スペーステックの力を最大限に活用して地上のビジネス課題の解決を目指します。


    サマリー 

    衛星データの活用は宇宙ビジネスの拡大に寄与しますが、活用するためには衛星データの信頼性、解析技術や人材育成といった課題を伴います。EY新日本とRidge-iが専門性とノウハウを活用し、さらなる可能性を引き出すための協働を進めます。また、サステナビリティ領域についても同様の課題感のもとに取り組み、地球観測分野のマーケット発展などにも貢献します。


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