EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
EYが「Building a better working world ~より良い社会の構築を目指して」というパーパス(存在意義)を明示したのは2013年。これを目に見える形で示し、なおかつ具体的に実践するために取り組んだのが、長期的価値(Long-term value、LTV)の創出活動です。これは、「クライアントの企業価値の最大化への貢献」「経済社会システムそのものの変革・整流化への挑戦」「自社が率先する持続可能な企業市民の在り方の追求」という、3つの方針から成り立っています。
それらを基に、EYでは「ネットゼロ2025年」を目標に掲げ、People・Social・Client・Financialの4つの価値に分類した計30種のKPIを設定し、EYが目指す持続可能な長期的価値の創出データを公表し、2023年2月に公表したEY Japan統合報告書の中でも説明しています。
EYには、企業の気候変動を巡るリスクや機会への対応、サステナビリティと経営戦略の統合をグローバルチームでサポートする、気候変動・サステナビリティ・サービス(Climate Change and Sustainability Services:以下、CCaSS)があります。チーフ・サステナビリティ・オフィサーの瀧澤徳也は、EY Japan CCaSSにてシニアコンサルタントを務めるゴウ・シウエイと対談し、CCaSS自体の取り組みと、CCaSSの立場からうかがえる企業の課題について話し合いました。
瀧澤:まず、CCaSSで働くことを目指した理由を教えてください。
ゴウ:自然環境に対する興味は幼い頃からありました。家族と自然の多い場所に旅行したことがきっかけです。関心は成長とともに高まり、大学と大学院では生物科学と生態学を専攻しました。在学中に事業会社には社会を動かす大きな力があると知り、卒業後は事業会社に入社して財務会計と管理会計の仕事に就きました。その経験を経て、自分が興味を持っていた環境の分野に戻りたいと思い、あるきっかけで EY の中途採用のイベントに参加してCCaSSを知りました。この仕事の魅力は、サステナビリティに関する専門的かつ幅広い仕事ができるところです。またCCaSSのメンバーたちからも、自分の仕事に対する強い信念が感じられました。
瀧澤:ゴウさんは入社前からEYのパーパスを知っていたそうですね。最近は中途入社の方も含め、EYのパーパスに共感して入ってくれる人が増えていて、非常にありがたいと感じています。では、CCaSSで提供しているサービスを簡単に説明してください。
ゴウ:私は今、環境・労働安全衛生のEHSマネジメントチームに所属し、仕事の一環として環境デューデリジェンスを実施しています。最近は日本企業の海外進出が著しく、私たちの調査対象も海外の企業が増えているので、EYのグローバルネットワークを生かし、他のEHSチームのメンバーと連携しながら仕事をすることが多いです。
また、企業の新しい取り組みとなっている生物多様性に関する支援も提供しています。生物多様性は、気候変動の次の課題として注目され、昨年はCOP15(国連生物多様性条約の第15回締約国会議)がカナダのモントリオールで開催されました。気候変動に関する財務情報を国際的に開示する枠組みであるTCFDというフレームワークの次に、自然関連の財務情報開示をするフレームワークであるTFNDも今年9月に発表されることになりました。それに伴い、企業は、社会全体はもちろん、さまざまなステークホルダーから生物多様性に対する取り組みが求められていくでしょう。そうした対応に後れを取らないよう、自社の戦略的な意思決定に自然に対するリスクと機会を取り込もうとする先進的な企業が私たちのクライアントとなっています。
瀧澤: CCaSSは増員していますが、チーム体制はどのようになっていますか。
ゴウ:環境・労働安全衛生(EHS)デューデリジェンスには、もちろん専門的な知識を持った人がたくさんいます。最近、工場の現場でEHSマネジメントを実践し経験を積んだ人も加わりました。その他、サステナビリティの情報開示や第三者保証を提供する分野で活躍してきた人や、国連大学で生物多様性を専門に研究したメンバーもいます。非常に多様で多国籍のチームになっているのは楽しいですね。メンバーの半数が女性で、子育てしながら活躍されている点もチームの特徴と言えるかもしれません。また、私たちは、生物多様性という新しいテーマゆえ未知の領域が多く標準化されにくい仕事を、活発にディスカッションしながら進めています。多様なチームだからこそ、多様なテーマをやり切れると感じています。
瀧澤:監査にはきちんとしたルールがありますが、サステナビリティに関してはさまざまな手法がありますよね。
ゴウ:生物多様性は気候変動より複雑で、指標化もパフォーマンス評価も難しいですが、企業と一緒にディスカッションしながら勉強させていただいています。
瀧澤:今後どのようなことをしていきたいですか。
ゴウ:生物多様性に関する知識はまだ足りないと感じており、多くの企業をサポートしながら、生物多様性と事業の進め方の関連など、経験をさらに積んで学んでいきたいと考えています。また、サステナビリティに関しては、社会全体の意識が高まる一方で、サステナビリティ経営自体は現場の社員一人一人まで浸透しきれていないところがあると感じます。企業にすれば、さまざまな外部評価があり、開示規制も入ってきて、対応が追いついていないのが現状です。私たちは、企業の取り組みのリスクアセスメントや情報開示にとどまらず、経営と統合させた形で社員への浸透力を高めながら、ビジネス自体を変革させる支援をしていきたいと思っています。
最後に、気候変動や生物多様性という地球規模の問題は非常に複雑なため、効率的に解決することができません。CCaSSには気候変動の専門家も、気候変動・生物多様性ともに密接に関連する人権の専門家もいます。そうしたチームメンバーとともに、クライアントに対して包括的なソリューションを提供していきたいです。
瀧澤:CCaSSはまだ若い部署ながら、最近のニーズの高まりとともに急成長を遂げています。その一方で、人数の面で対応しきれていないのも事実です。その部分については、私自身も関わっている脱炭素化活動やDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルーシブネス)の推進の中で、自社で達成できる数値の壁には常に悩まされています。そこをクライアントの課題解決という本業のビジネスを通して、間接的であれ、社会全体のサステナビリティ推進のサポートにつなげていけるように取り組んでいます。
瀧澤 徳也
EY Japan マネージング・パートナー/マーケッツ 兼 EY Japan チーフ・サステナビリティ・オフィサー
公認会計士として、2000年からはEY新日本有限責任監査法人のパートナーを務める。1987年にEYのメンバーファームでキャリアを開始。1993年から1994年までは米国ニューヨークに拠点を置き、現地投資銀行の監査に携わった。2007年から2012年まで欧州においてJapan Business Services(JBS)を率い、欧州諸国でビジネスを展開する日本企業の成長を支援。
キャリアの前半は主に日・米の上場企業の監査業務に従事。その後はJapanリージョンのマーケッツ部門をけん引し、世界中のEYメンバーファームのオフィスと緊密に連携することで、国を超えたマーケットの課題に対応してきた。
ゴウ・シウエイ
EY新日本有限責任監査法人 CCaSS事業部 シニアコンサルタント
生物科学、景観生態学のバックグラウンドを持ち、事業会社において財務・管理会計、海外事業に関連する業務を経験してきたが、ESG・サステナビリティ分野へ注力するためEY新日本有限責任監査法人に入社。
People value の創出に向けて多様な働き方と自己実現をかなえる企業風土
長期的価値(Long-term value、LTV)対談シリーズ:EY Japanの組織づくりは People-first が原点であり、多様なバックグラウンドを持つメンバーが密にコミュニケーションを交わしながら、必要に応じて連携し、それぞれのポテンシャルを最大限に発揮しています。
企業にとっては、パーパス経営という新しい概念に付随して、気候変動や生物多様性といった社会課題への取り組みがますます重要かつ避けがたいテーマとなっており、今後さらに、対応策の検討および実施が求められます。EYは、社内・社外ともにあらゆるステークホルダーと伴走しながら、課題解決に向けて取り組んでいきます。
EYの関連サービス
ESG(環境・社会・ガバナンス)およびサステナビリティ・コンサルティング分野のリーダーとして評価されているEYは、関連サービスの提供を通して、企業、人、社会、そして地球全体にとって大切な価値を守るとともに、新たな価値を生み出すことを追求します。EYのサービスとソリューションの幅広さ、奥深さをご紹介します。詳しくはEYの各チームにお問い合わせください。
続きを読む環境・労働安全衛生(EHS)リスク管理におけるコンプライアンス・生産性・オペレーションの問題はますます範囲が広がり、複雑になっています。EHSリスクの適切な管理によって、現場の生産性と財務業績の改善が期待できることが分かっています。
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