2023年上半期のSPACによるIPO動向

2023年上半期のSPACによるIPO動向


2023年上半期の世界のSPACによるIPOは低迷が続く一方、DeSPAC数は増加


要点

  • 世界のSPACによるIPO数は前年同期比70%減少、調達額は前年同期比82%減少
  • マーケットが悪化しIPO案件が減少している状況の中、SPACでのExit(イグジット)に見合う有力な買収対象会社も減少し、その結果DeSPACに至らず清算するSPACが増加
  • 一方で、SPACによるIPOが2021年に急増した結果として、2023年にDeSPACの期限が迫っているSPACが多いことから、2023年上半期のDeSPAC数は前年同期比63%増加、買収金額は前年同期比13%増加


本稿では、2023年上半期(1~6月)におけるSPACに関する取引に生じた変化を概括的にご紹介します。2023年上半期のSPACによるIPOは、第1四半期同様、世界の各市場で大幅な減少傾向にありました。世界のSPACによるIPO数は前年同期比70%減少の32社、調達額は前年同期比82%減少の27億米ドルと大幅に減少しました。一方で2023年にDeSPACの期限が迫っているSPACが多いことから、2023年上半期で公表されたDeSPAC数は前年同期比63%増加の111社、買収金額は前年同期比13%増加の560億米ドルとなりました。


世界のSPACの状況

<エリア別SPACによるIPO数、資金調達額>

<エリア別SPACによるIPO数、資金調達額>

2023年上半期(1~6月)の世界のSPACによるIPO数は、前年同期比70%減少の32社にとどまり、調達額においても、27億米ドル(82%減少)にとどまりました。

米国でのSPACによるIPO数は、17社(76%減少)、約20億米ドルの調達(84%減少)となりました。特にNASDAQでのIPO数および調達金額が大幅に減少しており、トロント証券取引所にいたっては0社という状況でした。


世界のDeSPACの状況

2023年上半期で公表されたDeSPAC数と買収金額 Sources: EY analysis, Dealogic, SPACInsider

SPACによるIPOが2021年に急増したため、2023年にDeSPACの期限が迫っているSPACが多いことから、2023年上半期で公表されたDeSPAC数は111社(63%増加)、買収金額は560億米ドル(13%増加)となりました。

2023年上半期におけるDeSPACの買収金額上位5社は、以下の通りです。

2023年上半期におけるDeSPACの買収金額上位5社 Sources: EY analysis, Dealogic, SPACInsider

買収金額に関して、1位のBlack Spade Acquisitionは270億米ドル、2位のL Catterton Asia Acquisition Corp.は55億米ドルと多額ですが、これ以外の買収金額は14億米ドル前後にとどまっています。

2020年から2022年のDeSPAC買収金額上位12社のうち、11社はSPACがIPOされた際の価格である10米ドルに比べると、8%から96%低い価格で取引がされています。


終わりに

2023年上半期は、マーケットが悪化しIPO案件が減少しました。このような状況の中、SPACでのイグジットに見合う有力な買収対象会社も減少し、その結果DeSPACに至らず清算する会社数が増加したことを背景に、第1四半期に引き続き、SPACのIPO活動が鈍化した四半期となりました。

一方で、SPACのIPO数が2021年に急増したことにより、2023年にDeSPACの期限が迫っているSPAC数が多いことから、DeSPAC数および買収金額は前年同期比で増加する結果となりました。2023年の残り6カ月の間に期限を迎えるSPAC数は相当数存在すると思われますが、金利上昇、インフレ、地政学的懸念も継続しており、DeSPAC後に株式市場で取引される株価も、多くの銘柄でSPACのIPO時に比べて低い価格で取引されている状況に鑑みると、厳しい状況であると考えられます。


【お問い合わせ】

EY新日本有限責任監査法人 企業成長サポートセンター
渡辺 由佳




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    サマリー

    2023年上半期のSPACによるIPOは、第1四半期同様、世界の各市場で大幅な減少傾向にありました。世界のSPACによるIPO数は前年同期比70%減少の32社、調達額は前年同期比82%減少の27億米ドルと大幅に減少しました。一方で、2023年上半期のDeSPAC数は前年同期比63%増加の111社、買収金額は前年同期比13%増加の560億米ドルでした。


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