こうした連携の不足はさまざまな問題をもたらす可能性があります。縦割り型で行われる変革の試みは、他の重要な部門からの情報提供を欠くことになるため、失敗しがちです。このような取り組みは、貴重な時間を消費し、予算を浪費する一方で、根本的な問題を解決できないことがあります。また、連携の不足は重要な人材の士気に影響を及ぼし、将来の変革の取り組みに関わろうとする意欲を失わせる可能性があります。最も懸念されるのは、連携の不足によって、契約に係る全社的な戦略を生み出す取り組みが妨げられる可能性があることです。
変革を推進する責任を負う当事者が誰かを分かっていることは極めて重要です。また、企業は契約プロセスの各段階に責任を負う部門を特定すべきです。責任の所在を巡って連携することにより、最適化の責任を誰が負うか、そして変革の取り組みに他のどのようなステークホルダーを含める必要があるかを定義することができます。EYのRebecca Thorkildsenは次のように述べています。「大手企業では、契約の管理のために単一かつ集中型の部門を設ける戦略を採用しています。この集中型の部門は、内部または外部で管理されます。誰が管理するかにかかわらず、重要なのは、各プロセスの遂行を支援するツールやKPIを通じて測定・監視され、一貫したプロセスの下で運用され、説明責任を負う、単一の部門を置くことです」
2. 標準化と一貫性を推進する
回答によると、99%の企業が、契約の作成、レビュー、承認について何らかの明確な契約プロセスを持っていると述べています。また、75%の企業が、自社の契約担当プロフェッショナルが正式なプロセスに「常に」準拠していると述べています。
しかし、データをより詳細に検討すると、多くの企業のプロセスは必ずしも精査に耐えうるものではないことが分かります。契約担当スタッフによる承認済みテンプレートの使用を多くの場合に義務付けている企業は31%、承認済みのフォールバック(代替)条件を設定している企業は25%にとどまっています。前述のとおり、49%の企業は、締結後の契約書の保管について明確なプロセスを持っていないと述べており、契約上の義務を体系的に追跡しているとの回答も22%にとどまっています。これらはいずれも、現行のプロセスが重大なギャップを抱えているか、あるいは実務において機能するには厳格過ぎることを示しています。これらは、契約についてのポリシーの遵守状況の測定や管理において企業が直面している課題の理由を説明しているともいえます。
リスク管理の強化や変革の実行を目指す全ての企業は、プロセスやツールが強固であり、一貫して運用され、継続的な改善計画により裏付けられていることを確保しなければなりません。これらはいずれも過度に複雑であってはなりません。契約のテンプレート、条項のライブラリー、ルールを適切に整備することにより、契約担当マネージャーや営業マネージャーは、明確な基準の範囲内で、さまざまな契約に合わせてアプローチを調整できるようになります。
企業は、より強固な契約プロセスの策定にあたって、2つの基本的な課題に直面しています。第1の課題は、プロセス管理についての社内スキルの不足です。第2の課題は、責任の所在です。契約は、そのライフサイクルのさまざまな段階において、縦割りで活動するさまざまな部門が関与する可能性があります。当事者間の連携が不足することにより、プロセスの最適化が複雑化されてしまいます。
EYのRebecca Thorkildsenは次のように述べています。「法務、調達、財務、その他の関連するステークホルダーを一堂に集め、契約書のテンプレートや条項のライブラリーに含まれる全ての概念について見解を一致させることができれば、契約に関する全社的な合意を実質的に生み出したことになります。企業は、契約の各部分の責任者となるべき者を明確にすることにより、このような対話に着手し、推進するようになってきています。責任の所在が明確に定められ次第、それらのステークホルダーの目標が達成されていることを確認するための方針や強固なプロセスを導入することができます」
3. 適切なテクノロジーの課題に注力する
大部分の企業は契約テクノロジー戦略を正式に導入していると述べていますが、その戦略と効果的な実行の間には重大なギャップがあるようです。
大部分の企業では、契約プロセスの支援のため、1つまたは複数のテクノロジーに投資しています。具体的には、承認から署名までのテクノロジー(電子署名ツールなど)が多くの企業において広く使用されています。その一方で、契約からデータを抽出し、比較し、分析するテクノロジーの普及ははるかに遅れています。これは、87%の企業が契約テクノロジーに課題があると述べている現状に起因しているかもしれません。この状況を改善するために、企業はまず、契約担当チームが直面する特定の障壁をより詳細に検討することに取り掛かるべきです。