負債の分類における企業の検討事項

負債の分類における企業の検討事項


特約条項付負債の流動又は非流動の分類に関するIAS第1号の修正が2024年1月1日に発効


要点

  • IAS第1号の修正は、特定の負債の流動又は非流動の分類を変える可能性がある。 
  • 本修正では、負債の決済を延期することのできる権利が、報告期間後少なくとも12カ月間存在しなければならないことが明確にされている。
  • 企業は、非流動に分類され、報告期間末以後12カ月以内に特約条項の対象となる負債について、追加の開示を行う必要がある。 

特約条項付負債の流動又は非流動としての分類は、企業の財政状態、ひいては企業の財務指標の表示に大きな影響を与える可能性があります。国際会計基準審議会はこれを受け、企業が特約条項付負債を流動又は非流動に分類する方法に関するステークホルダーの懸念に対応することに加え、企業が特約条項付負債について提供する情報を改善することを目的として、2020年および2022年にIAS第1号「財務諸表の表示」の修正を公表しました。この修正は、2024年1月1日以降に開始する事業年度から適用され、早期適用が認められています。

 

特約条項付負債の分類に関する要求事項

負債を流動又は非流動として分類するための既存の要求事項では、特に企業が報告期間後少なくとも12カ月間、負債の決済を延期する無条件の権利を持っていない場合、流動負債に分類されます。


2024年にIAS第1号に2つの修正が導入されたことで、負債を非流動として分類するには、企業は報告期間後少なくとも12カ月間、負債の決済を延期する権利を有しなければなりません。この権利には実質があり、かつ報告期間末日に存在しなければならず、負債の分類は、企業がこの権利を行使する可能性を考慮しません。 企業が報告期間末日又はそれ以前に特約条項を順守する必要がある場合、これらの特約条項は、報告期間末日時点の権利の有無に影響を与えます。 




企業が報告期間末日又は終了前に順守する必要がある特約条項は、報告期間末日に決済を延期する権利の有無に影響を与えます。




これは、特約条項の順守が報告期間後にのみ評価される場合でも当てはまります。例えば、報告期間末日の企業の財政状態に基づく特約条項で、順守の評価が報告期間後にのみ行われる場合がこれに該当します。




報告期間の終了後にのみ特約条項を順守する必要がある場合、報告期間末日に決済を延期する権利を有する企業は特約条項の影響を受けません。




この修正では、企業が報告期間の終了後にのみ特約条項を順守する必要がある場合、特約条項は報告期間末日における決済を延期する権利の有無に影響を与えないことが説明されています。 これは例えば、特約条項が報告期間末日から6カ月後の企業の財政状態に基づいている場合に該当します。 
 

追加の開示要求事項

企業が融資契約から生じる負債を非流動として分類し、それらの負債の決済を延期する権利が報告期間末日から12カ月以内に特約条項を順守することを条件としている場合、追加の開示が必要となります。この場合、企業は、報告期間末日から12カ月以内に負債を返済する可能性があることを財務諸表利用者が理解できるように、財務諸表の注記において当該情報を開示する必要があります。新たな開示要求事項には、特約条項の性質、企業が特約条項を順守する必要がある時期、関連する負債の簿価など、特約条項に関する情報を提供することが含まれます。 企業はまた、違反の可能性を回避又は軽減するために報告期間中又は報告期間後に講じた対策など、特約条項の順守が困難となる可能性を示唆する事実や状況があれば、これを開示する必要があります。




特約条項の順守が困難になる可能性があると企業が予想する場合、企業はこれを開示する必要があり、これには違反の可能性を回避又は軽減するために報告期間中又は報告期間後に講じた対策などが含まれます。




このような事実や状況には、報告期間末日現在の状況に基づいて順守が評価された場合に、企業が特約条項を順守できていないという事実も含まれる場合があります。
 

特約条項の違反があった場合の負債の分類

特約条項に違反した場合の負債の分類に関する既存の要求事項は変更されません。企業が報告期間末日又はそれ以前に長期融資契約の特約条項に違反し、要求に応じて負債を返済することになった場合、この負債は流動として分類されます。企業は多くの場合、違反の結果として支払いを要求しないよう貸手と交渉します。報告期間末日時点で負債を非流動として分類するには、報報告期間末日から12カ月以内に負債の返済を要求されないよう、報告期間末日までに権利放棄を得る必要があります。報告期間末日より後に財務諸表の承認前に権利放棄を得た場合でも、負債は流動負債として表示されます。
 

結論と今後の対応

経営者は、今後の企業の財務諸表の表示と開示に対する修正の影響を慎重に検討する必要があります。高金利と成長の低迷という現在の経済環境では、企業の財務業績が悪化する可能性があります。そのため企業は、これらの修正が発効した後、関連する負債の分類に影響を与える可能性のある潜在的な違反を回避するために、貸手と適時に特約条項を再交渉する必要があります。



サマリー

2024年1月1日に発効するIAS第1号の修正により、特約条項付負債を流動又は非流動に分類する基準が明確化されます。また、この修正により、企業はステークホルダーに追加情報を提供する必要があります。修正によって導入された変更により、企業は融資契約と財務諸表の表示に対する潜在的な影響を検討する必要があります。


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