デジタルを生かす
人工知能(AI)、ロボティック・プロセス・オートメーション、ブロックチェーンなど、今日存在するテクノロジーは、健康への注力を真に実現するために必要です。ただし、正確、あるいは最適な結果を提供するには、十分な規模、品質、データ種類を持つデータセットが欠かせません。これらツールを効果的に使用するには、消費者、プロバイダー、ペイヤー、ヘルスケア業界への新規参入企業によって生成された構造化データと非構造化データとを統合するプラットフォームが必要です。
これら技術の多くはすでに提供医療の一部となっています。自然言語の解析や処理が可能な自動化やアルゴリズムは、すでに健康・医療現場での記録の記入に使用されています。医用画像処理技術は機械学習アルゴリズムの使用へと変革されています。問題のない画像が特定され、トリアージされることで、放射線科医は最も難しい症例に集中する機会を得ています。医療は間違いなく、医師の意思決定プロセスを強化できるのに十分なほど「スマート」になってゆくことでしょう。
AIが診断と治療に使用される機会はますます増えます。たとえば、IDxが独自に開発したアルゴリズムIDx-DRは、糖尿病性網膜症を診断するための新しいツールです。この製品は2017年1月、ArterysのMRI心臓イメージングの解釈でFDA承認を獲得して以降、AIベースのアルゴリズムとしては13番目の承認事案です。ただしIDx-DRは、人間による事後解釈を必要とせずにスクリーニング決定を行うのが初めてであるという点で、以前に承認されたアルゴリズムとは異なっています。必要とされるより高いレベルのエビデンスをも証明するこの製品は、前向き臨床試験に基づいて承認される最初のアルゴリズムでもあります。
データプラットフォームで動作するデジタルツールを使用して、消費者と医師の経験を活用することが不可欠です。そうすることで、消費者は自身の健康に関心を持ち続けることができ、医療提供者も仕事の満足度を高めながら、求められる日常的な作業の負荷を減らすことができます。インターフェース、ヘルスナッジ、治療計画のカスタマイズを実現するには、ヘルスケアセクターは現状よりもさらに深く、個人(およびその環境)について理解しなければなりません。
ブロックチェーンやクラウドといったソリューションは、利害関係者の信頼を築きつつ流動性のある許可に基づいたデータ共有を可能にする、ある種の保障措置、データセキュリティを提供します。企業内全体にわたって安全な(検証可能な)ストレージやデータ送信が可能になります。こうしたアプローチによって、運用やビジネスプロセスの合理化、サイバーセキュリティの脅威に対する保護強化が確実に得られることとなります。
明日への架け橋を築く
プラットフォームを活用する企業は、消費者にデータを共有・統合し、これら新しいツールを使用してウェルネスや病気の予防に焦点を当てたソリューションを提供するインセンティブを与えることでしょう。こうした取り組みで、消費者の日常生活へと守備範囲を広げることができます。また、病気になる前の健康な消費者と協働することにより、バリューチェーンの早い段階で収益を獲得することになります。
既存企業であっても新規参入企業でも、ヘルスケア企業は最高品質のケアに対応し、競争力を高め、収益を生み出せるようなプラットフォームベースのヘルスエコシステムに適応してゆく方法を知る必要があります。
以下は、このような転換をどのように運用するかを検討する際に、ヘルスケア企業が留意すべきいくつかのポイントです。
1. 変革志向の戦略立案から始める
より広範なヘルスエコシステムにどう関与してゆけばよいのでしょうか?今現在のビジネスを最適化するだけでなく、明日のビジネスを革新・成長させる変革アジェンダを設定しましょう。何層にもわたり現状を打破するサービスを市場に繰り返し導入し、個人に焦点を当てます。全社を包括する目的を構築し、その目的に向けた一貫した前進を続けるために、変更管理と運用の再設計からベストプラクティスを使用します。
2. コアを縮小してアジリティを高める
今後に向け必要なのは、ITインフラをすでに有しているコア機能を維持し(ヘルスケア企業ではエンタープライズシステム環境にERPとEMRの両方が含まれる)、コネクテッドなエコシステムに対応した適応可能なインフラに投資することです。
ヘルスケア企業は、オープンアーキテクチャーとブロックチェーン対応ソリューションに移行し、ベンダー中立プラットフォーム内に構築された顧客重視のヘルスケアアプリケーションを開発しながら、レガシーシステムの最適化を図ることができます。
新たに始める、ということは、正しい方法を新規に構築するための機会でもあるのです。次のようなヘルスITシステムを作成しましょう。
- 摩擦のない、許可ベースのデータ共有に対応している
- データを、収集、編集、表示するアプリケーションとは別に保存できる
- 特定のユーザーとユースケース向けに設計されたインターフェースを持っている
- いつでもどこにいてもアクセスできる
3. インテリジェントオートメーションを構築する
インテリジェントオートメーションは、多様な最先端テクノロジーにおける複数コンポーネントを利用し、統合した業務の自動化です。ヘルスケア企業では、これには、バックオフィスとフロントオフィス(患者対応)の両方についてのロボットによるプロセス自動化、認知分析、モノのインターネット(IoT)などのテクノロジーによって可能になる他のデジタル自動化ツール、および手術とケアの提供の両方に対応する健康AIソリューションのポートフォリオが含まれます。
4. 信頼のための設計
リスクを最適化するという考え方を浸透させ、次のようにしてサービスと製品に初めから信頼を埋め込みます。
- 組織全体のデータフローをマッピング
- リスクに対するビジネスプロセスを分析
- 導入する前に、新製品や新サービスを慎重に評価
- 各プロジェクトの管理に統制を組み込む
このような取り組みは、企業が適切な戦略的意思決定を行い、求めている成長や将来の成功を得るための力となります。医療業界では、医療機器やウエアラブル端末を対象とするサイバーセキュリティソリューション、分析によって可能になる従来のリスクサービスが好例として挙げられます。