海外の保険会社により公表された2024年上半期の期中財務報告から得られる所見~IFRS第17号及びIFRS第9号の適用~

海外の保険会社により公表された2024年上半期の期中財務報告から得られる所見~IFRS第17号及びIFRS第9号の適用~


日本の保険会社によるIFRS適用の検討、IFRS適用域内の保険子会社の財務分析、IFRS適用地域への投資判断の際、保険業界で先行する開示事例の分析は有用となるでしょう。


要点

  • EYは保険会社46社のIAS第34号に準拠した期中財務諸表(2024年6月30日時点)におけるIFRS第17号及びIFRS第9号に関する各社の開示を分析し、独自に財務指標を定義・計算した上で比較した。
  • 加えて、会計方針や会計上の見積りの変更の有無や、割引率及びKPIに関する分析も実施している。

欧州を中心に多くの保険会社が2023年1月1日からIFRS第17号及びIFRS第9号の適用を開始しています。

EYはグローバルに活動する保険会社46社のIAS第34号に準拠した期中財務諸表についてIFRS第17号及びIFRS第9号に関する分析を実施しました。レポート“ Reporting under IFRS 17 and IFRS 9 Observations from Half-Year 2024 financial statements published by insurers(PDF、英語版のみ)”では、その分析結果について、詳しく考察しています。

同レポートでは、

  • 上半期の税引前利益に占める保険サービス損益(CSMのリリースや非金融リスクに係るリスク調整のリリースが保険サービス損益に占める割合を含む)及び金融損益の割合
  • 2024年6月30日時点の将来キャッシュ・フローの現在価値に対する、CSMの割合(一般モデル及び変動手数料アプローチが適用される契約グループの残存カバーに係る負債について)
  • IFRS第17号移行時点で適用したアプローチ(完全遡及アプローチ〈移行日後に獲得した新契約を含む〉、修正遡及アプローチ、公正価値アプローチ)ごとのCSMの2024年6月30日時点の割合
  • (純損益へのリリース前の)2024年6月30日時点のCSM残高に対する、CSMの純損益へのリリース額の割合
  • CSMが純損益に認識される将来期間
  •  当期に認識した新契約に係るCSMと当期に純損益にリリースしたCSMの比較
  •  将来キャッシュ・インフローの現在価値(予想保険料)に対する、新契約に係るCSMから新契約に係る損失要素を控除した金額の割合
  •  2024年6月30日時点の(一般モデル及び変動手数料アプローチが適用される)残存カバーに係る負債及び発生保険金に係る負債について、将来キャッシュ・フローの現在価値に対する、非金融リスクに係るリスク調整の割合
  • 2024年度期首時点の非金融リスクに係るリスク調整(残存カバーに係る負債)に対する、当期のリリース額の割合
  • 2024年6月30日時点の残存カバーに係る負債(損失要素を除く)に対する、損失要素の割合
  • 2024年6月30日時点の損失要素に対する、保有する再保険契約に係る損失回収要素の割合
  • 発行した元受保険契約グループのCSMに対する、再保険契約のCSMの割合
  • 2024年6月30日時点の負債性/資本性金融商品(保有者側)の分類、簿価に対する予想信用損失の引当率
  • KPI(株主資本、営業損益〈operating profit〉や税引前純損益〈net profit before tax〉、コンバインド・レシオ、ROE)の期間⽐較

などが分析されています。なお、開示内容によっては開示している保険会社が限られており、46社全てを対象とした分析にはなっていない項目もあることにご留意ください。

日本の保険会社によるIFRS適用事例はまだ少ないですが、今後、自社におけるIFRSへの移行の検討、IFRS適用域内の保険子会社の財務数値の分析、及び同地域への新規投資の検討などに際して、先行する事例の分析は参考となるものでしょう。

レポートの全文は、「Reporting under IFRS 17 and IFRS 9 Observations from Half-Year 2024 financial statements published by insurers (PDF、英語版のみ)」をご覧ください。

PDF資料をダウンロード(英語版のみ)



サマリー

多くの国及び地域で、2023年1月1日よりIFRS第17号の適用が開始されています。2024年6月時点の期中財務諸表をもとにEYがさまざまな角度から財務分析を行いました。IFRS第17号が適用された財務諸表を理解することは、日本の保険会社によるIFRS適用の検討、IFRS適用域内の保険子会社の財務分析、IFRS適用地域への投資判断の際、有用となるでしょう。

関連記事

海外の保険会社により公表された2023年次財務報告から得られる所見 ~IFRS第17号及びIFRS第9号の適用~

日本の保険会社によるIFRS適用の検討、IFRS適用域内の保険子会社の財務分析、IFRS適用地域への投資判断の際、保険業界で先行する開示事例の分析は有用となるでしょう。

IFRS第17号およびIFRS第9号の影響に関する保険業界の最新情報~海外の保険会社グループが公表した上半期の期中財務諸表からの所見~

日本の保険会社によるIFRS適用の検討、IFRS適用域内の保険子会社の財務分析、IFRS適用地域への投資判断の際、保険業界で先行する開示事例の分析は有用となるでしょう。

IFRS第17号およびIFRS第9号の影響に関する保険業界の最新情報~先行する保険会社グループが公表した開示情報の考察すべき3つのポイント~

日本の保険会社によるIFRS適用の検討、IFRS適用域内の保険子会社の財務分析、IFRS適用地域への投資判断の際、保険業界で先行する開示事例の分析は有用となるでしょう。


    この記事について