EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
上場企業については、コーポレートガバナンス改革やディスクロージャーの充実等を通じた持続的な成長と、中長期的な企業価値の向上への取り組みが進められている一方、スタートアップ・非上場企業についても、起業をより円滑に行えるようにするとともに、企業価値を高めていけるよう、成長資金供給の円滑化や投資家による経営支援の強化を進めていく必要があるとしており、そのために図2のような提言が示されています。
安定的な資産形成を促し、資産所得を増加させるためには、金融事業者による顧客本位の業務運営を確保することが必要であり、併せて家計自体の金融リテラシーを向上させていくことが重要としています。
金融事業者による顧客本位の業務運営が確保されるためには、顧客に対する適切な勧誘・助言や、顧客ニーズに沿った金融商品組成が行われるような制度的枠組みについて総合的に検討していくことが必要とし、図3のようなアプローチを検討しています。
資産運用業に関しては、プロダクトガバナンスの確保を促す観点から、顧客の最善の利益にかなった金融商品組成や手数料等の設定、適切な商品選択に資する想定顧客属性や費用といった商品性の情報提供、独立社外取締役等によるこれらの評価および検証のほか、こうした枠組みを確保するための資産運用会社等自身のガバナンスの強化を図っていくため、「顧客本位の業務運営に関する原則」の見直しの検討について言及されています。
(注)想定する顧客を明確にし、その利益にかなう商品を組成するとともに、そうした商品が想定した顧客に必要な情報とともに提供されるよう、販売にあたる金融事業者に必要な情報提供や、これらの評価・検証等をすること。
金融商品の「取引の場」としては、東証などの取引所のほか、証券会社が運営する私設取引システム (PTS)、証券会社の店頭取引がありますが、多様な有価証券の適切な流通の確保や、市場間競争の促進などの観点から、PTSの機能の向上が期待されるとしています。
低格付け債市場の拡大も含めたさらなる社債市場の活性化を図るためには、引き続き、他の債務との優先劣後関係を踏まえつつ、社債評価に当たって必要な情報の提供、十分な社債権者保護、発行・流通市場インフラの整備を図っていくことが重要としています。
そのため、今後も他債務のコベナンツ等に関する情報開示や必要なコベナンツの付与、社債管理者や社債管理補助者による社債権者保護や利益相反管理の高度化、発行・流通市場におけるより透明性の高い仕組みの定着やレポ市場の育成等に向けた、関係者による適切な対応が行われるべきとされています。
出所:1~4 金融庁「金融審議会 市場制度ワーキング・グループ中間整理 概要」、https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20220622/gaiyou.pdf(2022年9月22日アクセス)を基に、EY作成
本報告で示されたさまざまな提言は、今後の金融行政の方向性が示されているものとも考えられ、また幅広い金融機関等に影響を与える可能性があることから、内容の理解および制度動向の注視が必要と考えられます。また、具体的な対応策が示された事項については、各関係団体における具体的な取り組みの実施が期待されているものと考えられます。