EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
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【EY Japan】EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:近藤 聡)は、食に関連する生産者、消費者、中間業者、研究機関や政府などをつなぐハブとなり、食に関連する課題解決を目指す「食の未来創造支援オフィス」を設置することを発表します。
荻生:ここまでは銀行の取り組みについて教えていただきました。久枝さんの会社は大和証券グループに属している直接金融ですが、証券会社ならではの強みを生かした農業の取り組みと役割に関して期待されていることは何ですか。
久枝氏:日本の場合は農業関係の法律によって、すぐにできないことがたくさんあります。そこで、私自身が農業の専門家であると同時に、金融ではM&Aの担当も務めた上での知識を基に、今後実行に移せればよいと思う三つの件についてお話します。
一つ目は、農業関係でスタープレーヤーとなる農業の生産で上場している企業をつくることです。産業として成り立たせるには上場企業の登場が不可欠ですが、上場のプロセスはまさに証券会社の仕事となります。
二つ目は、ビジネスモデルです。海外のビッグプロジェクトの場合、ファンドをつくって投資を行い、それを金融商品として売る仕組みが出来上がっています。確実にもうかるモデルをつくれば、一般の金融商品と同じ形で外部のお金を使えます。日本であれば日本のお金で投資するようになると思いますが、そういったことができればと考えています。
三つ目は、不振に陥った地域の中核となる農業会社に対する取り組みです。企業が農業に目を向ける動きは10年ほど前からありますが、農地法や補助金に関わる問題で調子が悪くなると、M&Aがとても難しくなります。われわれの案件にも補助金をもらったケースがありますが、債権放棄などしかるべき手順を踏んで再生を果たしました。そうした部分をM&Aのアドバイザーとして証券会社が入り、確実なモデルづくりを直接金融がやれれば良いと思っています。
荻生:上場企業の話が出ましたが、農家は圧倒的に個人事業主が多く、資金調達はもちろん、調達を頼れる相手を探すのも課題になっています。上場企業にならずとも株式会社化するなどして、会社としてどれくらい健全に運営できるか。そのあたりも今後の農業に必要な視点だと思いました。
最後に、農業と金融におけるデジタル化の取り組みについてうかがいます。金融機関が農業に携わる話になると、アグリテックやフィンテックといったデジタルが欠かせない時代になりました。海外の保険分野では、干ばつや洪水に備えた保険商品を提供している会社があります。また、農産物のマーケットプレイスを持ち、そこでの売り上げ状況で融資を行うサプライチェーンファイナンスのような取り組みも行われています。しかしシステム化が進んでいない日本では、いろいろなものの見える化が進んでいません。その点のデジタル化も大きな課題ですが、注目されている取り組みがあればご紹介ください。