2021年の第4四半期の期首においては、石油・ガスが短中期的に利益を見込むことができ、再生可能エネルギーなどへの移行戦略を策定・実行する時間があるという確信を高めています。第3四半期の原油価格は石油ガス会社の経営を持続可能とする水準で安定しており、石油・ガス会社の収益とキャッシュフローはパンデミック前の水準に戻り、天然ガス・LNGの市場は過去10年間にないレベルにまで上昇しました。
第3四半期の石油市場は、第2四半期末とほぼ同水準で終えています。石油消費量は第2四半期には2019年同四半期の96%まで戻り、第3四半期も継続して上向いたことから2019年同四半期の約97%まで持ち直しました。
供給面では、世界市場の3分の1を占めるOPECプラスが生産量増加の60%以上を占めましたが、米国バイデン政権はOPECプラスにさらなる増産を要求しました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)危機の間、OPECプラスは在庫水準を市場の正常化の指標としてきました。これによれば、すでに正常な市場になりつつあります。OECD加盟国の在庫は引き続き減少しており、2021年末までに2015年以来の最低水準に達すると予測されています。
天然ガス・LNG市場では、構造的な供給不足という証拠が蓄積され続けています。第3四半期末を迎え、ヘンリーハブ価格は第2四半期末に比べて40%、ヘンリーハブとアジアのLNGとの間のスプレッドは47%、それぞれ上昇しました。このような高騰は注目に値するものです。なぜなら通常は北半球の夏の終わりに需要(およびスポット価格)の一服を利用して、需要が増える冬に向けて安価な在庫を積むことが多いためです。しかし、LNGのスプレッドは冬の高値を記録した後、2月中旬に底を打って以来、継続的に上昇しています。
第4四半期のテーマは「コンティンジェンシー(不測の事態への対応)」です。天然ガス・LNG市場の発展は、安定した電力供給を維持するためのガスインフラの価値を明確にしました。ガス生産・LNG取引により再生可能エネルギーの一時的な供給停止に対処したことは、風力、太陽光、水力発電を補完するものとしての天然ガスの実行可能性や、電気自動車の普及や他の代替技術の登場が遅れることに対するヘッジとしての液化投資の価値を検証する機会となりました。
欧州と米州の気象パターンは、風力発電や水力発電の出力に影響を与え、両地域の天然ガスによる発電量の変化がそれを反映しています。米国西部では、2021年前半にガス発電量が5テラワット時(TWh)増加し、水力発電量の6TWhの不足をほぼ完全に補いました。英国では、第1四半期に風力発電が5TWh減少したものの、ガス発電を5TWh増加させたことで補いました。ロシアからの供給が途絶え、アジアのバイヤーとの競争が激化したため、欧州のガス貯蔵量は9月末時点で72%となり、この時期としては過去10年間で最も低い水準となりました(6%ポイント差)。