EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
2021年第2四半期を振り返ると、第3四半期の今後の見通しについては、当然のことながら楽観的な(ただし慎重な)期待が生じます。WTIおよびブレント原油価格は、第2四半期の初めに比べてそれぞれ19%、16%上昇し、天然ガス価格は第2四半期中に18%上昇しました。
今、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは衰えを見せつつあり、ビジネスも再開され、人の移動もまた増加しています。需要は分かりやすい形で反応しており、市場では過少な投資による供給不足のリスクが再燃する可能性があるというシナリオまで浮上しています。
一方で5月には、3つの出来事が石油業界を揺るがしました。1、オランダの裁判所がShellに対し、炭素排出量(サプライヤーや顧客の製品使用時の排出量を含む)を2030年までに2019年比で45%削減するよう命じました。2、米国では、ExxonMobilがアクティビストによって推薦された取締役を迎え入れ、脱炭素化戦略の変更を約束しました。3、Chevronの株主総会で、株主提案によるスコープ3の温室効果ガス排出削減目標が承認され、原油・ガス資産の売却と低炭素または無炭素の代替エネルギーへの投資が促される結果となりました。
第3四半期のテーマは「回復」です。パンデミックの勢いが衰えを見せていることから需要は増加傾向にあり、供給管理により価格は現実的な水準で安定しているようです。財政状態が第1四半期からさらに良くなると見込まれる第2四半期の決算を受けて、復活したキャッシュフローをどのように使うかについて活発な議論が交わされることでしょう。通常、企業は既存事業への再投資と資本還元のどちらかを選択しなければなりませんが、代替エネルギーへの投資に向けた取り組みが増えてきており、今後この2つに匹敵する第3の選択肢となると考えられます。
今のところ上流への投資は回復していますが、パンデミック前の水準に戻る兆しはありません。世界の稼働リグ数は新型コロナウイルス感染症拡大の影響による最低水準から24%増加していますが、2020年1月と比較すると、原油・ガス価格が今や同水準まで回復しているにもかかわらず、39%もの減少を見せています。資金不足による投資の減少と需要増加から原油・ガス価格は今後も上昇し、業界への投資に魅力的なリターンがもたらされる可能性があります。
また第2四半期には、ブラジル、チリ、米国西部で猛暑と干ばつが発生し、水力発電の出力が減少したため、代わりにガス火力発電が稼働しましたが、ここに冬が明けた後で欧州とアジアが抱えていた余剰在庫が投入されました。この事例は、再生可能エネルギーと天然ガスの潜在的な補完関係を浮き彫りにしています。
2021年第3四半期では、次の4つのトレンドが見られます。
パンデミックの際に特に大きな打撃を受けた原油・ガス関連株は、価格と利益の回復に伴って株価が上昇していますが、パンデミック前の水準はいまだ下回っています。
財政刺激策と拡張的な金融政策が経済を動かし続けています。インフレ圧力は避けられず、金融引き締めと金利上昇の可能性に対する市場の認識はピークに達しています。
パンデミックが始まって以来、在庫レベルを正常に戻すための供給管理が厳密に実施されてきました。この目標はほぼ達成され、生産者は収益と市場シェアの拡大にますます注力しています。
平常時の需要と成長への復帰が間近に迫っています。新しいプロジェクトは資金を集める必要がありますが、設備投資の不足から供給がひっ迫し、市場が反応する可能性があります。
経済活動の再開を受けて、企業業績と各指標は回復を見せています。上流への投資が不足するリスクも想定されている中で、代替エネルギーへの投資を求める社会的要請も高まりつつあり、企業の投資戦略は原油・ガス価格の見通しにおいて重要な要因の1つとなるでしょう。