EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
過去1年間、天然ガス市場はジェットコースターのように激しく変動してきました。ウクライナ情勢が変化する以前から価格は⾼騰しており、多くの国々のリーダーがロシア産天然ガスへの依存度の低減を急務と考えているため、この不安定な状況は継続するとみられます。
ガソリン価格の急騰には多くの要因があります。中南⽶では、季節的な⼲ばつのために⽔⼒発電の供給能⼒が低下しました。アジアでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるロックダウンからの経済回復において、天然ガス需要が高まりました。また、欧州・アジア間の液化天然ガス(LNG)をめぐる競争が激化しており、さらに、天然ガス⽣産者間においても供給と輸送の制約が⽣じています。これらすべてが要因となって、現在のパーフェクトストーム(最悪の事態)が⽣じたのです。
この状況における早急な解決策は残念ながらありません。浮体式LNG貯蔵再ガス化設備(FSRU)によるLNG⽣産量の増加などの主要インフラプロジェクトには、⻑期間のリードタイムが必要となります。天然ガスパイプラインの完成には数年を要する場合もあり、第三国を横断するとなると、非常に複雑な問題が⽣じる場合もあります。原⼦⼒発電の段階的廃⽌を今後数年間遅らせることも容易ではなく、これは地元住⺠の感情に影響を受け、世論を⼆分する問題ともいえます。
このような状況にもかかわらず、ガス供給源の多様化とエネルギー安全保障の改善は、インフラ建設が既に進⾏していることもあり、2020年代半ば以降には実現すると期待されています。その頃までには、その他の燃料や技術をより広範囲に組み合わせて利⽤することも、⼀層容易になると予想されています。また、バイオマスや⽔素燃焼タービンなどの代替燃料・技術への補助⾦により、これらの燃料・技術のコストが⼤幅に削減される可能性もあります。
電力価格上昇の圧力に直面している需要家にとっては、⻑期的な価格の確実性・予見性が確保できる電力購入契約(PPA)1 が一つの解決法となり、またそれに伴い開発事業者の収益性も保証されることにより、新しい再生可能エネルギーの導入が促進されることが期待できます。
天然ガス価格が高騰する中、EUは新たな野心的再生可能エネルギー目標とともに、エネルギー政策2の抜本的な見直しを提案しています。エネルギー戦略の見直しに向けた提案は近日中に公表される予定です。英国3 とドイツ4 は既に再生可能エネルギーの導入を加速させる計画を発表しており、より多くの国がそれに続く可能性があります。
エネルギー安全保障を強化し、欧州のロシア産天然ガスへの依存度を下げることは容易ではないでしょう。しかし一方で、再生可能エネルギーやその他の燃料・技術の導入を加速させるためには、今後数年間にわたる多様な戦略が必要となります。