EYの事例

データは自動車のカスタマイゼーションプロセスの透明性確保にどう役立つか

EYは、世界有数の高級自動車メーカーに対して自動車業界が抱えるいくつかの最も複雑な課題の解決に向けた支援を行いました。
Motorway intersection, Bristol, United Kingdom
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The better the question

複雑なプロセスを可視化するにはどうすればよいか?

自動車の複雑なカスタマイゼーションプロセスにおける車両の所在・状況を誰もが可視化できるように、新しいデータ駆動型モデルを考察します。

消費者にとってはありがたいことに、「フォード車を購入する人はどんな色でも好きに選ぶことができる ― それが黒である限りは」というヘンリー・フォードの名言は、とうの昔に歴史のゴミ箱に葬り去られています。しかし、マスカスタマイゼーション時代の到来により、顧客中心のアプローチをとる企業は難しい課題を突き付けられています。そうした中、EYでは、世界有数の高級自動車メーカーと連携して自動車業界が直面しているいくつかの最も複雑なサプライチェーン関連の課題解決に取り組み、カスタマイズされた車を顧客のもとへ迅速に届けるために必要なケイパビリティ強化に向けた支援を行いました。
 

自動車ディーラーで、自分がこだわり抜いて選んだ内装や外装、装備などが施された自分仕様の新車の売買契約書に署名捺印し、手付金を支払うとき、高揚感と待ち遠しさが入り混じった不思議な感覚が込み上げてくるものです。真新しい香りと自分が厳選した仕様に包まれた車内でハンドルを握っている自分を想像し、胸が高鳴るワクワク感。自分仕様のカスタマイズ車ゆえに納車までしばらく待たなければならない待ち遠しさ。そうした気持ちでいる顧客にとって、引き渡しの不必要な遅延は心穏やかでいられるものではないでしょう。ましてや、自分が発注した車の状況をディーラーが把握しておらず、車が今どこにあるのか、どんな作業が残っているのか、引き渡しの連絡はいつもらえるのかなどを知らせてもらえない場合、もどかしさもひとしおでしょう。
 

残念ながら、自動車が製造工場からカスタマイゼーションプロセスを経てディーラーへ納入され、最終的に顧客の手に届くまでのプロセスの効率的な管理は自動車業界全体の課題となっています。
 

自動車メーカーが長年積みあげてきたレガシーシステムは陳腐化し、顧客の新たな期待に応えられるものではなくなっています。依然として、ペーパーワークや手作業によるプロセスに依拠するところが大きく、コミュニケーションも不十分です。さらに、ディーラーは顧客が購入した車の所在を把握するためのリアルタイムデータをほとんど持ち合わせていないため、状況を顧客に伝えることができません。
 

とりわけ、こうした非効率なオペレーションは、プロセスの遅延や顧客満足度の低下、さらには、自動車の組み立て、出荷、カスタマイズなどに多額のコストを計上している自動車メーカーにとって不必要な財務負担の要因にもなります。完成した車をディーラーのもとへより迅速に届けることができれば、発生したコストをより迅速に回収できます。そして、より迅速に顧客に納車できれば、より高いマージンを期待できます。


Automobile Design Engineer Sitting Beside Hybrid Electric Car Chassis Platform Prototype, Using Tablet Computer for Design Enhancement. Facility with Vehicle Frame with Suspension, Wheels, Engine and Battery
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The better the answer

プロセスを再設計して卓越したカスタマーエクスペリエンスを創出する

EYが設計した新たなプロセスは、先端技術を基盤とし、すべてのステークホルダーにより良いエクスペリエンスをもたらします。


EYの支援事例として、世界有数の自動車メーカーの米国内の販売流通を担う部門の取り組みをご紹介します。同社の自動車は生産工場から世界各地に出荷されています。米国に陸揚げされた自動車は、まず、新車整備センター(VPC)に搬入されます。
 

VPCでは、輸入車の検査、必要なリペア、ソフトウェアの更新、顧客が指定した仕様に基づく装備品の取り付けなどのカスタマイズ、洗車・清掃、最終点検などが行われます。これらすべての整備作業は大規模に実施されます。顧客の個別のニーズ対応を必要とする何千台もの車が、VPCの広大な敷地内に配置され、各整備作業に応じて敷地内を移動し、全ての整備が完了すると、多数のディーラーと無数の顧客に向けて出荷されます。
 

一台一台の車を一定の間隔で効率的に敷地内を移動させながら整備するには、的確でシームレスな作業フローが不可欠です。しかし、同社の既存システムを合理化して、常時接続とリアルタイムの情報共有が求められる時代のニーズを満たせるようにすることも、ディーラーと顧客が期待する透明性を確保することも不可能でした。
 

そこで必要となったのが、先端技術を駆使した新たなプロセスの設計です。こうしたプロセスは、VPCの従業員からディーラー、顧客に至るすべてのステークホルダーにより良いエクスペリエンスをもたらします。
 

作業プロセスを一日短縮できれば、高級車の整備にかかる巨額の運転資金の節約が期待されます。

EYでは新車整備プロセスの包括的改善プログラムを立ち上げて、全てのプロセスを精査し、プロセス面の改善機会を特定することでVPCにおけるスループットを一日短縮することを目指しました

人を中心に据える(humans@center):現場にスマートテクノロジーを浸透させる

VPCでは、搬入された全ての新車に対して決められた一連の整備作業が行われます。しかし、「その車両は今、どこにあるのか。次にどんな整備が施されるのか。その作業は誰が実行する必要があるのか。一連の整備作業が確実に実施されるようにするにはどうしたらよいか。誰と情報を共有すべきか」など、VPC内の状況が明確ではありませんでした。

そこで、EYは、「SAP Vehicle Logistics」ソリューションを活用して新車整備の全プロセスの設計とデジタル化を行いました。本ソリューションを導入することにより、作業員は、「ビジュアルコックピット」を使って敷地内の各整備ヤードの稼働状況をリアルタイムで把握し、そのデータをもとに、新規に搬入された車に対して最善の整備フローを決定することが可能になりました。

Ernst & Young LLP コンサルティング分野のプリンシパルであるSpencer T Farrは、次のように述べています。

「EYでは新車整備プロセスの包括的改善プログラムを立ち上げて、全てのプロセスを精査し、プロセス面の改善機会を特定することでVPCにおけるスループットを一日短縮することを目指しました」

ハンディスキャナー、モバイルアプリ、バーコード技術などはすべて、完全に接続されたデータ駆動型エクスペリエンスを創出します。こうしたエクスペリエンスを通じてすべてのステークホルダーが有益な情報にアクセスできるようになります。

このように透明性が担保されると、VPC内の一台一台の車両の整備プロセスが完全に可視化され、ディーラーは顧客が注文した車の所在と状況を完全に把握し、顧客に伝えることができるため、顧客の期待により良く寄り添うことが可能になります。「現在、新しいホイールリムの取り付けが行われています」などと顧客に伝えることができれば、顧客の高揚感を持続させることができ、期待感もさらに高まるでしょう。これまで顧客がほとんど知る由もなかった整備プロセスの状況を顧客と共有できることにより、顧客満足度とブランドロイヤリティを改善する新たな機会も生まれます。


大規模にイノベーションを推進する(innovation@scale):クラウドソリューションを活用して生産性と従業員パフォーマンスを改善する

車の所在と個々の整備作業に関するデータをリアルタイムで入手できることは、コミュニケーションの改善に役立つだけではありません。こうした新たなクラウドベースのソリューションを活用することにより、自動車メーカーは現場の自動車整備士の稼働状況を複数のVPCにわたって追跡することが可能になります。これにより、従業員の説明責任の向上が期待される他、経営陣にとっては具体的で客観的な指標を見極める一助になります。


レガシーシステムは、VPCごとに専用のメインフレームが使用されていたため、それぞれのVPCは独自にシステムを運用していました。こうした状況を踏まえ、EYでは、SAPソリューションを活用して、分断されていたすべてのシステムをひとつのプラットフォームに集約しました。これにより、部門間の情報共有の促進や、業績の透明性向上を複数のVPCに跨って実現することが可能になりました

迅速にテクノロジーを実用化する(technology@speed):システムの導入から稼働・運用までを数日間で完了させる

サプライチェーンロジスティクスが複雑であることは良く知られています。新たなプロセスを再設計し、先端技術を導入し、全従業員がその技術を使えるようにすることは途方もない労力を要することだと思われるかもしれません。EYではこうした企業の取り組みを支援しており、上記の自動車メーカーは、一定のスピードと限られたダウンタイムで稼働する新たなVPCシステムの導入を実現しました。

新しいシステムへの移行支援について、Farrは次のように述べています。

「新しいVPCシステムへの移行はスムーズかつ効果的に行われました。移行を実施した最初の新車整備センターで新しいシステムが本稼働した際には、初めての試みということもあり、通常の整備台数に戻るにはひと月はかかると予想していました。しかし、5日目で元の整備台数に戻りました」


リアルタイムデータはプロセスのあらゆるフェーズで改善を促進
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The better the world works

リアルタイムデータはプロセスのあらゆるフェーズで改善を促進

卓越したデジタルエクスペリエンスを創出して複雑な物流関連課題を解決する


Ernst & Young LLP コンサルティング分野のマネージングディレクターであるKyle Sorensenは、次のように述べています。

「レガシーシステムは、VPCごとに専用のメインフレームが使用されていたため、それぞれのVPCは独自にシステムを運用していました。こうした状況を踏まえ、EYでは、SAPソリューションを活用して、分断されていたすべてのシステムをひとつのプラットフォームに集約しました。これにより、部門間の情報共有の促進や、業績の透明性向上を複数のVPCに跨って実現することが可能になりました」

消費者でもある私たちは、卓越したデジタルエクスペリエンスがどんなものであるかよく知っています。上記のEYのソリューションは、複雑な物流プロセスに同様のアプローチを適用することがいかに効果的であるかを良く示しています。

EYのVPCソリューションと自動車メーカーが持つ専門知識を組み合わせることにより、車両が陸揚げされてから顧客に出荷されるまでに要する時間を大幅に短縮することができました。さらに、顧客とディーラーのエクスペリエンスも劇的に向上しました。

Sorensenはまた、次のように述べています。

「新しいシステムの稼働初日から、クライアントが掲げた検査・出荷台数目標を上回ることができました。稼働以来、クライアントは目標台数の到達、達成、あるいはそれを上回る成果を実現しています」


トランスフォーメーションの実現

人、テクノロジー、イノベーションの力によるビジネストランスフォーメーション


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