CFOが直面する喫緊の課題:コーポレートレポーティングで企業のビジネスと真価をつなぐ
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企業の長期的価値を伝達するために求められるコーポレート・レポーティングの変革とは? (PDF)
ステークホルダーから長期的価値と持続可能な成長に関する知見が求められている今だからこそ、財務部門のリーダーはレポーティングを見直せるのではないでしょうか。
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要点
財務部門のリーダーは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックの先を見据え、環境的、社会的要因と財務面の業績を基準としてパフォーマンスが評価される世の中に焦点を当てていかなければならない。 レポーティングの適合性を再考することで、財務部門のリーダーは、財務報告の範囲を超え、ステークホルダーが望む長期的価値に関する知見を提供できるようになる。 財務部門のリーダーは、信頼されたAIに始まり、より柔軟な運用モデルに至るまで、レポーティングに対する需要の高まりに財務部門がどのように対応できるかという課題に取り組まなければならない。
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EY Japanの視点
昨今の長期的価値創造に対するステークホルダーの関心の高まりに伴い、日本でも開示拡充への動きが活発化しつつありますが、企業に蓄積された膨大な財務・非財務データを体系的に収集、分析、管理する体制の構築はまだまだ十分とは言い難い状況です。
不安定で変化の激しい時代にこそ企業には対応力や順応力が期待されており、豊富で多用な情報や将来への予測などの開示要請に対しては、クラウドソリューション、データ分析ツール、AIなどの信頼できるテクノロジーを基盤とする財務・非財務のデータ活用の体制構築が必要不可欠です。
また、リモートワークがニューノーマルとなり、従業員間の協調性が一層求められる環境下において、コーポレートレポーティングによる新しい未来の実現に必要な人材の確保や従業員の再教育など、積極的かつ革新的な対応が必要と考えます。
こうした変革を主導するのはCFO、経理財務部門であり、その点で経理財務部門のリーダーが担う役割が重要と感じております。
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新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは社会に試練を課しており、財務部門のリーダーは難しい課題を突き付けられています。幅広いステークホルダー(株主、従業員、顧客、コミュニティー、その他の関係者)のために長期的価値を生み出しながらも、柔軟性を発揮してパンデミックに対応するという、難しい綱渡りを強いられている中で、財務部門のリーダーは財務面の業績のみならず、環境や社会的な影響にも焦点を当てることで対応を進めています。
こうした、より幅広いさまざまな側面からパフォーマンスが評価される今の世の中において、財務部門のリーダーは企業価値におけるレポーティングが果たす役割を見直さねばなりません。つまり、財務情報の開示のみならず、(ビジネスモデルが社会的課題や環境問題の影響をますます強く受ける中で)非財務情報に対する需要に応えていく必要があるということです。また、財務およびレポーティングが将来どのようなものになり得るかを身を挺して考え、ディスラプション(創造的破壊)にも備えなければなりません。
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財務部門として、投資家、規制当局、その他のステークホルダーからの変化する期待に応えられなければ、レポーティングはその存在の意味を失ってしまう可能性もあります。
投資家、規制当局、その他のステークホルダーからの期待に応える上で、財務部門が中心的な役割を果たさない場合、レポーティングはますます的外れになる可能性があります。財務部門のリーダーに求められることは、「今」に焦点を当てるだけではありません。長期的な成功を収め、長く受け継がれるレガシーを築けるかどうかは、「さらにその先を思い描く」ことができるか否かに左右されることになるでしょう。
2020年EY Global財務会計アドバイザリーサービス(FAAS)のコーポレートレポーティングサーベイ では、1,000人を超える最高財務責任者(CFO)、財務管理者、その他財務部門のリーダーの方々から見解をお聞きしました。このデータをインタラクティブツールで確認してください。国別、業界別に調査結果を確認して比較できます。今回の調査から、レポーティングの変革を加速させる上で優先すべき事項が3つあることが分かりました。
レポーティングにとっての新しい現実を受け入れ、ステークホルダーが要求し得る知見について、ステークホルダーと連携する 企業価値においてレポーティングが果たす役割を見直す 財務部門のリーダーがレポーティングにおける将来あるべき姿を飛躍的スピードで、かつ破壊的に取り組む中、財務およびレポーティングの提供方法を新たな視点から見直す
この 「CFOが直⾯する喫緊の課題」シリーズ では、こうした変化していく責務を考察し、企業のリーダーが自らの組織の未来を再構築するのに役立つ、極めて重要な解決策と対応策とを提示します。財務部門のリーダーは、次に起こることを予想するだけでなく、さらにその先を思い描かなければなりません。
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1
第1章
レポーティングが直面する新しい現実
財務部門は現在、かなりのレジリエンスを示していますが、部門の長期的未来について思索するため、リーダーはさらなるアクションが必要です。
財務およびレポーティングは、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックに対して企業がどのように対応しているかを知る中心的役割を担っています。コーポレートレポーティングは、この激動の時代を乗り切るために探し求めている見識を企業の指導者層に提供します。また、大きな不確実性が伴う時代において、投資家など主要なステークホルダーが求める情報と信頼性も提供することができます。しかし、レポーティングが重要な役割を果たすことができるのは、財務部門が新型コロナウイルス感染症によるパンデミックとのその後の影響で必要とされた、経営上の新しい現実への移行を成功させた場合に限られます。2020年のEY Global FAASコーポレートレポーティングサーベイ によると、ほとんどの財務部門のリーダーは、自らの部門がリモートワーク環境へうまく移行したことに満足していることが分かります。
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マッケソン社のサンディップ・レディ氏(Senior Vice President, Controller & Chief Accounting Officer)へのインタビュー
マッケソン社は米国に本拠を置く巨大ヘルスケア企業で、「フォーチュン500」の上位10社に名を連ねています。サンディップ・レディ氏は、高度なリスクインテリジェンスと強固な技術基盤により、自社の財務部門が、どのようにしてリモートワーク環境にシームレスに移行できたかについて簡単に説明してくださいました。
リモートワーク環境への移行時に、マッケソン社の財務部門はどのような課題に直面していたのですか?
「当社は『フォーチュン500』で上位10社にランクインしており、3月末が決算期です。CEOから在宅勤務を命じられたのは3月12日でした。財務の仕事は複雑で、多くの管理や統制を伴うとはいえ、結局のところ知識労働(ナレッジワーク)です。そのため、適したテクノロジーを活用できれば、移行が物理的な場所の問題というより、文化の変革という側面が強いことが分かりました。そこで、動作検証や試行を重ね、アクセスする必要のあるシステムを全員が問題なく操作できることを確認しました。」
新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの規模が明らかになる中で、財務部門はどのように準備を進めたのですか?
「新規感染者が増え始める中、全員で対応しました。当社には、セキュリティの脅威であれ、パンデミックの脅威であれ、脅威を評価する優れたリソースがあります。グローバルなセキュリティ部門が、ヒューマンウェルネスを含め、セキュリティのあらゆる面に対応しているのです。この部門が早期からパンデミックの脅威に重点的に取り組み、私自身を含めた各部門のリーダーと連絡を取り合い、予行演習を行い、あらゆる選択肢に対応できるようにしました。その1つが、最終的に採用された、リモートワーク環境への完全な移行です。体制を完全に整えてから計画を実行に移すため、数週間の準備期間を設けました。」
財務部門でこの移行が成功したと仮定した場合、実オフィスとリモート環境の間のバランスは将来、どのようになるとお考えですか?
「会社レベルではまだ正式な決定を下していませんが、社会レベルではプロフェッショナルな人たちがより柔軟性の高い環境にシフトしていくと見ています。オフィスは今後、コラボレーションの場と位置付けられるようになり、知識労働(ナレッジワーク)の生産性を高めるために必ずしも不可欠な場ではなくなるのではないかと思います。知識労働(ナレッジワーク)は場所を選ぶことなく、必要に応じてホテルの部屋や自宅、カフェでもフレキシブルに作業ができ、また、オフィスをコラボレーションのためのスペースに利用することも可能です。」
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ソフトバンクグループ株式会社常務執行役員、経理統括を務める君和田和子氏は、リモート環境では、前からの同僚とおおむね効果的なコミュニケーションを日々とれるのに対して、買収や投資により新たに同僚となった人たちとの関係の構築がこれまでより難しくなる可能性があると指摘します。「画面越しでうまくコミュニケーションをとることは、直接会って話をするより難しい場合もありますが、コミュニケーション上の問題は特に感じません」と君和田氏。「ただ、ソフトバンクグループが子会社を新たに取得するとしたら、そうしたコミュニケーションは難しくなるでしょう。これまでは、新しい子会社の人たちと直接会って個人的な関係を築くよう心がけてきましたが、今はそれができません。」
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今の環境で財務部門はかなりのレジリエンスを示したかのように見えますが、財務部門のリーダーは、長期的未来がどのようなものになるのか、また、従業員を変革に適応させる方法や課題への対応について検討していく必要があります。今回の調査では、回答者の半数以上(56%)が「変更を余儀なくされたいくつかの変化に対して課題が生じた」と答えています。また、51%が「財務部門は新しいプロセスを適用できず、従来のやり方に戻ってしまうことがある」と答えています。
しかし、安易に従来のやり方に戻り、将来に十分な注意を払えない状態であれば、のちのち大きな危険を伴う可能性があります。例えば、財務部門が関連性や機敏性に欠けてしまうと、ステークホルダーが求める広範囲に及ぶ将来を考慮した知見の提供にも影響を及ぼしかねません。また、運用モデルが大きすぎて煩雑となることで、ビジネスが期待するスピードや柔軟性に対応できないことも予想されます。
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第2章
レポーティングの役割を再構築する2つの方策
財務部門はステークホルダーとの向き合い方を変え、レポーティングを中心に据えて長期的価値を実現する必要があります。
CFOの任務と責任は多岐にわたることが少なくありません。企業価値を守るだけでなく、企業価値を最適化し、成長させることがCFOには求められます。しかしながら、コーポレートレポーティングが後方重視の財務業績情報に焦点があるとすれば、任務のうち、たった1つ「企業価値を守る」だけが慣習として重要視されてきたことになります。したがって、企業価値の成長と最適化を表すツールとしてレポーティングを進化させることを目指さなければなりません。その際に重要となる領域が2つあります。
1. ステークホルダーからの広範囲に及ぶ、さまざまな開示要求の拡大に応える
不安定で変化の激しい時代にこそ、企業には対応力や順応力が期待されます。本調査での回答者によると、財務部門はさまざまな分野で「高まる」需要がある中、豊富で多様な情報と見識に対する需要の高まりという矢面にも立たされています。
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新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの結果、このような需要が加速した可能性がありますが、パンデミックが収束しても需要が減少することはないでしょう。それどころか、CEOなどの経営層は、視認性の向上に加え、財務実績、経営成績、市況環境の変化などをダイナミックに分析する高度な分析ツールの開発を期待していると思われます。
2. コーポレートレポーティングを中心に据えて長期的価値を実現する
投資家などのステークホルダーは、より長期的な視点を持ち、長期的価値創造に焦点を当てることを企業に期待しています。多くのCFOと財務管理者がこの転換を受け入れており、回答者の69%が、「主要なステークホルダーからはCFOや財務部門の最高幹部が長期的価値を管理する担い手であるとの認識が高まっている」と回答しています。
こうした長期的価値志向への移行は重要な課題です。財務部門のリーダーは、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックに特化した 国際会計基準(IFRS)や会計上の留意点を含む財務報告での質を向上させると同時に、 信頼できる、投資家レベルの環境、社会、ガバナンス(ESG)に関わる情報開示(英語版のみ) に対する投資家からの要求を含め、信頼できる非財務報告における要求の高まりに対応しています。近年、CFOは財務報告要件に対する規制主導の変更の波に取り組む必要性に迫られ、多くの場合は、新たな会計基準に応じるために多大な時間と労力を費やしています。現在では、投資家は社会的および環境的問題がビジネスモデルに及ぼす影響についての見通しを求めているため、ESGやサステナビリティを含む非財務情報に対する要求がますます高まっています。
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EY Global IFRS Services Leaderである Leo van der Tas は、企業の財務報告が市場からの厳しい精査につれ、非財務報告に対する開示要件も次第に厳しさを増していくと予想しています。「非財務報告は何年も前から存在しており、グローバル・レポーティング・イニシアティブ(Global Reporting Initiative)に立ち返っていく」と言い、また、「非財務報告の重要性は、過去1、2年の間に投資家やその他のステークホルダーからの期待によって急激に高まり、近年では財務部門関連を含んだルールの大幅な変更にもつながっている。特に、サステナビリティの基準設定に対しては、既にIFRS財団との協議が開始されており、このような動きは一部の資本市場だけでなく、グローバルでの統一した基準設定を可能とするため、証券規制当局、投資家、作成者グループのような各方面からのサポートも受けている」と語ります。
投資家やその他のステークホルダーにおける非財務情報への意識の高まりを裏付ける調査結果として、回答者の65%が「企業のブランド価値や人的資本など、企業にとって従来の財務KPIでは測定または伝達されない重要な価値がある」と回答しています。これに対し、企業がその人材価値の測定や伝達において「重要な改善」を遂げたと回答したのは48%にとどまる結果となりました。
財務部門のリーダーは、長期的価値の測定と伝達の妨げとなり得る要因を数々挙げています。その中で、おおむね5人に1人(17%)が最も重要な課題であるとしたのは「有形資産と無形資産の関係が長期的価値創造にどのように貢献するかを示す正式な報告の枠組みが欠如していること」です。
無形資産を取り入れた報告の枠組みがないことにより企業が直面する課題を解決するための新たな取り組みの1つとして、世界経済フォーラムの国際ビジネス評議会(WEF-IBC)が主導する「持続可能な価値創造(Sustainable Value Creation)」があります。EYは、企業により創造された共有および持続可能な価値を報告するための共通基準や推奨開示の開発を目的としたこの取り組みに参画しました。また、2020年9月に発表されたWEF-IBCの報告書において、ガバナンス、プラネット、人類、繁栄の原則という4つのESGの柱に基づく各指標の概要が明らかにされました1 。
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第3章
財務およびレポーティングの提供を再考案する
財務部門のリーダーは、財務部門の革新的な新しい未来を描き、従来の働き方を変える必要があります。
レポーティングの新しい未来をもたらすために、財務部門のリーダーは、今を起点にして、進むべき未来までの道のりを直線的に考えるのではなく、未来からさかのぼるアプローチにより、「今」と「次」のその先を思い描くべきです。ここでは、3つの領域について説明します。
1. テクノロジーへの信頼を築き、信頼できるAI(人工知能)の展開を加速する
ガバナンス、統制、倫理的枠組みおよび規制がコグニティブ・コンピューティングの変化のペースに十分に対応できていない環境では、AIに対する信頼の構築は困難です。回答者の3分の2以上(68%)が、「ガバナンス、統制および倫理的枠組みは、AI運用のために開発および改良の必要がある」と回答しています。その一方で、回答者の47%が、「AIによって生成された財務データの品質は、通常の財務システムのデータと同じようには信頼できない」と答えています。
AIから出力されるデータに対する信頼性の欠如が問題であることは明らかです。ただし、これらの懸念は、システムがどのように機能するかについての理解が不足していることに起因している可能性があります。別の見解として、AIの機械学習は、報告の信頼性と正確性を弱めるのではなくむしろ高める可能性があるというものです。このことは、個人で単一のデータを調査して、結果に独自のバイアスをかける可能性があるのに対し、AIはより多くのデータに基づいて結論に達するという事実によるものです。したがって、人間が行うときに比べ、スマートマシーンはより高い精度で、一貫性を持ち、時間効率がよく、データ駆動型タスクを実行できると言えます。
2. 財務およびレポーティングの運用モデルを変容させる
今回の調査によると、財務部門のリーダーは、将来的には財務機能が大きく変わると予想しており、よりスマートでオープンな財務オペレーションモデルに大きくシフトすると考えています。回答者の53%は、現在人間が実行している財務報告タスクの半分以上が今後3年間でボットによって実行される「可能性が高い」と考えており、24%は「可能性が非常に高い」と考えています。
財務部門のリーダーが将来に向けて財務運用モデルを再考案しようとしており、そのためには次の2つの優先事項があります。
変革の目標を達成するため、パートナー戦略またはマネージドサービス戦略を策定する
次世代のオペレーションモデルでは、プロセス主導の規制やその他の報告活動の多くは、社内リソースのみでは対応できない可能性があるため、外部専門家などへの業務委託による対応が考えられます。
財務およびレポーティングのクラウド化を図る
導入や投資の観点からどのテクノロジーを最優先するかという質問を財務部門のリーダーにした結果、最も多い回答はクラウド・ソリューションでした。他に高度なアナリティクスとAIも主な優先事項として挙げられています。クラウド・ソリューション、アナリティクスおよびAIは相互に密接に関連しており、この3つのテクノロジーが共に重視されているのはある意味当然と言えます。クラウドは、単に膨大なデータを格納する空間ではありません。AIは高度な処理能力を必要としますが、それを可能にするインフラがクラウドです。一方、AIは高度なデータ分析において重要な役割を担います。財務部門は、人間の知性をシミュレートして膨大な量の情報をデータ分析し、優れた知見を引き出すことを可能にしています。
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「金融界ではかねてからIT化が話題となってきましたが、今年は、それが現実のものとなりつつあります。当社では技術開発を大幅に加速させました。月に1度や四半期に1度のペースではなく、データのほぼリアルタイムでの更新や常時更新については、これまでも検討してきましたが、それが今、実現しようとしているのです。例えば、私は現在CFOとして売り上げの数字を毎日チェックしていますが、当社ではそのチェックを可能にするツールを非常に短期間で開発することができました。」
Niclas Rosenlew氏(SKF社CFO)
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3. リーダーシップの役割と財務スキルを再考する
CFOと財務管理者は、今後自らの役割が大幅に変化する可能性があることを認識しています。回答者の67%は、「CFOは、従来の財務の役割に費やす時間が減り、企業全体のデジタル変革と成長を推進するためにより多くの時間を費やすことになる」と回答しています。また、回答者の66%は、「CFOが新たな任務に焦点を合わせていることで、財務管理者はますますCFOの財務の役割を引き受けるようになる」と回答しています。
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「関係構築と他部門とのコラボレーションに関わるソフトスキルが不可欠となるでしょう。財務担当者はその分野の専門家であることはもちろんですが、会社のために真に貢献するには、部門横断チームで別の部門の専門家とコラボレーションするスキルが求められます。つまり、他者との絆を紡ぎ、信頼関係を築くことが必須です。さもなければ、より良いものを一緒に構築することはできません。」
Marc Rivers氏(フォンテラ社CFO)
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CFO調査(2020年のEY DNA)(英語版のみ) によれば、CFOの役割の再考を成功させるには、CFOの業務の責任とスキルに大幅な変更が必要になる可能性が高いことが分かりました。また、経営幹部間の強固な関係を構築することが、重要な成功要因となる可能性があるものの、現状は関係構築に懸念をかかえていることが示されています。例えば、回答者の52%が最高人事責任者(CHRO)とのコラボレーションが活発ではない、または全くないと答えています。
財務部門のリーダーは、部門内のスキルセットの見直しも必要です。多国籍スーパーマーケット・チェーンの会計責任者は、「当社では、会計とデジタルの高度なスキルを併せ持った人材を探すようになってきました。先ごろ採用したのは、デジタル・プロセスの専門家です。世間では、デジタル・プロセスと企業会計の両方の知識を持つ人材が求められていますね。具体的には、最先端のエンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)システムで何ができ、どの会計プロセスを自動化できるかを理解している人材です。ただ、デジタル化された後も変わらず求められるのは、IFRSの会計基準を読み解くことができる財務担当者です。IFRS第9号の内容を教えてくれるテクノロジーは今後も出てこないでしょう。」
「財務業務の取引志向のプロセスでは、必要なスキルが大幅に変わることになるでしょう。当社では、買掛金処理を自動で行うツールの導入を進めているところです。そのため、今後は消込作業にこれまでのように多くの人数を割かなくてもすみます。その代わりに必要となるのが、問題が生じた場合にその全体像を把握し、問題を解決できる人材です。このような状況で問題を解決することができるのは事務畑の人間ではありません。アナリストでなければならず、また、クリティカルシンキングとロジックにおけるスキルも必要です。」
Christine Rankin氏(ヴィオニア社、Senior Vice President, Corporate Control, and Principal Accounting Officer)
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4
第4章
今後の課題
CFOは財務のデジタル化を加速し、ESG報告の中心に財務部門を据え、大胆な人材戦略を策定する必要があります。
ここからは、財務およびコーポレートレポーティングに新しい未来をもたらすための重要な3つのアクション領域について説明します。
1. 財務のデジタル化を加速し、AIやその他のスマートテクノロジーに信頼を築く
出発点として財務部門のリーダーに求められるのは、結果をゆがめてしまうバイアスを起こすアルゴリズムがないかの確認から、法的リスクや負債などに至るまで、AI活用に伴い財務機能に生じるさまざまなリスクを網羅的に把握することです。AIにおいて信頼を築くためには、財務部門のリーダーはガバナンスや倫理に対し明確なアプローチを策定する必要があります。すなわち、AIの透明性を確保するための体系的な規程やマニュアルの整備および運用状況の定期的なレビューならびに継続的なリスク評価に関する方針と具体的な評価手順などを準備しなければなりません。さらに財務担当者がこうしたシステムを適切に運用するために必要なリソースの確保と教育・訓練の実施が重要となりますが、同時に、倫理的原則を考えた際にAI関連の規程策定に対しどのような影響が及ぶかを理解するため、規制当局への相談が必要になることも考えられます。
2. サステナビリティとESG報告を財務部門が主導する
サステナビリティとESG報告を含む非財務報告の結果が良好であるかどうかは、ステークホルダーにとってどれほど有用であるか、いかに信頼でき説得力があるものであるか、また、財務情報と非財務情報の関連性をどれほど明確に説明できているかによって決まります。それには、財務部門がステークホルダー(特に投資家)と向き合ってニーズを理解し、それに関連する重要な指標や開示に変換することから始めます。また、自信と信頼を築くためには、財務部門は非財務報告プロセス・管理に規律を浸透させる中心的な役割を果たすことが重要です。ガバナンスの効果的な実践を確立し、非財務プロセスとその管理およびデータ出力に関して独立した保証を追求していくことが、ステークホルダーとの信頼と透明性の構築に役立っていくでしょう。CFOと財務管理者が所属する部門に財務情報のプロセス、管理、保証の確立についての豊富な経験があれば、サステナビリティとESG報告を支えるために、財務の優れた実践と経験をもたらすことができます。
3. 以前と全く異なる将来を目指して従業員を再教育することに焦点を当てた人材戦略を策定する
財務部門のリーダーは、将来の財務部門において必要と考えられる技能を身に付けさせるために、従業員の再教育に向けて積極的かつ革新的なアプローチをとる必要があります。なお、財務部門の間で同種のスキルの争奪戦が起きる可能性があり、需要が供給を上回るような市場においては、将来においても有望な中核的財務要員が現在の財務業務においてますます必要となり、費用効果が高くなります。この場合に重要となるのは、既存の従業員のスキルセットにおけるギャップ評価や、財務担当者の新しいスキル習得を奨励するインセンティブ制度の導入などが考えられます。他方、財務部門のリーダーは主だった学習経験を得るだけではなく、継続学習の様式を根付かせることにも取り組む必要があります。なぜなら、テクノロジーの発展に対応するためには、財務担当者が、スキルをその環境に適応させる意欲と能力を持ち続けることが必要となるからです。
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「ステークホルダー資本主義の進歩の測定~持続可能な価値創造のための共通の指標と一貫した報告を目指して~(Measuring Stakeholder Capitalism: Toward Common Metrics and Consistent Reporting of Sustainable Value Creation)」(WEF、2020年9月)
サマリー
新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは、CFOと財務部門によるコーポレートレポーティングに重要な課題を突き付けています。今の環境で多くの財務部門はかなりのレジリエンスを示していますが、リーダーは将来を見据え、レポーティングの長期的未来について考える必要があります。先見的な視点を持つ財務部門のリーダーはおそらく、この環境から生まれるチャンスを生かし、レポーティングの従来の役割を変え、ポストコロナ時代になってもその有用性を維持できるよう取り組むことになるでしょう。それは、過去を守ろうとしているのではなく、未来を勝ち取ろうしている姿勢にほかなりません。
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