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Global Audit Quality Report:継続的改善に向けた取り組み


監査品質の向上に向けたトップ主導の取り組みは、資本市場に対する信頼と安心感の向上につながります。


要点

  • EYは、独⽴性、誠実性、客観性、職業的懐疑心をもって質の高い監査を実施し、信頼と安心感の醸成に努めている。
  • EYでは、監査品質を世界共通の最優先事項とし、継続的改善に向けた取り組みを進めている。
  • 最先端の監査テクノロジーと次世代の人材に投資し、監査品質の維持を図っている。

ステークホルダーが経済成長を促す重要な意思決定をする際に必要なのは、資本市場に対する信頼です。 監査人は独立した立場から、データを客観的に検証し解釈して適切な水準の検証を実施する確かな能力を通して、こうした信頼の構築を推進しています。このように、監査品質は、あらゆるステークホルダーにとって長期的価値を創造していく上で重要な意味を持ちます。

今日、生成AIという新たな難題をはじめ、地政学的な不確実性、サイバーセキュリティ、人口動態の変化など、企業がさまざまな課題に直面する中で、こうした信頼性は不可欠です。

公共の利益への貢献は、私たちが進める監査の変革の基盤であり、それがEYの監査品質の向上および監査業務の改善へとつながっています。

EYでは、組織全体で監査品質の継続的改善に取り組んでいます。この取り組みには、経営トップの揺るぎない姿勢、それぞれの国・地域・リージョンのリーダーによるサポート、監査手法の明確化/標準化、リスク評価手続きの改善、最先端テクノロジーの活用、次世代人材への投資、さまざまな分野の専門家チームの強化などが含まれます。

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継続的改善を目指すEYの取り組みについて、詳細をご覧ください。


A multi-ethnic family of three are walking hand-in-hand outdoors with their adorable mixed-race son in the middle.
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Chapter 1

品質は最優先事項

独立性、誠実性、客観性への期待。

EYは、独立性、誠実性、客観性を備えた質の高い監査を通して公共の利益に貢献できるよう、組織を挙げて取り組んでおり、その監査には、職業的懐疑心、専門的基準の順守、および職業的専門家としての正当な注意が求められます。 その対応として、EYのリーダーは監査の検査結果を徹底的に評価し、品質の改善点を導き出します。

 

EYはメンバーファーム全体で、150を超える監査規制機関による監査業務の検査を受けており、内部検査および外部検査から、EYの監査品質に対する貴重な知見を得ています。

 

外部検査において、多くの地域では引き続き良い結果ですが、一部のメンバーファームにおける検査指摘事項の増加を受けて、監査監督機関国際フォーラム(IFIAR)の検査指摘率が上昇しました。これはEYが上場している社会的影響度の高い事業体(PIE)に対して行った監査における、IFIARメンバー機関の指摘率(1つ以上の重大な指摘があるエンゲージメント数/検査対象のエンゲージメント数)であり、2022年の20%から2023年は28%に上昇しました。同時期のIFIARメンバー機関によるEYの上場/非上場PIEに対する監査への指摘率は26%から23%に低下し、IFIARメンバー/非メンバー機関によるEYの上場/非上場PIE監査に対する指摘率は18%から13%に低下しました。

 

2023年のIFIARメンバー機関によるEYの指摘率が上昇したのは、少数ではあるものの重要な国・地域における上昇を受けての結果となっています。

監査監督機関国際フォーラム(IFIAR)メンバー機関/非メンバー機関の指摘率

2022年

2023年

傾向

IFIARメンバー機関によるEY の上場PIE監査に対する指摘率

20%    

28%

後退

IFIARメンバー機関によるEYの上場/非上場PIE監査に対する指摘率

26%

23%

向上

IFIARメンバー/非メンバー機関によるEYの上場/非上場PIE監査に対する指摘率

18%

13%

向上


後述の複数年にわたるアシュアランス変革戦略では、監査手法の明確化と標準化、さまざまなトピックに関する監査サポートを提供するチームの一元化、さらにはEYメンバーの継続的な改善意識の強化に焦点を当てています。

新たな国際基準

2023年、国際品質マネジメント基準1(ISQM 1)の導入が最終決定されました。その一環として、2023年に、EYの全てのメンバーファームおいて、それぞれの品質管理システムに対する初回の年次評価を実施しました。

ISQM 1の導入は、体系的かつ強固な品質管理システムの構築を促進し、品質に関する役割と責任の明確化に寄与しました。

初年度に改善すべき点として認識された領域は、EYの全てのメンバーファームにおける統制の実施の標準化やリソース管理などでした。

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Chapter 2

品質と一貫性の強化

エンゲージメントチームに対する高品質な監査実施に向けたサポートとは。

私たちは、継続的改善に向けた取り組みの一環として、EYの広範なテクノロジープラットフォームを活用し、監査業務の現場力向上を図っています。

また、メンバーファームごとに、人材の配置や業務負担の管理、監査結果の特定分野に関するトレーニングやコーチングの強化、事業運営やポートフォリオ管理にも取り組んでいます。さまざまな取り組みについて、エンゲージメントチームがどう受け止め、実際に適用しているかをリアルタイムに確認することにより、軌道修正、新たな対応、および指導の必要性を把握できます。

また、良い検査結果であれ、悪い結果であれ、その根本原因を分析することで、高品質の監査に向けて一層注力することができます。

品質向上のための体制

EYでは、エンゲージメントチームと現場のリーダーが質の高い監査を実施するための支援体制が整っています。

世界中のアシュアランスリーダーは、変化の周知、エンゲージメントチームの指導、技術的な質問への対応、実施リスクやクライアントリスクの兆候の注視、必要であれば積極的介入の実施、業務改善の推進など、さまざまな領域で重要な役割を果たしています。監査の現場において、エンゲージメントチームが適切なタイミングで適切なリソースを確保し、十分な監査時間を確保できるよう体制を整えています。

監査品質にフォーカスする上では、さまざまなメトリクスや監査品質指標(AQI)が有効です。監査の実施、人材、不備の是正措置やイネーブルメント、時間を確保し監査の重要フェーズ完了日を設定するマイルストーン管理など、その分野は多岐にわたります。例えば、EY Canvas Client Portalでは、EYがクライアントに必要な証憑(しょうひょう)や内部監査により行われる業務結果の依頼を送信できることから、監査品質の向上につながっています。

その他にも、各地で散見される検査指摘事項に関する分野や新設/改訂された監査基準によって影響を受けている分野については、組織全体におけるリアルタイムのコーチングの実施、設計どおりに新しいテクノロジーを活用するための支援など、監査品質を向上させる取り組みも行われています。

EY監査の矢印グラフ

Coworkers discussing data on digital tablet in office
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Chapter 3

高品質な監査の強化

EYの人材とテクノロジーの活用を通じて。

品質の高い監査を実施することは、簡単ではありません。そこには、新たなリスクの評価をはじめ、データや最新テクノロジーへの対応、判断、迅速な監査手続きなどが求められ、多くの場合は厳格なスケジュール管理がされています。そのため、監査チームには特定のツールやスキルに加え、こうした課題に直面した際に支援を受けられる業務環境が必要です。

業務の遂行おいてテクノロジーが果たす役割

EYでは次世代のアシュアランステクノロジーに10億米ドル以上を投資しています。これは、現在有する最先端の監査テクノロジーの強みを生かしつつ、さらに進んだテクノロジーを取り入れ、一元化したシームレスなプラットフォームを構築し、変革を推進していくための投資です。

テクノロジーは、チームが自信を持って業務遂行できるよう支えとなるだけでなく、監査にデータ分析とAIを組み込むことで、チームの業務経験をさらに充実させることができます。テクノロジーによってプロセスを標準化すれば監査品質の向上につながります。また、データを活用することで、リスクに関する助言やそれに伴う推奨事項を提示することもできます。さらに、「異常」「外れ値」「予想外」と判定された取引をサンプリング対象として監査手続きを実施するといった、より適切な監査証拠を収集するツールも提供できます。

アシュアランステクノロジーは進化しており、具体的には次世代のデータアクセス機能や高度な分析を活用できるため、監査手法に組み込まれているデータドリブンな監査に対応し促進することができます。4カ年投資計画における初年度の2023年には、重要なアシュアランステクノロジー機能が20以上リリースされ、世界規模のAIを含み、EYのグローバルネットワーク全体に導入されました。AIを活用した機能がEY Canvasに統合されたことにより、EYのアシュアランスのプロフェッショナルはリスク評価をする際に活用しています。

EYテクノロジーを表すグラフ

 

私たちは、EYのテクノロジーを活用し、毎年7,750億行を超えるジャーナルエントリーデータを分析しています。また、世界中の15万件を超える監査で、EY Canvasが使用されています。

人材の獲得と育成

EYでは、優秀な人材の獲得と、次世代のリーダーへの投資に注力しており、それぞれの自発的なキャリア形成に向けて、全てのメンバーに成長と能力開発の機会を提供しています。

同時に、AI、ブロックチェーン、ロボティック・プロセス・オートメーション、イノベーション、サイバーセキュリティといった未来志向のスキルに加え、サステナビリティなどの需要の高い能力を身に付けることを奨励しています。2023年におけるEYの監査プロフェッショナルの合計学習時間は約900万時間で、平均学習時間は約85時間でした。

2023年におけるEYの監査プロフェッショナルの合計学習時間。

多様性が持つ力を最大化する

EYでは長年、ダイバーシティ、エクイティ&インクルーシブネス(DE&I)に取り組んできました。多様で公正でインクルーシブ、かつ高い成果を上げるチームの構築を目指すこの取り組みは、職業的懐疑心やクリティカルシンキング(批判的思考)を育てる多様な視点をもたらします。

労働力の変化に応じたキャリアパス

多様なスキル、バックグラウンド、経験を持つ人材が加わる中、EYのメンバーファームでは、全てのプロフェッショナルを対象に、より柔軟なキャリアパスを導入しています。また、人によってキャリア目標が異なることを認識し、各自が自身の進歩を管理するのに便利なツールやプロセスを提供しています。

特に優秀な人材にはキャリアアップを早めるなど、迅速かつ柔軟なキャリアパスを用意することは、多様な人材を新たに獲得し、監査のプロフェッショナルとして育成し確保する上で不可欠です。

Ezra Bailey
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Chapter 4

さらなるグローバル支援体制

監査品質へのコミットメントを維持する行動とグローバルネットワーク。

トップの姿勢

経営陣が適切な姿勢を示すことで、品質へのコミットメント、継続的改善に向けた取り組み、EYの価値の重視、グローバルな思考、チームワークに対する機運が高まります。また、各国・地域のリーダーが、監査業務において公共の利益に貢献する重要性を強調することで、それが組織に定着しています。

独立性と説明責任へのコミットメント

監査チームの経験豊富なグローバルリーダーから、最も若いメンバーに至るまで全てのメンバーに、高品質の監査に対する説明責任とコミットメントが期待されています。

説明責任のフレームワークは、こうした期待を強化するグローバルな品質管理の方針と実際の運用の双方で成り立っています。これらの方針や実際の運用は、評価に関するプロセスやガバナンスを規定しており、検査における指摘項目のレベルや独立性違反など、品質目標の達成状況に基づいて各人の監査品質および効果的なリスク管理についての評価のための情報を提供します。

また、EY Global Independence Policyでは、EYの組織およびメンバーに対し、業務に適用される独立性基準と、該当する地域の独立性基準を順守するよう義務づけています。

EY Global Audit Quality Reportでは、独立性とそのグローバルな適用をどう考慮し評価しているか、また、独立性ポリシーの順守を支援するツールとプロセスについて概説しています。

グローバル規模でリスク管理をサポート

リスク管理部門は組織全体の活動を調整し、EYのメンバーがグローバルおよびローカルのコンプライアンス責任を果たせるよう支援するとともに、顧客対応するチームが質の高いクライアントサービスを提供できるよう支援します。

具体的には、監査品質を高めるため、監査リスクが生じた場合は、すぐに生じた場所を特定して対応に当たっています。また、ネットワーク全体において、一貫性のある適切な対応を積極的に取るアプローチを推進しています。

監査の実施に悪影響を及ぼし得るリスクが発生したときには、それを特定、評価し、対応できるよう、独自の体制とプロセスを整備しています。また、マクロ経済や地政学的動向を注視し、監査への影響を評価して、必要に応じて指示やサポートを行います。

不正リスクについては、データを活用して不正な財務報告リスクを発見し、それに対応する新たな取り組みを行っています。多くの監査人が、不正リスクの可能性がある異常な取引とそのパターンを特定するために、データ分析を活用しています。EYではリスク・センター・オブ・エクセレンスや、各種ツールやプロセスを開発しており、これらを通じて監査チームは評価された不正リスクに対応できるようにサポートしています。

こうしたネットワークやフレームワークは、監査品質向上に向けた取り組みをサポートし、維持する上で役立っています。

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継続的改善を目指すEYの取り組みについて、詳細をご覧ください。



サマリー

EYは、ステークホルダーが安心して重要な意思決定を行えるよう、監査品質の向上を最優先課題に掲げています。品質向上へのコミットメントは、EYのグローバルリーダーの行動によって実証されており、監査品質の向上を目指し監査業務を遂行する組織の方向性につながっています。


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