13 分 2024年7月5日
デジタルタブレットを使って働く女性医師

医療機関がAIを活用し、ヘルスケア変革を加速させるには

執筆者 Aloha McBride

EY Global Health Leader

Passionate about the delivery of safe, high-quality healthcare at a reasonable price. Innovator. Dog mom.

EY Japanの窓口

EY Japan ヘルスケアセクター・アシュアランスリーダー EY新日本有限責任監査法人 パートナー

多様な文化や風土から学ぶことが多い。国内47都道府県を制覇。世界では何カ国の人々と会えるだろう。

13 分 2024年7月5日

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  • How to build a foundation in AI to accelerate health transformation (PDF)

医療機関やヘルスケア企業の経営層は、AIによる価値創造を実現するために、今すべきことを見極め、将来に向けてどのようなAIプラットフォームの構築に取り組むべきかを戦略的に考えていく必要があります。

要点

  • グローバル企業の経営層を対象にしたEYの聞き取り調査では、AIと生成AIをヘルスケアで活用するには、積極的に改革を推し進める経営トップの存在と、適切なガバナンス、データ、スキルが共に不可欠であることが判明した。
  • EYが実施したCEO Outlook Pulse Surveyによると、AI特有のリスクについて効果的な管理方法を検討したと回答したヘルスケア企業CEOはわずか36%であった。
  • 医療機関のガバナンスや基盤となるケイパビリティが成熟するにつれ、バックオフィス業務から患者への医療提供に至るまで、AIの活用範囲を拡大することができる。 
Local Perspective IconEY Japanの視点

生成AIの台頭によりDXを中心としたトランスフォーメーションへの関心が高まっており、生成AIの活用は今後の成長や競争におけるもっとも重要な要素の1つといっても過言ではありません。

これはヘルスケア業界においても同様であり、医療機関やヘルスケア企業の経営層は、生成AIの活用について戦略的に検討し、単なる業務効率化にとどまらず価値創造に向けていち早く動き出し、ヘルスケアトランスフォーメーションを加速させる必要があります。

では、世界でもトップクラスに少子高齢化が進み今後の労働生産人口の減少が見込まれる日本において、生成AIの活用や医療DXのポイントはどこにあるのでしょうか。

検討に当たっては国民皆保険制度といった日本独自の法制度の特徴を踏まえた上で、また個人情報保護をはじめとしたデータの観点でも患者の安全を最優先することにも留意が必要です。

EYが実施したCEO Outlook Pulse Surveyの結果をベースに、日本における生成AIの活用と医療DXのポイントを皆さんと考えていきたいと思います。

EY Japan の窓口

藤本 庸介
EY Japan ヘルスケアセクター・アシュアランスリーダー EY新日本有限責任監査法人 パートナー

本記事は当初LinkedInに投稿されたものです。

医療機関やヘルスケア企業の経営層は、医療用の人工知能(AI)および生成AIに関心がある一方で、不安も抱いています。AIによって医療提供のレベルが向上する可能性を秘めている反面、医療現場ならではのプライバシーやバイアス、信頼性に関わる課題を考えれば、そうした反応は当然のことです1。EYのCEO Outlook Pulse Surveyによれば、66%のグローバルヘルスケア企業のCEOが、AIで支えられる新しい未来において、社会、倫理、犯罪に関するリスクに対処するためには、さらなる取り組みが必要であると回答しています2。世界各地の医療機関やヘルスケア企業の経営層や臨床医に対するEYの聞き取り調査では、AIのリスクとリターンのバランスが取れるようなガバナンスとスキルの構築の重要性が浮き彫りになりました。

AIによって重要な知見を新たに得て医療向上に役立てる方法は多数ありますが、生成AIの活用もその一例です。生成AIは、構造化されていないデータを処理し新しいコンテンツを作成するというかつてない能力を用いたAIの一形態です。生成AIを使用して、患者がいつ、何を必要としているかを医療チームに知らせることが可能になれば、患者の健康状態の悪化を防ぎ、ケアの質の向上に向けた対応ができるかもしれません。

「糖尿病の診断歴のある全ての患者をふるい分けて分析し、対象患者にその治療に関するアドバイスを与えるといった仕組みがなぜできないのか」と疑問を提起したのは、ジョンズ・ホプキンス病院のAssociate Chief Medical Officerであり、同病院の研究所である「Armstrong Institute for Patient Safety and Quality」の中核的研究者でもある、C. Matthew Stewart博士でした。「たった一度でもこうした取り組みがあれば、米国民や他国人々の健康に非常に大きな効果があるはず」と言及しています。

生成AIは大きな可能性を秘めていますが、多くの医療機関では、AIの機能に慣れ、臨床現場での活用に移行する前にAIとデータのカバナンスを確実に進められるよう、バックオフィス業務を一本化する戦略的な取り組みから始めています。具体的には、請求書の作成や、各種請求手続き、廃棄物の削減、スケジュール管理といった業務が該当します。これらは、足がかりとするには比較的安全な領域と認識されています。

一部の医療システムでは、ウエアラブル端末で患者の正確な生体データのリアルタイム収集を行い、AIを臨床に活用して、患者の状態に統計的に有意なトレンドがないかを監視することにより、早期対応につなげる取り組みをさらに進めているところもあります。

臨床スタッフが6時間ごとに体温測定や心臓や肺の聴診をしていたとしても、医療システムには通常、収集されたデータを効率よく監視するスタッフがいないため、全体的なトレンドを見逃す場合があると語るのは、BioIntelliSense社のCEOである、James Mault博士です。同社は、患者のモニタリング用に医療用ウエアラブル端末およびAI分析ソリューションを提供する企業です。「AIが真のゲームチェンジャーだとするのは、まさにその点です。当社はスポット的な数値ではなく、データの推移を監視しているのですが、この2つには大きな違いがあります」と説明し、続けてこう語ります。「AIを使えば、『なぜこの患者は急変したのだろう』ではなく、『急変の兆候が出る前に適切な処置をしよう』という意識に変わるのですから」。

「AIはまさにゲームチェンジャーです……。AIを使えば、『なぜこの患者は急変したのだろう』ではなく、『急変の兆候が出る前に適切な処置をしよう』という意識に変わるのですから」
Dr. James Mault
患者の継続的モニタリング用として医療用ウエアラブル端末とAI分析ソリューションを提供するBioIntelliSense社のCEO

使命感を持って仕事に従事している臨床スタッフは、持続可能でない医療提供モデルに時として不満を募らせている現状もありますが、言うまでもなくアウトカムの向上が、目指しているゴールです。医療従事者は、患者が抱える痛みを緩和するために有効な知見を強く求めています3。 一方で、医療サービスを受ける側は、今後10年間で最新テクノロジーがヘルスケア分野で活用されるようになることを期待しながらも、医療関連の個人情報が適切に守られるようにしてほしいと考えています4。 AIのアルゴリズムが膨大になり複雑さが増すにつれ、極めて成熟したレベルのガバナンスやモニタリング、品質監視が不可欠になると見られます。

では、医療機関やヘルスケア企業の経営層は、AIがもたらす数多くの機会を生かすと同時に、そこから得られた知見が患者を危険にさらすことなく安全性を担保しながら、どういったことを進めればよいでしょうか。

医療を受ける側も提供する側も、医療分野におけるAIの可能性を認識している

総計

52%

EYのGlobal Consumer Health Surveyの中で、今後10年のうちにAIはヘルスケア分野で広く利用されるとした回答者の割合

EY Global Voices in Health Careにおける数値

0

聞き取り調査に応じた臨床医のうち、アウトカムの向上のために、患者集団に関する分析から得られた知見データを取り出して利用できるとした回答者数

医療機関やヘルスケア企業においてAIと生成AIの戦略を策定する際には、経営層が検討すべき5つの重要なポイントがあります。以降の5つの章で、これらの点を詳しくご説明します。

デジタルタブレットを手に、女性医師と会話するビジネスマン
(Chapter breaker)
1

第1章

AIと生成AIの導入・拡大に向けて、経営層のコミットメントを得る

経営層は包括的なビジョンに向けて、継続した取り組みが必要であり、一度試験運用が失敗したからといってAI戦略を完全に放棄してはなりません。

仮にAIプロジェクトの初期段階で軌道修正が必要になったとしても、医療用生成AIが生み出す能力に関して自社組織の賛同が失われることにならないよう、AIの大規模展開を包括的に進められる戦略が必要です。「大胆かつ新奇なイノベーションの採用は、とりわけ、患者の安全を第一に考えるヘルスケアのプロフェッショナルにとってはハードルが高いものです。だとしても、強力なリーダーシップによって、適切な教育を行い、患者ケアに明確な臨床上のメリットがあることを実証できれば、そうした課題を克服できるでしょう」と、BioIntelliSense社のMault博士は語ります。

EY CEO Outlook Pulse Surveyに回答したヘルスケア企業CEOのうち、40%以上が自社の企業ビジョンと戦略担当の経営層に直結する「AIタスクフォース」を立ち上げたと回答しています。

まず、経営層は、AIと生成AIを導入した将来の運営モデルについて、明確な方針と戦略的なビジョンを打ち出さねばなりません。こうした将来を描くには、各種アルゴリズムを運用し維持する組織のケイパビリティをどう成長させるかを検討する必要があります。また、方策を練らねばならないのは、アルゴリズムのサポートに用いる基礎データの監視、アルゴリズムに関するテストやトレーニングの実施と変更管理、およびアルゴリズムの相対的有効性を左右する可能性のある、データ要素やケアモデル、手順といった項目の変更を監視する方法などの整備についてです。アルゴリズムが別のアルゴリズムに依存するようになる未来は容易に想像できるため、企業全体の変更管理の能力や役割、スキルを進化させ、複雑な状況やリスクを適切に管理できるようにしなければなりません。そのためには、経営陣はこうした将来の医療運営モデルへの影響を考察し、今後の計画や投資、雇用、トレーニングのためには、また医療機関を守るためには今、何をする必要があるのかを検討することが不可欠です。

AI戦略策定に向けた取り組みを進めるヘルスケア企業CEO

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    上の棒グラフは、EY CEO Outlook Pulse Surveyの結果を基にまとめた図であり、ヘルスケア企業のCEOが社内で進める、AI関連への取り組みについての進捗状況を示したものです。主な調査結果として、ヘルスケア企業のCEOの40%以上が、企業ビジョンと戦略担当の経営層直属のAIタスクフォースを立ち上げたと回答していることが挙げられます。自社独自データのうち、AI活用によって競争優位性を生み出せるのが何かを見極められたと回答したのは、わずか24%です。

今できること:すぐに成果を出せる取り組みから始めることです。つまり、複雑なユースケースに挑む前にまず、低リスク・低コストの社内向けのユースケースから始めて、必要なアルゴリズムやガバナンスプロセス、変更管理について経営層のステークホルダーに理解を促すようにします。

今後注力すべきこと: 経営層は、新しいプロジェクトの推進や、戦略的コミュニケーションやプロジェクトの監督を行う上でキーパーソンとならねばなりません。

近代的なオフィスにてラップトップPCで仕事する人々
(Chapter breaker)
2

第2章

適切なガバナンスを整備し、AI戦略への信頼度を高める

人口動態の変化と新たな治療法やテクノロジーの出現で、データガバナンスとAIパフォーマンス管理が不可欠になっています。

AIが世界的に進化し続ける中、規制当局は、この新しい環境で適切にかじを切って進むべく、あわただしい動きを見せていますが、その動きは、とりわけ医療機器や臨床検査ワークフローへAIを採用することに関し、顕著なものになっています。バイアスのかかったアルゴリズムやデータセットの変化が患者ケアに及ぼすリスクを防ぐため、医療機関はパフォーマンスの監視と変更管理に特に注意を払う必要があります5

安全で持続可能であり、かつ、信頼でき、透明性の高いAIを確保する上で、ガバナンスは要です6。「『説明可能なAI(XAI)』は、提示された情報が臨床で受け入れられている治療プロトコルに基づいていることを医師が理解し、それに基づいてより良い判断ができるようにするために重要です」と、デジタルヘルスケアと診断ソリューションを提供するグローバル企業、Dedalus社のグループ最高デジタル責任者であるFemi Ladega氏は述べています。「医療機関のAIガバナンスは、ヘルスケア企業のAIモデルの成熟したニーズに対応できるよう、柔軟でなければなりません」。

  • 図の説明を表示する#図の説明を閉じる

    上の図は、医療機関のガバナンス体制の成熟度とAIユースケースの複雑さの関係を示したものです。ガバナンスが成熟するにつれ、医療機関のAIユースケースは、バックオフィス運営といったベーシックなユースケースから、ケアの最適化や個別化医療などのより高度なユースケースへと複雑になっていくと見られます。

AIや生成AIを巡る動きが活性化する中、医療機関が外部支援を求めるにつれ、いくつものポイントソリューションに頼ることで、管理不能となり、逆に費用が高くつくといった危険性もあるためです。こうした急速に変化する状況下では、医療機関は自身が選ぶパートナーやソリューションで構成されるエコシステムをよく検討し、それを構築していくための方針を定める必要があるでしょう。

今できること:AIガバナンスを、今ある組織やデータのガバナンスと調和させることです。医療機関がAIを受け入れ、理解できるよう、既存のプロセスの中にAIを組み込みます。

今後注力すべきこと:AIのポートフォリオ全体に、規制の変更、リスク、バイアスを監視する連続的なフィードバックループを構築します。全てのアルゴリズムを継続的に監視し、向上させる上で、フィードバックループをガバナンス構造の中に取り込むことが求められます。

大型モニターに表示されているグラフやデータを説明するビジネスウーマン
(Chapter breaker)
3

第3章

AI戦略を強化するため、適切なデータインフラを構築する

各種基準にしっかりと根差し、将来のヘルスケアシステムのニーズにも柔軟に対応できる、データインフラを構築します。

医療機関へAI導入する際に大きな障害の1つになるのが、データインフラです。ロンドンの医療機関では、5つの医療システムを統合するに当たり、単一の医療情報交換インフラを採用し、その医療機関全ての医療現場で記録を安全に共有するようにしました。これは「ロンドン・ケア・レコード」と呼ばれ、現場スタッフがロンドン市内のどこにいても、必要なときに必要な患者情報を入手できるようになっています。英国全土において、データをさまざまな目的でローカルに使用できる統一アプローチを支えるため、連合型のデータプラットフォームの整備が進められています。現在と将来にわたってAIを有効活用するには、将来のニーズに合わせて柔軟に対応できるデータインフラの構築が不可欠です。

「ロンドンの医療データ戦略では、単に6カ月分のデータを利用できるだけでなく、全ての患者との接点、および患者ケアの現場の全てで、ほぼリアルタイムでつながった状態で、全てのデータを利用できるようにすることを掲げていました」と、英国国民保健サービス(NHS)(ロンドン)のデジタルトランスフォーメーション担当ディレクターである、Luke Readman氏は述べています。

 

今できること:データ戦略とデータガバナンスを見直すことです。その中には、既存のメタデータ、データリネージ、データの所有権、インフラなども含まれます。ここでは、データ基準の活用が鍵となります。データを取り込み、各種基準を相互にマッピングします。オンプレミスからクラウドに移行することで、スケーラビリティと柔軟性が向上します。データのセマンティックレイヤーを構築して、情報を利用可能な形に整え、APIを介して公開します。そして、目指すビジネス成果を上げるのに必要となる、主要なインフラ要素を決定します。

 

今後注力すべきこと:さまざまなAIアルゴリズムのラインアップにも耐えられる、スケーラブルで柔軟なインフラの構築に重点を置きます。生成AIとAIのアルゴリズム一式を企業全体で一斉に大規模展開するとなると、あっと言う間にコスト高になる可能性があるため、調達の判断は戦略的に行います。

セミナーでアイデアを発表する女性起業家
(Chapter breaker)
4

第4章

AIトレーニングの実施により、従業員のスキル習得と向上を実現する

医療機関は、AIに苦手意識のあるスタッフから生成AIを先導するリーダーに至るまで、あらゆる従業員に向けたサポート体制を構築する義務があります。

医療機関では今後、従業員自身がAIや生成AIを使い始めるか、あるいはAIの出力結果に基づいて判断を下すかのどちらかとなります。よって、データのバイアスを認識し、パフォーマンスを監視する方法を理解できるような研修を検討することが重要です。また、AIや生成AIツールの導入を成功させるには、臨床医と共に進めることが不可欠です。こうした新しいツールが自分たちの今後に与える影響を臨床医が正しく理解できるよう、出力結果の元データやモデルについて、その透明性をスタート時点から確保しなければなりません。

今できること:AI教育全般に関しては、多くの著名な大学が将来の人材を準備するためにAI講座を開設しています。医療従事者は各自AIリテラシーを身に付けるためのトレーニングを受講し、日常業務にAIや生成AIが組み込まれる今後に備える必要があります。

今後注力すべきこと:AIリテラシーの高い医療従事者やAIに関心を持つ医療従事者を対象に、AIアルゴリズムの開発者や保守担当者に協力する具体的な役割を設け、患者の医療体験の継続的向上を図り、医療の最適化を目指します。

身振りを交えながらメンターと話をする女性医師
(Chapter breaker)
5

第5章

自社のAI成熟度に合ったユースケースを優先する

必要とされるAI ガバナンスやケイパビリティを構築するにつれ、医療機関はヘルスケア変革の実現に向けてAI の可能性を最大限に引き出せるようになるはずです。

医療機関は投資を始めるに当たり、財務的な数字であれ、臨床医や患者の体験であれ、価値の均衡という観点から、その投資に見合った成果を上げたいと考えるでしょう。価値を生むには、どういったAIが臨床的に適用可能なのか、費用対効果が高いのか、そして何よりそれは持続可能なのかといった状況に応じて、最適な種類のAIを適用しなければなりません。おそらく、いずれのユースケースでも、生成AIだけ、あるいは1種類のAIだけを軸にするのではなく、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)や機械学習、生成AIを組み合わせて、コスト効率や持続可能性の実現を目指すことになります。そこで鍵となるのは、こうした各種ツールを統合する際には、倫理的で有用なアルゴリズムを大規模に生成できるよう、管理が可能な形で統合し、適切な監視機能を持たせることです。

アルゴリズムを大規模に維持するとなると、コストは当然、重要な要素です。アルゴリズムのデータセットやトレンドは時間の経過と共に変化することがあるため、継続的に最適化することが求められます。アルゴリズムの複雑さが増し、規模が大きくなれば、当然、アルゴリズムを管理する運用モデルも大きく変化します。また、企業レベルでは、各種AIアルゴリズムを一貫して監視、保守、追跡、規制する必要があり、それには専門的なスキルやデータインフラに加え、徹底した監視が必要になります。

「けれども、価値は金銭的なものだけではないはずです」とジョンズ・ホプキンス大学医学部のStewart博士は言います。価値は、EHR(電子健康記録)のクリック回数を減らすことで臨床医の満足度を高めることや、世界の健康改善に向けた大きな一歩を踏み出すことなどといった形でもたらされるかもしれません。博士は「高血圧、糖尿病、うっ血性心不全、乳がんのベストプラクティスを全ての人に適用し、これらの疾患に対する医療格差を解消できれば、どれだけ費用がかかったとしても気にしないと思います」と語ります。

今できること:AIを使用することによる、自組織の戦略的目的と目標を定めることです。目標は、コスト削減か、収益成長か、業務効率化か、顧客満足か、イノベーションか、どれが妥当なのでしょうか。まずは、自身の組織の目的に合った、低リスクで実現しやすいユースケースから始めましょう。

今後注力すべきこと:少数のユースケースで自組織のガバナンスを検証し、インフラやスキルが整ったところで、より複雑な、変革をもたらすようなユースケースに取り組みます。導入したユースケースについては継続的に評価し、期待した結果を出しているか、あるいはさらに最適化する必要があるかを判断します。

 

本稿の作成に当たり、以下の方々の多大な貢献に深く感謝します。

Sezin Palmer, EY Global Health Sector AI Leader

Kayla Horan, EY Global Smart Health Analytics Solution Leader

Crystal Yednak, EY Global Health Senior Analyst

Rachel Dunscombe, CEO, OpenEHR

  • 参考記事を表示する#参考記事を非表示にする

    1 Z.Obermeyer, B. Powers, et.al., “Dissecting racial bias in an algorithm used to manage the health of populations,” Science,  25 Oct 2019.

    2 EY CEO Outlook Pulse 2023.

    3 EY Global Voices in Health Care Study 2023.

    4 EY Global Consumer Health Survey 2023.

    5 ECRI, “Top 10 health technology hazards for 2024”(2024年2月アクセス)

    S.Reddy, S. Allan, et al., “A governance model for the application of AI in health care,” Journal of the American Medical Informatics Association, March 2020.


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サマリー

ヘルスケア分野において、変革の加速と未来の価値創造の両方を実現するAI基盤を構築するに当たり、経営層は現在の業務を戦略的に検討すると同時に、将来に向けた計画を練る必要があります。

この記事について

執筆者 Aloha McBride

EY Global Health Leader

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