2020年3月期 有報開示事例分析 第8回:新型コロナウイルス感染症に関する後発事象

2021年5月26日
カテゴリー 解説シリーズ

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 駒田 亮

Question

2020年3月決算会社における「重要な後発事象の注記」における新型コロナウイルス感染症(以下「本感染症」という。)の影響の開示状況は?

Answer

【調査範囲】

  • 調査日:2020年8月
  • 調査対象期間:2020年3月31日
  • 調査対象書類:有価証券報告書
  • 調査対象会社:以下の条件に該当する2,415社

① 3月31日決算
② 2020年7月31日までに有価証券報告書を提出している
③ 日本基準を採用している

【調査結果】

(1)業種別開示状況分析

調査対象会社2,415社のうち、連結財務諸表及び財務諸表に本感染症に関連する重要な後発事象を記載した142社について、業種別の開示状況を<図表1>にて記載した。

小売業、サービス業の会社が特に多い状況であった。小売業、サービス業においては2020年4月7日の政府からの「緊急事態宣言」の発出に伴う地方自治体の休業要請により、店舗や施設の休業等を実施したことにより、会社の翌事業年度以降の財政状態、経営成績に影響を及ぼす旨の記載をしている会社が目立った。

<図表1> 重要な後発事象の注記の業種別開示状況

業種区分 会社数
小売業 33
サービス業 29
輸送用機器 10
卸売業 8
電気機器 6
機械 5
陸運業 5
化学 4
建設業 4
情報・通信業 4
その他の業種 34
合計 142

(2)重要な後発事象の注記内容分析

新型コロナウイルスに関連した重要な後発事象を注記した会社142社のうち、具体的な記載内容を図表にまとめた(<図表2>参照)。

新型コロナウイルス感染拡大による業績影響に鑑み、決算日後に新たな資金の借入れを行うことを決定している旨を記載した会社は72社と最も多く、続いて、政府の緊急事態宣言の発出に伴い、翌期以降の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす旨の記載をしている会社は31社であった。

<図表2> 重要な開示後発事象の記載内容

内容 会社数
新型コロナウイルス感染拡大の影響に備えるため、決算日後に資金の借入を決定した旨の記載 72
政府の緊急事態宣言の発出に伴い、店舗、施設の休業、営業時短を短縮等したことなどにより、翌期以降の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす旨の記載 31
新型コロナウイルス感染拡大の影響による操業の低下等により、翌期以降の財政状態、経営成績等に影響及ぼす旨の記載 20
新型コロナウイルス感染拡大の課題を回避するため、決算日後に組織再編(吸収合併、吸収分割、子会社株式の譲渡など)を決定した旨の記載 6
新型コロナウイルス感染拡大の影響のため、早期退職者の募集を決定した旨の記載 3
上記以外その他 14

(注)複数の内容を記載している会社もあることから合計は注記記載会社数142社と一致しない。

(旬刊経理情報(中央経済社)2020年9月20日号 No.1589「2020年3月期有報におけるコロナ禍関連の開示分析」を一部修正)