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EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 大竹 勇輝
2020年3月決算会社における「事業等のリスク」における新型コロナウイルス感染症(以下「本感染症」という。)の影響の開示状況は?
① 3月31日決算
② 2020年6月30日までに有価証券報告書を提出している
③ 日本基準を採用している
調査対象会社(196社)を対象に、「事業等のリスク」において、経営環境に本感染症の影響を記載しているか、開示状況を調査した。調査結果は<図表>のとおりである。
記載内容(※1) |
会社数 |
---|---|
操業の中止等の事業の停止リスク(※2) |
125 |
受注の減少等を含む市場環境等に及ぼすリスク |
102 |
サプライチェーンの中断リスク |
39 |
取引先の信用リスク |
19 |
資金調達リスク |
9 |
資産価値の毀損リスク |
9 |
追加的な債務負担リスク |
4 |
在宅勤務の拡大に伴う情報流出リスク |
3 |
その他 |
10 |
小計 |
186 |
記載なし |
10 |
合計 |
196 |
(※1)複数の項目を記載している場合には、それぞれ1社としてカウントしている。
(※2)自然災害に関するリスクに感染症の内容を含めて記載している場合には、「操業の中止等の事業の停止リスク」としてカウントしている。
<図表>のとおり、「事業等のリスク」に本感染症に関するリスクを記載している会社が大半の186社(94.9%)であった。このうち、当該リスクに対する対応策を「事業等のリスク」に記載している会社は、150社(76.5%)であった。また、その他として記載している会社の中には、例えば本感染拡大を契機に、在宅勤務などを中心にこれまでの就業スタイルを大きく変える取組みを加速していることに伴う人材育成リスクを記載している会社や、本感染症に関して不適切な対応をした場合のレピュテーションリスクを記載している会社もあった。
なお、業種別にみると、取引先の信用リスク、資金調達リスク、資産価値の毀損リスクについては、銀行業の会社において記載しているケースが多く、また、追加的な債務負担リスクを記載している4社については、全て保険業の会社であった。
(旬刊経理情報(中央経済社)2020年9月20日号 No.1589「2020年3月期有報におけるコロナ禍関連の開示分析」を一部修正)
2020年3月期 有報開示事例分析