2020年3月期 有報開示事例分析 第6回:新型コロナウイルス感染症に関する追加情報(財務諸表に重要な影響を及ぼすリスク)

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 中澤 範之

Question

2020年3月決算会社における「追加情報に記載された財務諸表に重要な影響を及ぼすリスク」における新型コロナウイルス感染症(以下「本感染症」という。)の影響の開示状況は?

Answer

【調査範囲】

  • 調査日:2020年8月

  • 調査対象期間:2020年3月31日

  • 調査対象書類:有価証券報告書

  • 調査対象会社:2020年4月1日現在のJPX400に採用されている会社のうち、以下の条件に該当する196社

① 3月31日決算
② 2020年6月30日までに有価証券報告書を提出している
③ 日本基準を採用している

【調査結果】

(1)追加情報の開示状況

調査対象会社196社のうち、連結財務諸表に本感染症の追加情報を注記した138社について、財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクの記載を集計した(<図表1>参照)。

翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクを記載した会社は、「なお、新型コロナウイルス感染症の収束時期及び経済環境への影響が変化した場合には、翌期以降の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。」という開示例が複数あった。これに対して、当年度の影響は会社ごとに異なる事象を開示していた。例えば、建設業、不動産業は全国の事業所や住宅展示場等の閉鎖を注記し、水産・農林業は巣ごもり消費へのシフトによって家庭用商品の販売が拡大した旨を注記している。

<図表1> 経営環境についての説明における本感染症の記載内容

図表1 経営環境についての説明における本感染症の記載内容

(※1)影響が限定的、大きな影響なし等の記載を含む。

(※2)会社の属する業種について、当期の状況の記載を含む。

(※3)新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を予測することは困難との記載を含む。
 

(2)本感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定

調査対象会社196社のうち、連結財務諸表に本感染症の追加情報を注記した138社について、今後の広がり方や収束時期等を含む仮定の開示例を集計した(<図表2>参照)。

最も多い開示例は、翌年上期(2020年9月期)まで影響し、その後回復するとの仮定を記載している会社であった。続いて、翌年下期(2021年3月期)にかけて影響することを想定している会社が多く、全体として1年内の収束を予定している会社が70%以上を占めた。なお、収束時期の記載がない23社のうち、13社は会計上の見積りへの影響が限定的または重要でない旨を記載している。

<図表2> 追加情報に記載された会計上の見積り

図表2 追加情報に記載された会計上の見積り

(※1)例えば、2020年9月まで影響しその後徐々に回復する場合、収束時期は2020年9月とする。

(※2)一定時期、短期的、徐々に回復等の具体的な収束時期の記載なしを含む。

(旬刊経理情報(中央経済社)2020年9月20日号 No.1589「2020年3月期有報におけるコロナ禍関連の開示分析」を一部修正)


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