四半期報告制度の廃止に関する政令・内閣府令等のポイント

2024年5月23日
カテゴリー 会計情報トピックス

EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 前田 和哉

<内閣府令第29号が2024年3月27日に公布>

2024年3月27日に、金融庁から「令和5年金融商品取引法等改正に係る政令・内閣府令」(以下「本改正」という。)が公布されています。本改正は、2023年11月20日に成立した「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(以下「改正金商法」という。)のうち、四半期報告書制度の廃止に関する規定の施行に伴い、内閣府令及び規則等の規定の整備を行うものです。

1. 改正された主な内閣府令及び規則等

  • 企業内容等の開示に関する内閣府令(以下「開示府令」という。)
  • 企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)(以下「開示ガイドライン」という。)
  • 財務諸表等の監査証明に関する内閣府令(以下「監査証明府令」という。)
  • 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下「財務諸表等規則」という。)
  • 「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の取扱いに関する留意事項について(財務諸表等規則ガイドライン)
  • 連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下「連結財務諸表等規則」という。)
  • 「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」の取扱いに関する留意事項について(連結財務諸表規則ガイドライン)

2. 本改正の主な内容

(1) 上場会社等が提出する半期報告書に関する規定の整備

① 開示府令及び関連するガイドラインの一部改正(開示府令第18条)

(a) 改正金商法第24条の5第1項と開示府令第18条の関係
会社区分 提出期限 様式 中間(連結)財務諸表
上場会社等 45日以内 第四号の三様式 第1種中間(連結)財務諸表
上場会社等の特定事業会社 60日以内 第四号の三様式 第2種中間(連結)財務諸表
非上場会社 特定事業会社 60日以内 第四号の三様式 第2種中間(連結)財務諸表
3か月以内 第五号様式 第2種中間(連結)財務諸表
特定事業会社以外 45日以内 第四号の三様式 第1種中間(連結)財務諸表
3か月以内 第五号様式 第2種中間(連結)財務諸表

※上場会社等:改正金商法第24条第1項第1号に掲げる有価証券その他流通状況がこれに準ずるものの発行者である会社その他の政令で定めるもの

  • 第四号の三様式は、従来は四半期報告書の様式でしたが、改正後は上場会社等(特定事業会社を含む)が提出する半期報告書の様式に改正されています。第五号様式は、現行の半期報告書の様式から変更なく、引き続き非上場会社が提出する半期報告書において使用されます。
  • 非上場会社(特定事業会社)は、第五号様式と第四号の三様式の選択が可能です。いずれの様式を選択した場合も第2種中間財務諸表の作成が必要となります。この取扱いは従前の取扱いと変更はありません。
  • 非上場会社(特定事業会社以外)は、第五号様式と第四号の三様式の選択が可能です。第五号様式を選択した場合、第2種中間財務諸表の作成が必要となります。この取扱いは従前の取扱いと変更ありません。一方で、第四号の三様式を選択した場合、第1種中間財務諸表を作成することになり、この取扱いは新たに定められた開示制度となります。
  • 特定事業会社以外の非上場会社が第四号の三様式での半期報告書を選択した場合、その後、やむを得ない事情を除き、第四号の三様式での半期報告書の作成を継続する必要があります(開示ガイドライン24の5-2-3及び24の5-5-2)。
(b) 四半期情報の記載との関係

改正金商法第 24条第1項第1号に掲げる有価証券(改正金商法第5条第1項に規定する特定有価証券を除く。)を発行する者で、金融商品取引所の定める規則により四半期に係る財務情報を作成しているときと金融商品取引所の定める規則により四半期に係る財務情報を作成しようとしているとき又は非上場会社のときについて以下のように定められている。

     

金融商品取引所の定める規則により四半期に係る財務情報を作成しているとき
例えば、四半期決算短信を開示している上場会社で、社債発行を行うにあたり有価証券届出書を作成する場合等
開示府令第二号様式記載上の注意(61)の規定による連結貸借対照表、同様式記載上の注意(62)の規定による連結損益計算書及び連結包括利益計算書又は連結損益及び包括利益計算書並びに同様式記載上の注意(64)の規定による連結キャッシュ・フロー計算書並びに中間連結会計期間に係るこれらの書類のほか、直近の四半期連結累計期間に係るこれらの書類を併せて掲げることができます。
この場合には、当該四半期に係る財務情報に対するレビューの有無を記載し、当該四半期に係る財務情報に対するレビューが行われている場合にはそのレビュー報告書を併せて掲げることに留意が必要です(開示ガイドライン5-21-2)。
金融商品取引所の定める規則により四半期に係る財務情報を作成しようとしているとき又は非上場会社
例えば、四半期決算短信の公表前に社債発行する上場会社、第2四半期末日より前に上場する非上場会社等
直近の四半期連結累計期間に係る経営成績の概要を作成しているときは、開示府令第二号様式記載上の注意(66)bの規定による記載にあたっては、直近の四半期連結累計期間に係る経営成績の概要を併記することができます(開示ガイドライン5-21-3)。
  • 上記の規定は、第二号の四様式及び第七号様式により作成される有価証券届出書に関する取扱いについて準用します(開示ガイドライン5-21-4)。
  • 上記に記載について、以下に掲げる場合の区分に応じ、当該区分に定める方法によることができる(開示ガイドライン5-21-8)。
    ー 開示府令第二号の二様式又は第七号の二様式により作成される有価証券届出書に四半期財務情報等を記載する場合、これらの様式中「第三部 追完情報」に記載する方法
    ー 開示府令第二号の三様式若しくは第七号の三様式により作成される有価証券届出書、発行登録書又は発行登録追補書類に四半期財務情報等を記載する場合、当該四半期財務情報等を添付書類として提出する方法
     
(c) 連結会計年度における四半期情報等の記載

開示府令第二号様式記載上の注意(66)cの規定による最近連結会計年度における中間連結会計期間に係る⒜から⒟までに掲げる項目の金額及び最近連結会計年度に係る⒜及び⒠から⒢までに掲げる項目の金額又は同様式記載上の注意(74)dの規定による最近事業年度における中間会計期間に係る⒜から⒟までに掲げる項目の金額及び最近事業年度に係る⒜及び⒠から⒢までに掲げる項目の金額の記載において、これらの記載に併せて、最近(連結)会計年度における第1四半期連結累計期間及び第3四半期連結累計期間に係る開示府令第二号様式記載上の注意(66)c⒜から⒟又は(74)d⒜から⒟までに掲げる項目の金額を記載することができる。
この場合、これらの項目の金額について、第1四半期(連結)累計期間、中間(連結)会計期間、第3四半期(連結)累計期間、最近(連結)会計年度の順に記載します。
改正金商法第24条第1項第1号に掲げる有価証券を発行する者であり、金融商品取引所の定める規則により四半期に係る財務情報を作成しているときは、当該四半期に係る財務情報に対するレビューの有無を記載します(開示ガイドライン5-21-6)。

(d) 様式上の記載項目

開示府令第四号の三様式中「議決権の状況」欄を記載する場合において、中間会計期間の末日現在の状況を記載することができないときは、中間会計期間の末日の直前の基準日に基づく株主名簿による議決権数を記載することができるとしています(開示ガイドライン24の5-7-2)。

その他、財務諸表等規則及び連結財務諸表規則(以下「財務諸表等規則等」という。)等の一部改正等を踏まえ、開示府令の各様式の文言についての修正等を提案しています。

② 財務諸表等規則等及び関連するガイドラインの一部改正

「中間財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」、「四半期財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」、「中間連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」、「四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」を廃止しました。
また、告示指定している「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」について、四半期報告書の廃止に伴い企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」(以下「四半期会計基準」という。)を削除するとともに、企業会計基準33号「中間財務諸表に関する会計基準」(以下「中間会計基準」という。)を新たに指定していますが、四半期会計基準について、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」の指定から削除された事実をもって、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準として実務の中で取り扱われなくなることは想定されていません。
なお、期中レビュー基準における「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」は、財務諸表等規則に基づき金融庁長官が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に該当するものとして告示指定した企業会計の基準に限られるものではなく、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準として実務の中で取り扱われる企業会計の基準も含まれるものとの考え方が示されています(「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件(金融庁告示)の一部改正(案)」及び「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件(金融庁告示)の一部改正(案)」に対するパブリックコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方No1)。

改正前   改正後
四半期(連結)財務諸表 第1種中間(連結)財務諸表
中間(連結)財務諸表 第2種中間(連結)財務諸表
  • 第1種中間(連結)財務諸表等は、上場会社等において、第四号の三様式の半期報告書に含まれる中間(連結)財務諸表(財務諸表等規則案第1条第2項及び連結財務諸表規則案第1条第2項)であり、従前の第2四半期報告書に含まれる四半期(連結)財務諸表に相当するものです。
  • 第二種中間(連結)財務諸表等は、銀行等の特定事業会社又は非上場会社が提出する第五号様式の半期報告書に含まれる中間(連結)財務諸表(財務諸表等規則案第1条第3項及び連結財務諸表規則案第1条第3項)であり、従前の半期報告書に含まれる中間(連結)財務諸表に相当するものです。
  • 「第1種中間(連結)財務諸表」及び「第2種中間(連結)財務諸表」のいずれかは、半期報告書の「経理の状況」の冒頭に記載されますが、中間財務諸表を第1種、第2種に区分はしていません。
  • 会計方針について、前事業年度に係る(連結)財務諸表及び前中間会計期間に係る第1種中間(連結)財務諸表の作成のために採用した会計処理の原則及び手続は、正当な理由により変更を行う場合を除き、当中間会計期間において継続して適用しなければならないとしています(令和5年金融商品取引法等改正に係る政令・内閣府令案等に対するコメント及びコメントに関する金融庁の考え方(以下「改正府令のコメントに対する金融庁の考え方」という。)No61)。
  • 従来四半期報告書を提出していた上場会社(特定事業会社を除く。)が第1種中間(連結)財務諸表を含む半期報告書を提出する場合、及び、半期報告書を提出していた非上場会社が第1種中間(連結)財務諸表を含む半期報告書を提出する場合であっても比較情報の作成が求められます。比較情報の作成にあたっては、中間会計基準第38項に基づき中間会計基準が遡及適用されます。
  • なお、今回の改正を契機に従前とは異なる会計方針を採用した場合は、会計方針の変更にはあたらないと考えられますが、当中間(連結)会計期間への影響が大きい場合には、追加情報として、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に関する注記に準じて税引前中間純損益に対する前中間(連結)会計期間における影響額などを注記することが考えられるとされています(改正府令のコメントに対する金融庁の考え方No59)。
     

(2) 臨時報告書の提出事由の追加

  • 臨時報告書の提出事由に以下の事由が追加となりました。これは2022年12月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告において、四半期報告書で直近の有価証券報告書の記載内容から重要な変更があった場合に開示が求められてきた事項については、臨時報告書の提出事由とすることが考えられるとされたことを踏まえて改正が行われました。
  • 企業と株主間とので、企業の役員について候補者を指名する権利を株主が有する旨の合意や株主による議決権の行使に制限を定める旨の合意又は企業の株主総会若しくは取締役会において決議すべき事項について株主の事前の承諾を必要とする旨の合意を含む契約を締結した場合、既に締結している場合は合意の内容に変更があった場合(重要性の乏しいものを除く。)(開示府令第19条第2項第12号の2)。
  • 企業が株主との間で、株主保有株式の処分・買増し等に関する合意の締結及び変更があった場合(重要性の乏しいものを除く。)(開示府令第19条第2項第12号の3)。
  • 開示府令第19条第2項第12号の2及び第12号の3における重要性の乏しいものの例示として、少数株主を保護する必要性が乏しい場合、契約の相手が株主としての立場に基づかない場合や会社のガバナンスと無関係なものである場合、未公表の重要事実に関する交渉又は検討に係る期間を踏まえて一定の期間に限り有効なものである場合が示されています(開示ガイドライン5-17-6)。

3. 公布・施行時期

2024年3月29日に公布され、2024年4月1日から施行されています。

ただし、改正後の規定のうち、有価証券報告書等の様式に係る規定の適用については、以下のとおりです。

  • 有価証券届出書及び発行登録書(開示府令第2号様式 等)
    施行日以後最初に有価証券報告書を提出した時から適用(改正金商法附則第3条第2項の規定により、改正後の規定に基づく半期報告書を提出する会社にあっては、施行日以後最初に当該半期報告書を提出した時から適用)。
  • 有価証券報告書(開示府令第三号様式 等)
    施行日以後開始する事業年度に係る有価証券報告書から適用。改正金商法附則第3条第2項の規定により、改正後の規定に基づく半期報告書を提出する会社にあっては、施行日以後に提出する有価証券報告書から適用。
  • 臨時報告書(開示府令第19条第2項第12号の2及び第12号の3)
    2025年4月1日以後提出されるものから適用
    ただし、開示府令の施行前に締結された当該規定に規定する契約については、2025年4月1日から2026年3月31日までの間は適用しないことができます。

なお、以下の図表のとおり、四半期報告書は、施行日以後開始する四半期会計期間に係るものから提出が不要となりますが、施行日前に開始する四半期会計期間に係るものについては提出が必要となります(改正金商法附則第2条第1項)。また、改正後の規定に基づく半期報告書は、施行日以後開始する事業年度に係るものから提出する必要があります(改正金商法附則第3条第1項)。
施行日前に事業年度が開始し、かつ、施行日以後に第2四半期会計期間が開始する会社(12月期決算会社、1月期決算会社及び2月期決算会社)については、当該四半期会計期間が属する事業年度に係るものから、改正後の規定に基づく半期報告書を提出する必要があります(改正金商法附則第3条第2項)。

図表 決算期別の改正金商法の適用時期

4. 公開草案からの主な変更点

  • 第二号様式以外の有価証券届出書等においても四半期に係る財務情報の記載が可能であること、及び提出会社が上場時に四半期決算短信を開示する予定であり、金融商品取引所の定める規則に準じて四半期に係る財務情報を作成している場合にも、直近の四半期連結累計期間に係るこれらの書類を併せて掲げることができることを明確するために開示ガイドライン5-21-4を追加。
  • 提出会社が非上場会社である場合であっても、上場会社等に準じて四半期に係る財務情報を記載することが可能であることを明確にするため、開示ガイドライン5-21-3を修正。
  • 組込方式の有価証券届出書の場合は追完情報に、参照方式の有価証券届出書、発行登録書及び発行登録追補書類においては添付書類として、記載又は添付できることを明確にするため開示ガイドライン5-21-8を修正。
  • 開示府令第19条第2項第12号の2及び第12号の3における重要な契約の開示における「重要性の乏しいもの」に関する考え方をまとめて規定するように開示ガイドライン5-17-6を修正。
  • 企業結合に係る暫定的な会計処理の確定が前連結会計年度の下期に行われた場合の取扱いを明確化。また、会計方針の継続性に関して、前中間(連結)会計期間の会計方針と継続性も求められる規定となるように修正。

なお、本稿は概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。

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