EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
関連ウェブキャスト
本セミナーでは同書の発刊を記念し、社内外の専門家が考える今後のツーリズム像を提示します。前半では、マーケティング・ボイス代表取締役の鶴本浩司氏、本書を監修した弊社ディレクターの平林知高より、パンデミックからの回復期のツーリズムのトレンド、10年ほど先のツーリズムについて、それぞれ概括します。後半では、本書の編集人を務めたオートインサイト代表の鶴原吉郎氏、JTB総合研究所執行役員企画調査部長の波潟郁代氏を加え、今後のツーリズムについてディスカッションします。
多様化する観光客のニーズを捉え、観光地に集客するためには、個別の事業者だけの取り組みでは不十分で、観光地全体で観光客のニーズを捉え、必要なサービスを提供し、観光客を誘致していく必要があります。しかしながら、その観光地にどのような人が訪れているのか、どんな行動をとっているのか、どの程度の消費があるのかを「データ」として把握している地域は多くはありません。
観光客の行動、消費に関するデータを一番保有しているのは、実際に観光客にサービスを提供しているツーリズム関連事業者です。まずは、この事業者のデジタル化を徹底的に進めていく必要があります。しかしながら、ツーリズム関連事業者は、相対的に中小零細事業者が多いため、個別にデータ活用によるビジネス変革(トランスフォーム)を実現することは、スキル、ナ レッジ、リソースなどの制約から容易なことではありません。
そのため、ツーリズムの文脈でのDXの実現にあたっては、事業者がそれぞれDXに向けて取り組むというよりは、まずデジタル化を通じて、自社顧客の行動、消費のデータを取得できる環境整備に注力することが望ましいでしょう。その上で、各事業者のデータを観光地が集約し、そのデータから地域レベルで観光客の行動や消費を可視化し、最終的には個別事業者へインサイトを還元する方向性が考えられます。こうすることで、観光地は経営に必要な観光客の実態を把握できるため、多くの観光客を誘致し、個別の事業者へ送客するという「観光地経営」の一歩を踏み出すことが可能となります。
なお、ツーリズム関連事業者は、自社でデータをフル活用することが困難でも、まずは地域の状況が可視化されたインサイトや、データを一覧できるダッシュボードのようなものを使って、「何の」データが、「どのように」使われているのかを理解することが重要です。データの活用方法を理解することで、自らが経営のよりどころにしてきた、アナログな指標や勘がデータで裏付けられ、デジタル化やデータ活用の意義が理解しやすくなり、ひいてはビジネスの変革へとつなげていく道が拓かれるのです。