EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
現在、多くの企業において、日々の業務を省力化・効率化する、また先行き不透明な経済情勢を予測する、さらには創造性の契機を目的としたデータやAIを活用する取り組みが進行中です。しかし、すべての課題を解決する万能なデータ活用手法やAIソリューションはなく、その使い方の習得や使う側の準備なしに変革を進めることはできません。
データ基盤をはじめとするインフラ課題、また利用ルールや利用者の正しいマインドの醸成を含めたガバナンス問題に必ず直面します。適用範囲をチューニングせずAI導入を進めた場合、本来得たい効果の刈り取りに至らず、意図せず情報の外部流出につながるリスクもはらんでいます。EYでは、データおよびAI分野のテクノロジー知見ならびに業務見識を有し、ガバナンスの成熟度を見据えた確実なデータ戦略のシェルパとして、何をどの順番で実施するべきかの現実解と最新テクノロジーを実装するサポートを提供しています。
最高情報責任者(CIO)にとって、データが持つ威力や人工知能(AI)などの新興テクノロジーの可能性について、疑う余地はないでしょう。一方で、通常こうしたテクノロジーを駆使するには、大規模かつ組織全体の総力を挙げた変革が必要です。どうすればCIOは、経営層や日々の業務に携わるビジネス部門からより高い支持を得ることができるのでしょうか。またどうすればCIOは、より大きな成長と新しいビジネスモデルを生み出すための変革の担い手になれるのでしょうか。
データおよびテクノロジー分野のリーダー陣が集うTech Icons Council(英語のみ)の初会合(英語のみ)を盛況のうちに終えた後、2023年1月に同カウンシル関係者が集結しました。そこでは、今日の経済環境に融合し始めているAI、データ、テクノロジー人材の在り方について討議が行われました。ハーバード・ビジネス・スクールのIavor Bojinov経営学助教授兼Richard Hodgsonフェローと、南メソジスト大学(SMU)Cox School of BusinessのTasadduq Shervani戦略学教授の両氏に、他の有識者との議論や意見交換の進行を支援いただきました。現在AIプロジェクトの失敗率は60%から80%という驚異的な数字で(1)あり、これについてTech Iconsのメンバーからは、データよりも「直感」が優先されツールが使われないまま放置されているなど、企業文化面でのさまざまな障壁についての報告がありました。テクノロジーが変化するだけではなく、それを使う人間も同様に変わらなければならない必要性をあらためて感じさせる結果となりました。
本稿では、この討議結果のまとめとして、CIOが考慮すべき重要な8つのポイントについて解説します。
データやAI関連のプロジェクトの優先順位を決定するには、インパクトと実現可能性の2つの軸に関係する変数を考慮すべきです。インパクトが大きく容易に実装できるプロジェクトは、組織の勢いを加速させることができます。インパクトが大きいと想定される一方、実現可能性が低い場合は、たいてい多くの関心が集まるもののプロジェクトが長期化する傾向があり、根本的に必要となるスキルやインフラについての熟考を迫られるでしょう。
ガバナンスがAIプロジェクトの最初から組み込まれず、追加要件として後付けで考えられるケースがあまりに多く発生しています。AIプロジェクトの初期段階から、欧州連合(EU)の一般データ保護規則における「忘れられる権利」のような法規制上の考慮事項を最初から取り入れることが重要です。
データサイエンティストが、データパイプライン構築のような付加価値スキルから逸脱した場当たり的なプロセスに悩まされていると、開発に時間がかかり苦痛を伴います。AIプラットフォームは、より幅広いユーザーのためにデータサイエンスの民主化を加速する存在です。
仮説思考のアプローチを最初から取り入れ、ツールを進化させながら、アイディアも発展させましょう。例えば、高度なA/Bテストはリアルタイムに微調整できます。大きな新規企画の投資対効果(ROI)をモデル化するには、実証実験のプラットフォームが役立ちます。
あるTech Iconの参加者は、コールセンターの従業員に一番やりたくない作業は何か尋ね、その不人気のタスクの自動化を提案したことで、レイオフを懸念していた従業員から信頼を得ました。また、データがどのようにインサイトへと変わるかを示すツールにプロセスの説明も追加表示させることで、信用を高めることができた例もあります。
データは発生時点から管理されるべきであり、運用モデルの最新化が欠かせません。あるTech Iconの参加者は、組織内でデータドメインを確立し、データ管理のオーナーを割り当てる支援をしました。このケースでは、問題を特定した人が申し立てを行えるプロセスを導入し、業務フロー上、誰に連絡すべきか明確にすることができました。AIおよびデータ駆動型モデルが企業組織内に深く浸透していくのに伴い、このようにデータやプロセスの責任所在を明確にすることが重要事項になるでしょう。
不適切なデータのタグ付けなど、AIがもたらす意図しない結果から重大な問題が発生し、バリューチェーン全体に悪影響を及ぼす可能性があります。AI製品やサービスを導入する前に、検討しているベンダーのソリューションがどう機能するのか、まずその仕組みを理解しましょう。
全社や組織全体に対して、実質的な権限を与えられているでしょうか。社内に散在するすべてのデータの所有権限を完全に集中管理することは、もはや不可能です。そのため、信用と信頼の問題に帰結するのです。
データおよびAIプロジェクトの指揮を万全に執ることができれば、ビジネスを変革できる可能性が開けます。しかし、現時点で失敗するケースが相次いでいるのはなぜでしょうか。先を見越して行動できるCIOだけが、変革ジャーニーのストーリーを作り出し、周囲の協力を取り付け、目指す姿を実現する成功要因を見極めます。その結果、組織レベルの大胆な意思決定を促し、自社の潜在能力を開花させることができるのです。
EYの関連サービス
テクノロジーコンサルティングでは、最高デジタル責任者(CDO)や最高情報責任者(CIO)など、企業で重要な役割を担うCxOにとって最も信頼のおけるパートナーであり続けることを目標に、CxO目線で中長期的な価値創出につながるコンサルティングサービスを提供します。
続きを読むデジタル・イノベーションでは、経営戦略に整合したDX・AI・データ戦略の策定と実行により、デジタル時代の企業価値最⼤化・クライアントへの貢献を実現します。
続きを読む⽇本企業がデジタルテクノロジーを⾼度に活⽤し、全社DX推進、⽣成・マルチモーダルAI、汎用人工知能(AGI)、データ利活⽤に基づいたビジネストランスフォーメーションによる持続的な価値創出を⽬指し、企業価値最⼤化を実現する変⾰をサポートします。
続きを読む