EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY新日本有限責任監査法人 品質管理本部 IFRSデスク 公認会計士 上浦宏喜
当法人入社後、主として半導体製品、硝子製品等の製造業、小売業、ITサービス業等の監査業務に従事。IFRSデスクを兼任し、IFRS導入支援業務、研修業務、執筆活動等に従事している。
本誌2021年6月号「基本財務諸表プロジェクトの進捗(ちょく)状況」※では、基本財務諸表プロジェクト(以下、本プロジェクト)の中核テーマである損益計算書の小計及び区分表示の一般モデルに関する国際会計基準審議会(以下、IASB)の公開草案「全般的な表示及び開示」(19年12月公表、以下、公開草案)に対するコメント及び、21年4月9日時点までのIASBの暫定決定の概要を紹介しました。
本稿では改めて、IASBの再審議により22年10月31日時点までにIASBが暫定決定した公開草案からの全ての変更点のうち主要な項目に絞ってその概要を紹介します。なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、また、記載された内容は今後のIASBの審議の進捗に伴い、変更される可能性があることをお断りします。
<表1>の通り、持分法投資損益、現金及び現金同等物から生じる収益及び費用に関する分類方法が見直され、また、IFRS基準が定める小計について項目の修正及び追加が行われています。
公開草案の内容とこれまでのIASBの再審議の内容を踏まえた損益計算書のイメージは例えば次の<例示>のような内容になると考えられます。灰色でハイライトされている項目は今後IFRS基準で表示が求められる予定の段階損益であり、黄色でハイライトしている項目は今後IFRS基準が定めるその他の小計として必要な場合に表示されることになる段階損益です。また、IFRS基準が定める合計及び小計については、後述の通り、経営者業績指標(以下、MPM)ではないとされていますので、計算方法や選定理由といったMPMに関する注記項目の開示は求められません。
<例示>には記載されていませんが、必要な場合にはIFRS基準が定めるその他の小計として、「減価償却、償却及び減損損失前の営業利益」を小計として設けることも考えられます。
<例示>の項目に加え、各企業が財務諸表利用者の観点から有用と考えられる項目を関連する基準に従って追加することが求められます。
<表2>の通り、通例でない収益及び費用の定義の開発が中止され、費用性質法による営業費用の分析の開示要求については、その煩雑さや有効性に関するフィードバックを受け、修正されています。また、経営者業績指標の定義についてはさらなる明確化を図るためのガイダンスの追加が暫定決定されています。
22年10月31日時点では、IASBは具体的な基準の公表日及び適用日については明確に示していませんが、最終基準化に向けて審議を進めている状況です。審議が完了し、最終基準化される場合には、IFRS財団のデュー・プロセス・ハンドブックに定められた手続に従い、その公表日より18カ月から24カ月以降に開始する事業年度から適用が開始されることが想定されます。
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