EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
当法人ウェブサイト内の「企業会計ナビ」が発信しているナレッジのうち、アクセス数の多いトピックスを取り上げ、紹介します。今回は「わかりやすい解説シリーズ『収益認識』第1回:ポイントに関する会計処理」を紹介します。
顧客との契約において、既存の契約に加えて追加の財又はサービスを取得するオプションを顧客に付与する場合に、当該オプションが当該契約を締結しなければ顧客が受け取れない重要な権利を顧客に提供するときには、そのオプションから履行義務が生じます(「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下、適用指針)第48項)。重要な権利を顧客に提供する場合とは、例えば、そのオプションにより顧客が属する地域や市場における通常の値引きの範囲を超える値引きを顧客に提供する場合を指します。
このような場合には、顧客は実質的に将来の財又はサービスに対して企業に前払いを行っているため、将来の財又はサービスが移転するとき、あるいは付与されたオプションが消滅するときに収益を認識します(適用指針第140項)。
なお、追加の財又はサービスを取得するオプションには、販売インセンティブ、顧客特典クレジット、ポイント等が含まれます(適用指針第139項)。
追加の財又はサービスを取得するオプションを顧客に付与する際、重要な権利を顧客に提供する場合に必要な会計処理について、設例による解説をしていきます。
【前提条件】
① A社は、顧客がA社のインターネット販売サイトで商品を10円購入するごとに1ポイント付与している。
② 当該ポイントは将来A社のインターネット販売サイトで商品を購入する際に、1ポイント1円の値引きを受けることができる。
③ X1年度中に、顧客はA社のインターネット販売サイトで商品を200,000円購入し、20,000ポイント(200,000円÷10円×1ポイント)を獲得した。
④ A社は商品販売時点で、将来18,000ポイントが使用されると見込んでいる。
⑤ 当該ポイントは、A社のインターネット販売サイトで商品を購入しなければ顧客が受け取れない重要な権利を顧客に提供するものである。
⑥ X2年度末にA社は使用されるポイント総数の見積を19,000ポイントに更新した。
⑦ 各年度に使用されたポイント、決算日までに使用されたポイント累計、使用されると見込むポイント総数は次の通りである。
【各期の会計処理】
① X1年度中(商品の販売時)
A社は自社のインターネット販売サイトで購入した顧客に対して、通常の範囲を超える値引きを受けられるポイントを顧客に提供しており、当該ポイントが行使される、または失効するときにそのポイントに対する収益を認識します(適用指針第48項)。
商品販売時の会計仕訳では、取引価格200,000円を商品の独立販売価格、ポイントの独立販売価格で配分しています。ポイントの独立販売価格は直接観察できないため、将来オプションが行使されると見込まれる18,000円と見積ります(適用指針第50項)。
独立販売価格の比率で取引価格を配分した結果、商品に対して183,486円、ポイントに対して16,514円の取引価格が配分されます(<図1>参照)。
② X1年度末
X1年度末において、契約負債16,514円のうち、使用されたポイント8,000ポイントに対応する7,340円の売上を認識します。これは、A社が当初ポイントを付与した際に認識した、「将来顧客がポイントを使用することでA社は値引きをしなければならない」という履行義務が一部充足されたことによります。
③ X2年度末
X2年度において、顧客は7,000ポイントを使用しました。A社はX2年度までのポイントの使用実績を基に、ポイント使用見込みを18,000ポイントから19,000ポイントへ引き上げました。
X2年度末において、契約負債16,514円のうち、使用されたポイントに対応する売上を認識します。この時、変更後の使用見込みポイントである19,000ポイントのうち、X1年度とX2年度累計で15,000ポイントが使用されていることから、X1年度とX2年度累計で13,037円が認識される必要があります。したがって、13,037円からX1年度に認識した売上高7,340円を控除した、残り5,697円をX2年度に認識することになります(<図2>参照)。