情報センサー

SSC(Shared Service Center)とBPO(Business Process Outsourcing)について


情報センサー2019年12月号 EY Advisory


EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング(株)
IAドメイン 服部 伸一郎

外資系のBPOベンダーやコンサルティング会社で、BPO/SSC設立やデリバリー、業務改革、要員再整理や人事制度設計など多数のプロジェクトに参画。当法人では、BPO/BPOの戦略立案、設計、立ち上げから、デリバリー以降の各種管理(契約管理、プロセス管理など)までを支援するSRA(Sourcing Risk Advisory)サービスのリードを務める。EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング(株)パートナー。


Ⅰ はじめに

品質向上や業務コストの削減の方策としてSSC(Shared Service Center)やBPO(Business Process Outsourcing)が存在します。近年、特に日本国内では、労働人口減少に伴う人材不足を補う手段として、これらを検討する企業が増えてきました。
業務の担い手が不足しがちなため、場合によっては現行よりコストが増えても、長期的な人材確保の観点からSSCやBPOの導入に踏み切る企業も存在します。
SSCもBPOも業務を集約し、そのスケールメリットを活かして管理コストの削減やオペレーターの業務効率の向上、集約化された業務を統一的な品質管理方法論によって行うことにより、品質の向上が見込まれるといった効果がありますが、SSCでは自社もしくは自グループでセンターを設立して業務運営を行うのに対し、BPOは全く外部の委託業者(アウトソーサー)に業務運営を委ねるという違いがあります。
今回はSSCとBPOの違いを整理し、どのような企業がどちらを選択するとふさわしいのかを考察します。

Ⅱ SSCとBPOの違い

SSCとBPOの違いとして、初期準備、業務運営の二つの観点から特徴的な違いを<表1>のとおり整理します。


表1 SSCとBPOの特徴的な違い

前述のとおり、SSCもBPOも業務集約という方法論の意味では同じですが、SSCのメリットがBPOではデメリットになります。

Ⅲ SSC、BPOのどちらが適しているか

前述のⅡの整理から、どのような企業がSSC、BPOの導入に適しているかを考察します。最近は、SSC、BPOの双方のメリットを活かすため、SSC/BPOのハイブリッド型(SSCで集約した業務の一部をBPOにする)も存在しますが、今回は議論を整理するため、SSC、BPOのどちらかの選択という形で考えます。


<SSCに適している企業>

  • グループ会社数が多く、構成員もグループ会社間で人事ローテーション(出向、転籍)が盛んな企業は、業務の親和性が高い、もしくは業務経験者が多いと思われるため、SSCが適している。
  • 集約化する業務が比較的複雑で、外部化すると逆に業務がブラックボックス化しそうな企業は、BPOよりもSSCが適している。
  • 本体からグループ会社に対してのコントロールやガバナンスが効きやすい企業は、トップダウン的に全グループ会社に対して集約化の推進が図りやすい側面があり、SSCに適している。

<BPOに適している企業>

  • 労働力不足の穴埋めと同時に、徹底的なコスト削減を図る企業にとっては、BPOの方が効果は出やすい。アウトソーシング契約を長期間で締結した場合には、アウトソーサー側の生産性向上を織り込んで当該費用を契約初年度から割引をされる形態もあるので、発生コストをあらかじめコントロールすることも可能。
  • いったんアウトソーシングするとなかなか自社に戻せないリスクを考慮して、大量に発生し、かつ比較的単純な業務(伝票入力作業など)を集約したい企業は、BPOが適している。
  • グループ会社によって使用するシステムや業務プロセスが異なる企業は、アウトソーサーのコンサルティング能力や豊富なノウハウを期待して、標準化や業務改善までも委託することが考えられる。

Ⅳ おわりに

SSCもBPOも導入することが目的ではなく、当該手段で永続的に発生する業務オペレーションの品質や効率を常にモニタリングすることが重要です。センターやアウトソーサーに全てを委ねてしまうのではなく、本社部門など責任のある部署が常にコストや品質、リソースやリスク管理などを管理していくことが重要なのは言うまでもありません。

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情報センサー
2019年12月号
 

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