EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
本ガイドブックには、ベトナムの会計・監査・税務に関する最新の基礎的概要を掲載しています。すでにベトナムへ投資されている企業、および今後投資を検討している企業の皆さまの基本的な理解にお役立ていただけますことを願っております。
ベトナムの会計制度は、「ベトナム会計基準(Vietnam Accounting Standards:VAS)」を基本としていますが、会計基準に関する通達(Circular 200/2014/TT-BTC)も発行しており、会計基準がありつつも、一部は通達に従うという状況になっています。通達を踏まえてVASを改正する流れもありましたが現状は改正されていません。一方で、ベトナムの会計基準は、国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards:IFRS)へのコンバージェンスの流れもあり、通達200/2014/TT-BTC により、原則的にはIFRSと同様の考え方が採用されていますが、金融商品会計基準、固定資産の減損会計基準、従業員給付の会計基準については適用されていません。そのため、引き続きIFRSとの間で会計基準の差異が残っている状況となっており、留意が必要です。
ベトナムの会計監査証明は日本と同様に、ベトナム公認会計士協会に登録された公認会計士のみに認められています。ベトナム公認会計士協会は日本と同様に国際会計士連盟のメンバーであり、ベトナムの会計監査基準はIFRSに準拠したものになっています。
ベトナムの税金は、主として法人税、個人所得税、付加価値税(VAT)、外国契約者税(Foreign Contractor Tax:FCT)などがあります。法人税、個人所得税、付加価値税の考え方は日本における税法の考え方と同様ですが、損金算入の範囲が厳しいことや、還付の場合は厳しい税務調査があり、税務調査の対応が必要になります。また、ベトナム特有の税金として外国契約者税があり、海外からサービスを購入した場合などにおいて、ベトナムで源泉徴収が行われる場合があります。
項目 |
ベトナム |
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非上場企業(日本企業の子会社)IFRS適用の可否* |
否 |
IFRSと現地会計基準の主な差異 |
小
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決算期の変更 |
可 |
決算期末の選定(暦年以外の採用可否) |
可 |
会社法で作成が求められる財務諸表 |
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提出する財務諸表 |
同上
税務申告時に監査済財務諸表一式を添付して提出
提出先は企業ごとに異なる
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保存期間 |
原則10年 |
機能通貨適用の可否 |
可 |
法定監査 |
必要 |
非上場企業のIFRS適用可否については、以下の基準で記載しています。
否:税務申告時または規制当局に提出(添付)する、財務諸表は自国の会計基準で提出しなければならない場合。
可:税務申告時または現地当局に提出(添付)する、財務諸表は自国の会計基準以外にIFRS基準であっても良い場合。
ベトナムで事業を行う企業は、財務省が規定する「ベトナム会計基準(Vietnam Accounting Standard :VAS)」およびベトナム会計システムに準拠した財務諸表を作成することが義務付けられています。ベトナム会計システムには財務諸表を作成するにあたり遵守すべき法規制、会計慣行が示されています。すべての企業はベトナム会計システムにのっとり、財務省が指定する勘定科目および勘定科目コード(Chart of Account)を使用して記帳を行う必要があります。VASはIFRSをベースに順次改訂されていますが、有形固定資産にかかる減損会計、金融商品会計などに関する会計基準の詳細は未発行です。そのため、親会社と連結する場合には、VASに基づいた財務諸表に一定の修正を加えてIFRSに準拠する財務諸表を作成し、親会社の財務諸表と連結する場合がほとんどです。なお、VASに明確な規定がない場合は、財務省に文書で取り扱いを確認する事前ルーリング制度を利用できます。公表されているVASは以下の通りです。
基準No. |
内容 |
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基準1 |
一般基準 |
基準2 |
棚卸資産 |
基準3 |
有形固定資産 |
基準4 |
無形固定資産 |
基準5 |
不動産投資 |
基準6 |
リース |
基準7 |
関連会社投資 |
基準8 |
合弁会社の資本拠出に関する財務情報 |
基準10 |
外国為替レート変動の影響 |
基準11 |
企業結合 |
基準14 |
収益およびその他 |
基準15 |
工事契約 |
基準16 |
借入コスト |
基準17 |
法人税 |
基準18 |
引当金、偶発債務および偶発資産 |
基準19 |
保険契約 |
基準21 |
財務報告 |
基準22 |
銀行およびその他金融機関の財務諸表における開示 |
基準23 |
後発事象 |
基準24 |
キャッシュ・フロー計算書 |
基準25 |
連結財務諸表 |
基準26 |
関連当事者 |
基準27 |
中間財務報告 |
基準28 |
セグメント情報 |
基準29 |
会計方針の変更、会計の見積りおよび誤りの修正 |
基準30 |
1株当たりの利益 |
VASとIFRSの主な差異は以下の通りです。
IAS – VAS |
項目 |
差異の内容(VASの特徴) |
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IAS第1号 – VAS第21号 |
財務諸表の表示 |
ベトナム会計システム上、勘定科目コードおよび VASに規定されている財務諸表のフォーマットを使用することが求められる |
IAS第2号 – VAS第2号 |
棚卸資産 |
標準原価の採用は可能であるが、税務では認められていない |
IAS第36号 |
減損会計 |
VAS未発行。ベトナム政府に個別処理の許可を得ることにより、減損が認められる場合もある |
IAS第3号 – VAS第11号 |
営業権 |
原則として10年以内で償却(減損処理は認められない) |
IAS第39号 |
金融商品会計 |
VAS未発行 |
IAS第19号 |
従業員給付 |
VAS未発行 |
決算期の変更は、事前に税務当局へ決算期変更の申請を行う事で可能です。
12月末決算を3月末に変更する場合、12月末決算の税務申告に加え、移行期である1~3月の期間についても税務申告を行う必要があります。概要は以下の通りです。
会計年度としては1月1日から12月31日までの暦年が一般的ですが、3月、6月および9月末日も決算期とすることができます。12月末以外の決算月を採用する場合は、事前に財務省に登録する必要があります。
なお、会計法により、企業は第2会計年度以降からチーフ・アカウンタント(会計主任者)の資格保有者を雇用しなければなりません。社内雇用に代えて、会計事務所に委託することもできます。外資系企業の支店の場合もチーフ・アカウンタントの採用が必要ですが、駐在員事務所の場合は不要です。チーフ・アカウンタントは決算書類作成などの責任を負います。
VASを採用する企業は以下の財務諸表を作成する必要があります。会計帳簿はベトナム語表記が必要です。ただし、外国語の併記が認められます。
会社法で作成が定められた財務諸表一式が対象になります。なお、企業の種類ごとに提出先が異なります。
企業の種類ごとの提出先は以下の通りです。
提出先 |
|
外国企業 |
その他の企業 |
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財務局 |
〇 |
〇 |
ー |
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税務当局 |
〇 |
〇 |
〇 |
|
統計局 |
〇 |
〇 |
〇 |
|
企業登録機関 |
〇 |
〇 |
〇 |
会計法では、文書の種類に応じて保存期間が規定されています。企業の通常管理および業務の内部管理用として記帳や財務諸表の作成に直接用いられない文書は決算日から最低5年間は保管する必要があります。記帳および財務諸表の作成に直接的に用いられる会計帳簿などは最低10年間の保存が必要です。一般に企業はその重要性から法定保存期間後も任意の期間を定め書類の保存を行っています。会計証憑(しょうひょう)および会計帳簿は電子媒体で保存している場合を除き、保管前に印刷することが求められます。また、企業の法定代表者は保管期間終了後に会計文書破棄の決定を行います。破棄を行う場合は、関連文書が再生できないように裁断、焼却などの手段が必要です。
企業は原則としてベトナムドン(VND)を報告通貨として使用しなければなりません。ただし、売上と仕入などの経済取引を主に外貨で行う企業は、事業年度開始の10営業日前までに税務当局に通知すれば外貨での記帳が認められます。ただし、外貨の使用が認められる要件である「経済取引を主に外貨で行う」という要件については、具体的な数値基準などが定められておらず、外貨を報告通貨として使用する場合には注意が必要です。また、税務申告用の財務諸表については、外貨で作成した財務諸表をベトナムドンに換算替えしたものを使用する必要があります。
外国企業、上場企業、金融機関、保険会社、BCC(事業共同契約)および国有企業は、VASおよびベトナム会計システムに従い年次財務諸表を作成し独立した監査法人の会計監査を受けなければなりません。また、企業は事業年度終了日から90日以内に監査報告書および監査済財務諸表を提出しなければなりません。提出先は管轄の税務当局、統計局および計画投資局です。工業団地に所在する企業は工業団地管理局です。また、すべての外国企業は企業規模に関わらず法定監査の対象となります。法定監査は原則として期末に年1度ですが、本社の方針などから中間、四半期レビューを行うこともできます。
VASは、IFRSと比較すると、固定資産の減損会計がない、金融商品の時価評価が行われないなど、会計基準の差異が残っている状況となっています。そのため、日本側での連結財務諸表を作成するにあたっては、会計基準の差異の影響を検討する必要があります。また、会計基準の差異の検討にあたっては、ベトナムにおいてIFRSについて一定の知識を有しているチーフ・アカウンタントなどの会計人材は限られていることから、外部リソースの利用が必要となるケースが多い状況です。
また、会計法では定められた勘定科目コードを使用することが義務付けられています。親会社への報告では、当該勘定科目コードと当該親会社報告目的に沿った勘定科目コードをシステム内のサブコードなどを使用して整合させることが重要となります。
法人税率(%) |
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キャピタルゲイン税率(%) |
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支店税率(%) |
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源泉徴収税率(%) |
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欠損金(年) |
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(a) 標準法人税率は20%です。しかし、税制上の優遇措置が利用可能です(フルバージョンのセクションBを参照)。石油・ガス業界で業務を営む企業は、立地および特定のプロジェクトの条件に応じ2~50%の法人税率で課税されます。鉱物資源(例えば、銀、金および宝石用原石)の探鉱、探査および採掘に従事する企業は、プロジェクトの立地に応じて40~50%の法人税率で課税されます。
(b) 法人の資本または株式の売却によって得られた利得は、20%の税率で課税されます。外国投資家による証券の譲渡は、当該譲渡が利益を生んだかどうかにかかわらず、総売却収入の0.1%のみなし課税の対象となります。
(c) フルバージョンの「課税所得の計算」を参照。
税金の名称 |
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現地名称 |
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導入日 |
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貿易圏への加盟 |
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所管 |
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VAT税率 |
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VAT番号の形式 |
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VAT申告書の期間 |
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VAT登録 |
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国内で設立されていない事業者(外国法人)によるVATの控除 |
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フルバージョンには、EY Tax Guideの日本語版(法人税、個人所得税およびイミグレーション、付加価値税(VAT))が含まれています。
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