2024年中国の会計・監査・税務ガイド

本ガイドブックには、中国の会計・監査・税務に関する最新の基礎的概要を掲載しています。すでに中国へ投資されている企業、および今後投資を検討している企業の皆さまの基本的な理解にお役立ていただけますことを願っております。

2024年中国の会計・監査・税務ガイド

はじめに

中国の会計制度は、旧会計準則および新会計準則から成り立っており、会計年度はすべての会社で1月1日から12月31日までと基本法規である会計法の中で規定されています。新会計準則は2006年に公布され、国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards、以下IFRS)と同等であり、IFRSの改正に合わせて適宜改正が行われています。近年の改正では、IFRS9号(金融商品)、IFRS15号(顧客との契約から生じる収益)、IFRS16号(リース)に対応して新会計準則も改正が行われています。国内上場企業や一部金融機関、国有企業および非上場大中型企業は新会計準則の適用が求められますが、非上場大中型企業の取り扱いは実務的な運用に地域差があります。また会計監査については、公司法(日本でいう会社法)にて公認会計士による監査が義務付けられており、日本と異なりすべての会社が対象となります。

中国の主な税金には、企業所得税(源泉所得税を含む)、個人所得税、増値税、消費税、関税などがあり、頻繁に実施細則が公布されるといった特徴があります。近年の中国では、持続的な経済成長などを主な目的として、納税者の税負担の軽減を図るための各種減税策などが打ち出されています。一方、課税ベースを拡大し、税収の増加につなげるために、徴税管理の強化も図っており、事前承認制から事後管理への体制への移行、ビッグデータなどを活用した徴税管理、自主検査の要請などが行われています。また増値税で用いられる発票は、2021年より電子専用発票が利用開始となり、各地域で全面的なデジタル発票の施行が行われており、2025年に向けて発票の完全電子化を進めています。
 

中国の会計・監査制度(概略)

項目

中国

非上場企業(日本企業の子会社)のIFRSの適用の可否*

IFRSと現地会計基準の主な差異

新会計準則はIFRSと同等(一部取扱いに差異あり)

旧会計準則は1990年代の国際会計基準(IAS)を参考に作成され、その後は改訂が行われていない

決算期の変更

不可(会計年度は1月1日から12月31日と規定)

決算期末の選定(暦年以外の採用可否)

不可(会計年度は1月1日から12月31日と規定)

会社法で作成が求められる財務諸表

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 所有者持分変動表
  • キャッシュ・フロー計算書
  • 財務諸表注記

提出する財務諸表

同上

保存期間

年度財務報告書は永久

機能通貨適用の可否

可(表示通貨は人民元)

法定監査

すべての企業で必要

非上場企業のIFRS適用可否については、以下の基準で記載しています。
否:税務申告時または規制当局に提出(添付)する財務諸表が自国の会計基準で提出しなければならない場合。
可:税務申告時または現地当局に提出(添付)する財務諸表が自国の会計基準以外にIFRS基準であっても良い場合。

 

中国の会計・監査制度

非上場企業のIFRS適用の可否

新会計準則が強制適用されていない中国で事業を行う非上場企業のうち、小企業は小企業会計準則を適用しますが、新会計準則を適用することも可能です。それ以外の非上場企業は新会計準則もしくは旧会計準則のいずれかを適用する必要があります。
 

現地会計基準とIFRSの主な差異

新会計準則はIFRSと同等ではありますが、IFRSではのれん以外の固定資産減損の戻し入れが一定の場合に必要となる一方、新会計準則では固定資産減損の戻し入れは不可となっています。

旧会計準則は1990年代の国際会計基準(IAS)を参考に作成され、制定後改訂が行われておらず、税効果会計の適用は任意、リース(借手)の処理でオペレーティングリースは費用処理等、IFRSとは多くの差異があります。中国子会社が連結レポーティング・パッケージをIFRSに基づいて作成する場合、旧会計準則で現地財務諸表を作成している場合は多くの仕訳および組替が必要となる可能性があります。
 

会社法で作成が求められる財務諸表

企業は以下の財務諸表を作成する必要があります。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 所有者持分変動表
  • キャッシュ・フロー計算書
  • 財務諸表注記
     

決算期の変更および決算期末の選定

中国では会計年度は1月1日から12月31日までと会計法で規定されており、すべての企業に適用されています。
 

機能通貨について

新会計準則では、原則人民元を機能通貨として選定する必要がありますが、一定の条件下のもとではその他1種類の外国通貨を選択することが可能です。ただし、財務諸表では人民元に換算のうえ、人民元で表示する必要があります。旧会計準則では機能通貨の定義および選定について規定はされていません。
 

法定監査

中国では、会社法によってすべての企業に法定監査が求められています。前述のとおり、すべての企業の会計年度が1月1日から12月31日までのため、1月から3月頃までは監査繁忙期となります。

中国監査基準と、国際監査基準および日本監査基準との体系比較は以下のとおりであり、中国監査基準は国際監査基準と同様の体系になっており、国際的にみても十分な水準の監査が行われています。

国際監査基準

中国監査基準

日本監査基準

一般原則および責任

ISA200~299

CSA1111~1199

委員会報告書200~299

リスク評価およびリスク対応

ISA300~499

CSA1201~1299

委員会報告書300~499

監査証拠

ISA500~599

CSA1301~1399

委員会報告書500~599

他者の作業の利用

ISA600~699

CSA1401~1499

委員会報告書600~699

監査の結論および報告

ISA700~799

CSA1501~1599

委員会報告書700~799

特殊な監査/その他

ISA800~899

CSA1601~1699

委員会報告書800~999


会計、監査上の留意点

現地財務諸表では、実務処理の便宜のために税務目的で発票に基づく収益認識基準を採用している会社もあります。ただし会計の収益認識基準としては発票基準という考え方はないため、会計上適切な収益認識を行う必要があります。新会計準則を適用している場合には、IFRS15に対応する収益認識(14号)に従った処理を行うことが必要です。

監査上は、前述のとおり1月から3月は監査繁忙期であること、日程は毎年異なりますが春節が例年1月から2月に7日ほどあり、12月決算会社またはその他決算会社の四半期決算では、現場の対応が困難になる可能性もありますので、スケジュールには留意が必要です。
 

中国の法人税(概要)

法人税率(%)

 

25

キャピタルゲイン税率(%)

 25

支店税率(%)

 25

源泉徴収税率(%)

配当金(c)10

 
利息10

 
特許、ノウハウなどからのロイヤリティ10

 
支店送金税0

欠損金(年)

繰り戻し0

 
繰り越し(d)5/10

(a) 外国企業が中国における外国投資企業の持分を処分して得たキャピタルゲインには、法人税(企業所得税)の代わりに10%の源泉税が課されます。当該税率は、租税条約により軽減される場合があります。

(b) 法定税率は20%ですが、企業所得税法実施条例により10%に引き下げられます。

(c) 2017年1月1日より、外国投資家は、中国の税務上の居住者である投資先またはポートフォリオ企業からの帰属利益または分配可能利益を中国国内で直接再投資する場合、一定の必要条件を満たすことを条件に、配当源泉税の繰り延べ措置を受けることができます。

(d) 2018年1月1日より、ハイテク企業(HNTEs)ならびに科学技術型中小企業については、欠損金の繰越期間を10年に延長することができます(フルバージョン「課税所得の計算」参照)。
 

中国の付加価値税(VAT)(概要)

税金の名称

 

付加価値税(VAT)

現地名称

 増値税(Zeng Zhi Shui)

導入日

 1994年1月1日

所管

 財政部(MOF)
国家税務総局(STA)(www.chinatax.gov.cn)

VAT税率

標準10%

 
軽減3%、5%、6%、9%

 
その他ゼロ税率(0%)および非課税

VAT番号の形式

XXXXXXXXXXXXXXXXXX(18桁の番号、1桁の登録管理部門コード + 1桁の法人種類コード + 6桁の管理部門コード + 9桁の組織コード + 1桁の検証コード)

VAT申告書の期間

日次~四半期

免税基準値

 貨物販売:5,000元~20,000元の月間売上

 
 サービスの提供:5,000元~20,000元の月間売上

 
 日次売上300元~500元(上記範囲内で地方税務局が実際の基準値を設定)

国内で設立されていない事業者によるVATの控除

なし



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フルバージョンには、EY Tax Guideの日本語版(法人税、個人所得税およびイミグレーション、付加価値税(VAT))が含まれています。
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