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国際会計基準審議会(以下、IASB)は2019年12月17日、損益計算書において表示される経営成績に焦点をあて、財務諸表における情報伝達方法に関する改善を図るべく、公開草案「全般的な表示及び開示」(以下、公開草案)を公表した。公開草案では、投資家の要望に応えるべく、損益計算書においてより比較可能性が高い情報を提供し、また、経営者業績指標(「非GAAP」指標:収益及び費用の小計のうちIFRS基準で定められていないもの)を財務情報として提供する場合に、より規律性と透明性を高めたアプローチを求めている。
IASBは、この公開草案を基本財務諸表プロジェクト及びより広範な「財務報告におけるコミュニケーションの改善」に関する作業の一環として開発した。IASBはIAS第1号「財務諸表の表示」に置き換わる新しいIFRS基準としての公表を提案しており、いくつかの主要な変更提案が含まれている。以下では提案されている3つの主要なトピックとキャッシュ・フロー計算書の分類について解説する。
【3つの主要なトピック】
IASBは法人所得税控除前利益の前に「営業利益」を含む3つの利益を示す小計を表示することを提案している。多くの企業が損益計算書において営業利益を表示しているが、現在はIFRS基準で営業利益が明確に定義されておらず、企業間での意味のある比較が困難になっている。
新たな小計を設けることにより、企業はより適切な損益構造を財務情報として表示でき、また投資家による企業間比較が可能となる。
【損益計算書の表示例】
IASBは収益及び費用を4つのカテゴリーに分類することを提案している。
なお、銀行や投資会社等の金融機関については、主要な事業からの金融収益・金融費用、投資損益(ただし、持分法を適用している投資損益は除く)を営業カテゴリーに分類する。
提案されている損益計算書の様式は、営業、投資、財務のカテゴリーに区分される。また、企業の主要な事業と不可分な関連会社及びジョイント・ベンチャーから生じる損益は、この3つのカテゴリーの外にあり、事実上別のカテゴリーである。
ただし、キャッシュ・フロー計算書においては、「不可分」かどうかに関わらず、持分法投資先からのキャッシュ・フローは、投資活動に関する区分に含まれ、別個に表示される。IASBは公開草案の中で、基本財務諸表間での分類の統一を試みてはいないことを明らかにしている。
IASBは経営者業績指標を財務諸表で注記することを提案している。この注記では、当該指標が有用な情報を提供する理由と当該指標の計算方法を説明し、IFRS基準で定めている最も比較可能な利益小計との調整表を示すことが提案されている。
なお、公開草案では、経営者業績指標を損益計算書の本表で表示することを禁止していないものの、これは、そのような表示が、提案されているカテゴリーの構造に合致し、かつ営業カテゴリーに含まれる費用の分析に関する表示を妨げないことが条件とされている。
IASBは、以上により、非GAAP指標の使用に必要とされていた透明性と規律が確保され、投資家が財務諸表分析を行うために必要な情報が提供されると述べている。
経営者業績指針は以下を満たす収益及び費用の小計である |
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現在は投資家が、財務情報を的確に分解して分析に役立てることが困難と感じることが ある。これは、表示項目が不十分な名称や説明により合算されている場合が存在するためである。
そこで、IASBは、財務情報を投資家にとって最も有用な方法で分解することに役立つ新 たなガイダンスを提案した。企業は営業費用のより良い分析を提供すること、及び、「通例 でない(unusual)」の定義を用いて通例でない収益又は費用を識別し、注記において説 明することを求めることとした。また、基本財務諸表及び注記の役割や、集約及び分解の 判断原則等も提案されている。
これらの要求事項を設けることにより、投資家が企業の利益を分析し将来のキャッシュ・フローを予測する助けになるとされている。
公開草案では、キャッシュ・フロー計算書の作成方法について間接法を採用する場合には、営業キャッシュ・フローへの調整を行う出発点を営業利益とすることが提案されている。
また下記の通り、利息及び配当金をどのキャッシュ・フロー区分に表示するかが定められ、現行基準で適用可能な分類の選択肢が削除されている。
コメント募集期限は2020年6月30日である。
我々は、IASBが次のフェーズで要求事項の最終的な改訂を検討する際に、十分な根拠に基づく強固な議論を行うことに貢献するため、利害関係者が意見書の形でIASBにフィードバックを提供することを奨励する。
このトピックの影響を考えると、本公開草案は作成者、利用者、監査人、規制当局を含むすべての関係者にとって非常に重要である。
IFRS Developments 第158号 2019年12月
国際会計基準審議会(IASB)は2019年12月17日、損益計算書において表示される経営成績に焦点をあて、財務諸表における情報伝達方法に関する改善を図るべく、公開草案「全般的な表示及び開示」(以下、公開草案)を公表しました。
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