EU、関税法改革案に関する最初の裁決を実施

  • 欧州連合(EU)は、関税制度に対する複数の改革案を採択した。
  • 欧州議会は、2024年春に最初の法案審議を開始する。

2024年2月22日、EU域内市場委員会は、EUの税関当局の業務再構築を目指すEU関税法改革案に対する報告書案を採択しました1。改革案には次の内容が含まれています。

(i)EU域外からの輸入品における電子商取引に対する新規アプローチ

(ii)より効率的な税関検査および対象を絞った管理

(iii)EUの税関当局への情報提供を担う、新たなEU税関データハブの設立

EU関税法の改正

欧州委員会は、2023年5月にEU関税法改革案を提出しました。提案では、次の3つの独立した法案が含まれています。

  1. EU関税法とEU税関当局を制定する主要な法規
  2. 越境電子商取引に対する関税措置の簡素化および関税軽減基準の撤廃に関する理事会規則
  3. 第三国からの輸入品の越境電子商取引と輸入付加価値税(VAT)に関する特別制度に関する理事会指令

欧州議会は、上記1の法案に対して共同立法者となります。

この改革案は、電子商取引の急増と、EUが近年導入した多くの新しい製品基準、禁止事項、義務、制裁措置により増大している税関当局の実務上の負担軽減を目的としています。

提示の改革案には次の内容が含まれます。

  • 電子商取引とEU域内への商品輸入に対する新しいアプローチ ― 大規模プラットフォームでは、購入後1日以内にEUに出荷する商品情報の提出が求められます。
  • より効率的な税関検査と対象を絞った管理 ― 信頼性のある貿易事業者における新たなマルチレベルシステムは、当局が適正なビジネスの確認に割く時間を減らす代わりに、より高リスクのビジネスに集中できるようにすることを目的としています。徹底した事前チェックと審査に同意する企業は、さまざまな簡素化手続の恩恵を享受することとなり、中でも、最も信頼性と透明性が高いとされる企業は、「信頼性の高い貿易事業者」と認定され、EUでの輸入通関を最小限の検査と通関手続きで済ませることができます。
  • 新しい情報技術プラットフォーム ― 現在EU各国で使用されている111以上のシステムに代わり、新しい関税法の下、EUの関税当局に情報を提出する主要プラットフォームであるEUデータハブが設立されます。

欧州議会は、欧州委員会が提案した改革を支持する一方で、手続きをさらに簡素化するために、データ処理とアクセシビリティの明確化、内部告発者のためのプラットフォームの構築、新たなEU関税データハブの提案よりも早い導入、そして特に中小企業の貿易の促進と関連する負担の軽減などの修正を加えました2

次のステップ

域内市場委員会による関税法改革案に対する報告書が採択されたこと受け、欧州議会の次回本会議(予定は3月)では、当該報告書の審査および裁決が行われる予定であるため、これが欧州議会として初の関税法改正に対する見解となります。また、その後2024年6月上旬の欧州議会選挙後では、報告書草案についてフォローアップが予定されています。

巻末注
  1.  「First vote on the biggest EU customs reform since 1968 | News | European Parliament (europa.eu)」をご参照ください。
  2.  修正版は、「5-CAs_UnionCustomsCode_EN.pdf (europa.eu)」をご参照ください。

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