旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』 ー 第65回 いい子の殻を脱ぎ捨てて自分の人生を生きる

北 奈央子
株式会社ジョコネ。 代表取締役


Entrepreneurial Winning Womenの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2022年9月10日号に掲載された記事をご紹介します。



ヘルスリテラシーは健康を決める力。この言葉を見つけたとき、これをライフワークにしようと心に決めた私は「女性」にテーマを絞って研究や活動を重ねてきました。日本人はヘルスリテラシーが低い。教育水準は高いのになぜ? 生理用品を不透明な袋に入れられるのはなぜ? ピルの普及率が日本で低いのはなぜ? いろいろな疑問が生まれ、日本の文化や教育体制、さらにジェンダーギャップにぶつかってきました。

ヘルスリテラシーは健康や医療に関する概念ですが、生き方につながります。健康はあくまで人生のベースであり、目標ではありません。なので、自分が何をやりたいか、どう生きたいかと両輪なんです。日本の女性が月経(生理)や更年期について公に話しにくかったり、性に奥手なのは社会が期待する女性像がそうなっているからです。そこに合わせるがために自分の健康をいつの間にか害してしまっている。さらにいえば自分の人生を生きられていない、そう考えました。

私自身も小さいころからとてもいい子に生きてきました。親にとってのいい子、先生にとってのいい子、友人にとってのいい子、自分がどうしたいかより、周りにどう思われるかを先に考えるような子でした。いい高校、いい大学、有名な会社に入って周りからすごいと言われることで自分が成り立っていました。そんな私が会社員になり、会社の期待に応えるべく、仕事最優先で働く男性に合わせて働くようになりました。女性には月に一度月経があります。当時の私はピルの知識もなく、とにかく不調がでたら鎮痛剤で自分の体調をなんとか維持して働いていました。そしてある日起きられないほどの月経痛に襲われ婦人科を初めて受診し、子宮内膜症ということがわかりました。

そこから私の人生が変わり始めます。少しずつ自分の中で何かが変わっていき、「女性のヘルスリテラシー」というライフワークをみつけ、会社員をやめ、妊娠・出産を経てジョコネ。を起業しました。実は起業して少し後にどん底を経験します。仕事がない、自分は何の役に立ってもいない、どうしよう。そのときに多分人生で初めて自分と向き合い、小さいころから会社員時代までに作ってしまった「社会的に認められている(と勝手に思っていた)自分」から手を離すことができたのです。いい子ではなく、自分の人生を生きよう。誰に何と言われても自分がよければそれでいい、そこに賛同してくれる人と仕事をしていこう、社会を変えていこう、そう思いました。今もまだまだ道半ばですが、そこから自分の人生という車が動き出したような気がしています。

自分の人生を生きること、これがヘルスリテラシーにもつながります。人生に主体的に前向きに、そして自分を大切に、一見わがままにきこえますが、これまでいい子を頑張ってきた日本人女性にはそのくらいでちょうどいい。周りに振り回されず、自分がどうしたいか、一度じっくり見つめてみてください。人生は一度きり。いつでも「今」がそのときです。



北 奈央子

北 奈央子(きた・なおこ)
株式会社ジョコネ。 代表取締役

略歴
早稲田大学理工学部卒業・修了(工学修士)、主に外資系の医療機器メーカーのマーケティング職に従事。医療業界で見えてきた医療費増大の課題感から予防、未病に携わりたいと考え、ヘルスリテラシーの勉強のため聖路加国際大学大学院看護学研究科に入学、現在も博士後期課程に在籍。女性のヘルスリテラシーの研究を進める中で、自分自身をはじめ多くの女性が知らずに我慢している状況を変えたくて起業。NPO法人女性医療ネットワーク理事。



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