受取配当等の益金不算入制度に係る改正

公認会計士 太田 達也


グループ通算制度の導入に伴い、単体納税制度についても受取配当等の益金不算入制度、寄附金の損金不算入制度および貸倒引当金制度が改正されています。本改正は、グループ通算制度の適用を受けない単体納税の適用法人についても適用される点に留意する必要があります。令和2年度税制改正によるものですが、適用時期はグループ通算制度の適用時期に合わせており、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

以下、受取配当等の益金不算入制度に係る改正を説明します。「関連法人株式等に係る負債利子控除額の見直し」と「関連法人株式等または非支配目的株式等に係る判定の見直し」の2つの改正内容からなります。

 

関連法人株式等に係る負債利子控除額の見直し

関連法人株式等に係る配当等の額の益金不算入額から控除される負債利子の額は、その関連法人株式等に係る配当等の額の4%相当額とするとされました(法令23条1項、法令19条1項)。ただし、その事業年度に係る支払利子等の額の10%相当額を上限とすることができます(法令19条2項)(注)。

(注)支払利子等の定義は、従前と変わりません。

支払利子等の額の10%相当額を上限とする取扱い(法令19条2項)は、適用年度の確定申告書等にこの取扱いの適用を受ける旨および支払利子等の額の合計額を記載した書類(別表8(1)付表1)の添付がある場合に限り、適用が認められます(法令19条9項)。すなわち、支払利子等の額の10%相当額を上限とする取扱いは法人の選択に委ねられていることになります。

関連法人株式等に係る配当等の額の4%相当額よりも支払利子等の額の10%相当額の方が少ない場合、益金不算入額から控除される金額が少なくなるため、特例を選択した方が有利ではありますが、実務負担等も勘案して選択するかどうかを判断することが考えられます。

なお、負債利子控除額の上限額(支払利子等の額の10%相当額)については、単体納税適用法人の場合は、自社の支払利子等の額の10%相当額とします。

 

関連法人株式等または非支配目的株式等に係る判定の見直し

関連法人株式等または非支配目的株式等に該当するかどうかの判定については、100%グループ内の法人全体の保有株式数等により行うものとされました。すなわち、完全支配関係がある他の法人が有する株式の数(または出資の金額)を含めて判定を行うこととされました。

法人との間に完全支配関係がある他の法人が有する株式等を含めて、「他の内国法人の発行済株式等(当該他の内国法人が有する自己株式等を除く)の3分の1を超える株式等を有する一定の場合」および「他の内国法人の発行済株式等(当該他の内国法人が有する自己株式等を除く)の5%以下に相当する株式等を有する一定の場合」に該当するかどうかを判定することになります(法令23条4項、6項、法令22条1項、22条の3 第1項)。


関連法人株式等または非支配目的株式等に係る判定の見直し 図

なぜ単体納税適用法人にも上記のルールが適用されることとされたかですが、グループ通算制度を適用している企業グループとグループ通算制度を適用していない企業グループとの中立性・公平性の観点から、グループ通算制度の選択にかかわらず、グループ法人税制の対象となる企業グループでは一体計算を行うこととされたものです。

 

別表の記載例

上記の改正を受けて、別表が大幅に改訂されました。設例に基づいて、記載例を示します。

設例 

受取配当等の益金不算入制度に係る別表の計算例

前提条件

甲社は、X社の発行済株式数の25%を保有しています。ただし、甲社との間に完全支配関係がある丙社がX社の発行済株式数の15%を保有しているため、甲社および丙社にとってX社株式は関連法人株式等に該当すると判断されたものとします。

甲社におけるX社株式に係る配当等の額その他の数値は、次のとおりです。

関連法人株式等(X社株式)に係る配当等の額

3,000

①×4%相当額

120

支払利子等の額

800

支払利子等の額の10%相当額

80

X社株式に係る配当等の額3,000の4%相当額である120と支払利子等の額800の10%相当額である80を比較すると、80の方が少ないため、支払利子等の額の10%相当額を上限とする特例を適用した方が有利になります。特例を選択適用したものとします。

上記の前提条件の下で、甲社の別表8(1)および別表8(1)付表1を作成します。なお、完全子法人株式等、その他株式等、非支配目的株式等ならびに他の関連法人株式等はなかったものとします。
 

図表1 甲社の別表8(1)および別表8(1)付表1

別表の記載例1
別表の記載例2

関連法人株式等に係る配当等の額の4%相当額を負債利子控除額とするときは、別表8(1)付表1の1欄の不適用に丸を付した上で、17欄に関連法人株式等に係る配当等の額(16欄の数字)に4%を乗じた額を記載します。また、支払利子等の額の10%相当額を負債利子控除額とするときは、別表8(1)付表1の1欄の適用に丸を付した上で、19欄に支払利子等の額(5欄の数字)に10%を乗じた額を記載します。

なお、別表8(1)の3欄から10欄、14欄から26欄および27欄から30欄は、改正前の税法に対応する記載欄ですので、令和5年3月期の申告では空欄になります。


当コラムの意見にわたる部分は個人的な見解であり、EY新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことをお断り申し上げます。



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