証券業 第2回:証券会社を取り巻く環境

証券業研究会
木村嘉浩/本間正彦

2. 証券会社を取り巻く環境

有価証券関連業の中心的役割を果たしている証券会社について、以下に簡単にまとめます。

(1) 証券会社の歴史および現状

バブル崩壊後の1990年代は証券不況が深刻化し、多くの証券会社が赤字経営に陥り、経営破綻しました。しかし、その一方で従来の手数料重視型営業から、顧客からの預り資産を積み上げて、その資産管理からの安定的な収益を目指す資産管理型営業が重視されるなど、個々の証券会社がそれぞれに独自色を打ち出していた時期でもありました。1999年10月に株式売買委託手数料が完全に自由化されると、インターネット専業会社の台頭のほか、国内外の金融機関との連携を深める証券会社や銀行等による参入等、日本においても多種多様なビジネスモデルに基づく証券会社が存在することになりました。また、2004年4月からスタートした証券仲介業により、多方面からの有価証券関連業への参入がありました。金融の自由化や国際化の進展に伴う金融商品・新サービスの多種化・複雑化および資金調達・資産運用ニーズの多様化や有価証券関連業務のシステム化等が進む中で、証券会社には、金融サービス業としての発展が期待されています。

(2) 証券会社に関連する規制

規制業種である証券会社はさまざまな規制・監督を受けており、主として以下のような規制があります。

① 財務諸表等の作成に関連する規制

金商法や会社法、財務諸表等規則等における一般に公正妥当と認められる会計基準のほか、有価証券関連業における固有の勘定科目とその内容および経理処理方法については、「金融商品取引業等に関する内閣府令」(以下「府令」という。)および日本証券業協会の自主規制規則である「有価証券関連業経理の統一に関する規則」(以下「統一経理基準」という。)で定められています。

② 顧客資産の分別管理

金商法第43条の2において、証券会社は顧客から預かった金銭および有価証券について、万一、証券会社の経営が破綻した場合でも確実に顧客に返還できるように管理しなければならないとされています。そのため、有価証券については、顧客の有価証券をその他の有価証券と区分して管理することが必要であり、金銭等については、「顧客分別金信託」として、信託銀行等に信託することが必要とされています。また、金商法第43条の2第3項において、その管理状況につき定期的に監査法人等の検証を受けることが義務付けられています。

③ 自己資本規制比率

自己資本規制比率とは証券会社の健全性を測る重要な指標とされており、その自己資本から固定的な資産を控除した「固定化されていない自己資本の額」を、発生し得る危険に対応する「リスク相当額」で除して算出されます。120%以上に保つことが義務付けられており(金商法第46条の6)、また、140%を下回ると届出が必要となります。(府令第179条の4)。
 

(週刊 経営財務 平成22年11月1日 No.2989 掲載)



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