EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 久保慎悟
投資会社は、持分法の適用に際して、被投資会社の財務諸表の適正な修正や資産及び負債の評価に伴う税効果会計の適用等、原則として連結子会社の場合と同様の会計処理を行います。そのため、同一環境下で行われた同一の性質の取引等については、投資会社(その子会社を含む。)及び持分法を適用する被投資会社が採用する会計方針は原則として統一する必要があります(持分法会計基準第8項、第9項)。
ただし、投資会社の他に支配株主が存在するような関連会社の場合や、上場会社の株式を追加取得することで関連会社とした場合は、支配力が及ぶ子会社とは異なり、会計方針統一のために必要となる詳細な情報の入手が極めて困難なことがあります。このような場合には、会計方針を統一しないことに合理的な理由があると判断し、会計方針を統一しないことが認められる場合があります。
また 、関連会社の純利益に持分比率を乗じたものに重要性が乏しい場合には、会計方針の統一を行わないことができると考えられます(実務対応報告第24号「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」)。
持分法の適用にあたっては、投資会社は、被投資会社の直近の財務諸表を使用します。投資会社と被投資会社の決算日に差異があり、その差異の期間内に重要な取引又は事象が発生しているときには、必要な修正又は注記を行います(持分法会計基準第10項)。
持分法適用会社の株式の取得により持分法の適用を開始する場合、持分法適用会社株式の取得原価は、投資会社の個別財務諸表において付随費用が株式の取得原価に含まれ、これが引き継がれることから、結果として取得に係る付随費用を含めて算定することになります(持分法実務指針第2-2項(3)、第36-4項)。また、持分法適用会社に対する投資が段階的に行われている場合、持分法適用会社株式の取得原価は、個々の取引ごとの原価の合計額により算定されます(持分法会計基準第26-3項、持分法実務指針第2-2項(2)、第2-2項(3))。なお、これらの会計処理には、以下の通り連結との相違があります。ただし、持分法を適用している非連結子会社については、連結財務諸表へ与える影響が乏しいため、連結における処理と持分法における処理のいずれもが認められています。
相違項目 |
持分法 |
連結 |
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付随費用 |
取得原価に含める。 |
取得関連費用は、発生時に費用として処理する(会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(以下、「資本連結実務指針」といいます。)第8項)。 |
段階的な投資 |
取得原価は、投資日ごとの原価の合計額により算定される 。そして、投資日ごとの原価とこれに対応する被投資会社の資本との差額は、のれん(又は負ののれん)とし、のれんは投資に含めて処理する。 |
取得原価は、支配を獲得するに至った個々の取引すべての支配獲得日における時価により算定され、当該取得原価と個々の取引ごとの原価の合計額との差額は段階取得に係る損益として処理する(連結会計基準第23項(1)、62項)。そして、当該取得原価とこれに対応する子会社の資本との差額は、のれん(又は負ののれん)として処理する。 |
P社(12月決算)は、X0年12月1日に、A社株式の10%を現金540(これとは別に付随費用60を現金で支払っている。)で取得し、その他有価証券に分類した。X0年12月31日における当該A社株式10%の時価は650であった。その後、X1年1月1日に、A社株式の20%を1,620(これとは別に付随費用180を現金で支払っている。)で取得し、A社(12月決算)を持分法適用関連会社とした。なお、税効果は考慮しない。
(A社株式10%取得時(X0年12月1日)) |
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*1 600=A社株式10%の取得対価540+付随費用60 |
(X0年度決算(X0年12月31日)) |
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*2 50=A社株式10%の時価650-A社株式10%の帳簿価額600 |
(期首洗替(X1年1月1日)) |
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(A社株式20%追加取得時(持分法適用開始日:X1年1月1日)) |
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*3 1,800=A社株式20%の取得対価1,620+付随費用180 |
(持分法適用開始日(X1年1月1日)) |
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仕訳なし |
P社連結貸借対照表 |
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※ P社は、X1年1月1日に連結 財務諸表を作成する訳ではないが、理解のために示した。
持分法の適用にあたっては、持分法適用会社の資産及び負債を時価により評価し、評価差額を持分法適用会社の資本とする必要があります。当該時価評価は、株式の取得日ごとに、持分法適用会社の資産及び負債を投資会社の持分に相当する部分について当該取得日の時価により評価する方法(部分時価評価法)によります(持分法実務指針第6項、第6-2項、第2-2項(1))。なお、当該会計処理には、以下の通り連結との相違があります。ただし、持分法を適用している非連結子会社については、連結と同様に、支配獲得日において、非支配株主持分に相当する部分を含めて全てを時価評価する方法(全面時価評価法)によります。
相違項目 |
持分法 |
連結 |
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資産及び負債の時価評価の範囲 |
投資会社の持分に相当する部分に限定して時価評価する方法(部分時価評価法)による。 |
非支配株主持分に相当する部分も含めて全てを時価評価する方法(全面時価評価法)による(連結会計基準第20項)。 |
なお、持分法適用開始日までに株式を段階的に取得している場合には、原則として、持分法適用会社の資産及び負債のうち取得に相当する部分を株式の取得日ごとに当該日の時価で評価します(原則法)。ただし、計算結果が著しく相違しないときには、持分法適用会社の資産及び負債のうち投資会社の持分に相当する部分を一括して持分法適用開始日の時価で評価する(簡便法)こともできます(持分法実務指針第6-2項、第6-3項)。
取得原価については【設例①】において算定しているとおり2,400であることを前提とする。
X0年12月1日及びX1年1月1日におけるA社個別貸借対照表は以下の通りである。
A社個別貸借対照表 |
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土地の時価は650である。諸資産(土地を除く)及び諸負債の時価は帳簿価額と一致している。 |
A社個別貸借対照表 |
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土地の時価は700である。諸資産(土地を除く)及び諸負債の時価は帳簿価額と一致している。 |
※ A社は、X0年12月1日及びX1年1月1日に個別財務諸表を作成する訳ではないが、理解のために示した。
段階取得における持分法適用会社の資産及び負債のうち取得に相当する部分については、原則として、株式の取得日ごとに当該日の時価で評価する(原則法)。ただし、計算結果が著しく相違しないときには、一括して持分法適用開始日の時価で評価する(簡便法)こともできる 。
それぞれの場合における投資に含まれるのれんは以下の通りである。
(原則法)
投資に含まれるのれん305=投資額合計2,400-2,095*1
*1 投資に対応する被投資会社の資本2,095=695*2+1,400*3
*2 X0年12月1日の被投資会社資本695=(6,500+450*4)×取得比率10%
*3 X1年1月1日の被投資会社資本1,400=(6,500+500*5)×取得比率20%
*4 X0年12月1日の土地評価差額450=時価650-帳簿価額200
*5 X1年1月1日の土地評価差額500=時価700-帳簿価額200
(簡便法)
投資に含まれるのれん300=投資額合計2,400-2,100*6
*6 X1年1月1日の被投資会社資本2,100=(6,500+500*5)×取得比率合計30%
投資会社の投資(持分法適用会社株式の取得原価)とこれに対応する被投資会社の資本との間に差額がある場合には、当該差額はのれん又は負ののれんとします。のれんについては、投資に含めて処理し、原則として、20年以内に、定額法その他合理的な方法により償却します。一方、負ののれんについては、生じると見込まれるときに、持分法適用会社の資産及び負債がすべて把握されているか、また、時価評価が適切に行われているかを見直し、当該見直しを実施しても、負ののれんが生じる場合には、発生時の利益として処理します。なお、のれんの金額に重要性が乏しい場合には、発生時に費用として処理することができます(持分法実務指針第9号、企業結合会計基準第33項)。
投資会社は、投資の日(持分法適用日)以降における持分法適用会社の純利益又は純損失のうち投資会社の持分又は負担に見合う額を算定して投資の額を増額又は減額するとともに、当該増減額を持分法による投資損益として当期純利益の計算に含めます。のれんの当期償却額及び減損処理額、負ののれんの処理額、評価差額に係る償却額又は実現額についても、持分法による投資損益に計上します(持分法会計基準第12項、持分法実務指針第10項)。
取得原価については【設例①】において算定したとおり2,400であり、投資に対応する被投資会社の資本については【設例②】において簡便法を採用し計算した結果、2,100であることを前提とする。
X1年1月1日からX1年12月1日までA社の個別損益計算書は以下の通りである。なお、P社連結財務諸表作成上、のれん(【設例②】において算定した300)は償却期間5年の定額法により償却し、税効果会計は無視する。
A社個別損益計算書 |
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(持分法適用開始日(X1年1月1日)) |
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仕訳なし |
(X1年度決算(X1年12月31日)) |
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*1 600=A社当期純利益2,000×持分比率30% |
のれんの償却 |
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*2 60=のれん300×償却年数5年 |
P社連結貸借対照表 |
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P社連結損益計算書 |
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持分法適用会社がその他有価証券評価差額金などのその他の包括利益累計額を計上している場合、投資会社は、投資の日以降における持分法適用会社のその他の包括利益累計額のうち投資会社の持分又は負担に見合う額を算定して投資の額を増額又は減額するとともに、当該増減額を一括して持分法適用会社に対する持分相当額としてその他の包括利益の計算に含めます(持分法実務指針第10-2項)。ただし、連結貸借対照表上のその他の包括利益累計額においては、その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、為替換算調整勘定、退職給付に係る調整累計額等の各内訳項目に当該持分相当額を含めて表示することに留意が必要です(企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」第7項、第32項)。
持分法の適用にあたって、投資会社(その連結子会社も含む。)と持分法適用会社との間の取引(持分法適用会社間の取引を含む。)に係る未実現損益については、重要性が乏しい場合を除き、消去するための修正を行います。ただし、未実現損失については、売手側の帳簿価額のうち回収不能と認められる部分は消去しません(持分法実務指針第11項)。具体的な未実現損益の処理は、ダウンストリーム(投資会社が売手の場合)とアップストリーム(持分法適用会社が売手の場合)のそれぞれ、以下の通りです。
売手側である投資会社に生じた未実現損益の消去額は、当該投資会社における売上高等の損益項目と買手側である持分法適用会社に対する投資の額にそれぞれ加減します。ただし 、買手側が非連結子会社である場合には全額消去し、関連会社である場合には原則として当該関連会社に対する投資会社の持分相当額(連結子会社の関連会社に売却した場合には、当該連結子会社の持分相当額)を消去しますが、状況から判断して他の株主の持分についても実質的に実現していないと判断される場合には全額消去します(持分法実務指針第11項)。
なお、未実現損益消去額を加減する売手側の損益項目については、利害関係者の判断を著しく誤らせない場合には、持分法による投資損益に加減することもできます。
さらに、未実現利益の消去額が投資の額を超える場合に、持分法適用会社に貸付けを行っているときは、その超過額について当該貸付金を減額し、当該貸付金の額をも超える場合には、当該超過額については持分法適用に伴う負債等適切な科目により負債の部に計上することが必要となります(持分法実務指針第12項)。
売手側である持分法適用会社に生じた未実現損益の消去額は、そのうち投資会社の持分相当額について、持分法による投資損益と買手側である投資会社の未実現損益が含まれている資産の額にそれぞれ加減します。ただし、未実現損益消去額を加減する買手側の資産項目については、利害関係者の判断を著しく誤らせない場合には、持分法適用会社に対する投資の額に加減することもできます。
持分法適用会社間の取引に係る未実現損益の消去額は、原則として持分法による投資損益と投資の額に加減します。
投資会社は、持分法適用会社から配当金を受け取った場合には、当該配当金に相当する額を投資の額から減額します(持分法会計基準第14項、持分法実務指針第14項)。
取得原価については【設例①】において算定したとおり2,400であり、投資に対応する被投資会社の資本については【設例②】においてける簡便法を採用し計算した結果2,100であり、X1年度における連結処理は【設例③】において実施した結果、(X1年度末の連結上のA社株式簿価は2,940であることを前提とする。)。
P社は、X2年1月1日にA社より配当金150を受け取った。
(配当受領時(X2年1月1日)) |
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決算修正 |
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P社連結貸借対照表 |
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※ P社は、X2年1月1日に連結財務諸表を作成する訳ではないが、X2年1月1日に決算修正が行われたものとして、理解のために示した。 |
※ P社は、X2年1月1日に連結財務諸表を作成する訳ではないが、X2年1月1日に決算修正が行われたものとして、理解のために示した。