Sustainability Reporting Developments 2022年12月号

企業とステークホルダーとのコミュニケーションに関する規制や政策の最新情報を毎月お届けします。

注:年末年始休暇のため、1月は発行せず、2月から発行を再開する予定です。
 

欧州連合(EU)の企業サステナビリティ報告指令(CSRD)が主要な節目を迎え、EU内外の推定5万社に適用される法的プロセスが始まりました。

11月中旬、欧州理事会はCSRDを最終承認しました。これは、第一弾のCSRDの基準(ESRS)が欧州委員会に提出された数日後のことです。

一方、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、サステナビリティ関連の開示基準案について、引き続き審議と意見交換を行っています。同時に、最初の2つの基準以外のISSBの基準設定アジェンダについても、より深い洞察が得られつつあります。

米国では、米国証券取引委員会(SEC)が気候変動関連開示規則の草案を公表し、人的資本関連開示規則の第1弾の草案が公表されるのを待っています。

アジアでは、世界第3位の経済大国である日本の上場企業に適用される、大きな一歩となる新しいサステナビリティ開示の義務化に関する意見募集が12月上旬に締め切られました。

サステナビリティレポートに関するグローバルな政策動向の詳細を以下に示します。




Key developments

【Global】

シャルム・エル・シェイク(エジプト)でのCOP27での相次ぐ発表を受けて、ISSBはサステナビリティ関連の開示基準案(S1およびS2)に関するフィードバックを審議・議論する作業を継続しています。

特に11月15日から16日にかけてフランクフルトで開催された理事会では、IFRSサステナビリティ開示基準(IFRS SDS)で報告する企業に対する短期の経過措置の導入に合意しました。この経過措置の一部として、年次でのS1開示の報告は、H1/Q2業績報告と同時に行うことが認められることになります。

次回の理事会は12月13日~15日にモントリオールで開催され、S1およびS2に関するフィードバックをさらに審議・検討し、ISSBの基準設定の優先順位に関する今後のコンサルテーションについて議論する予定です。ISSBのスタッフは、調査及びアウトリーチ活動に基づいて、以下のトピックをコンサルテーションの候補プロジェクトとして含めることを推奨しています。

  • 生物多様性:生態系、生態系サービス、およびその他の自然関連の問題を含む広範なトピックとして構成されています。

  • 人的資本:特に多様性(Diversity)、公平性(Equity)、包括性(Inclusion)〈DEI〉に重点を置いています。

  • 人権:特にバリューチェーンの文脈において、労働者の権利と地域社会の権利に重点を置いています。

さらに、スタッフは、財務諸表とサステナビリティ関連財務情報開示との関連性をさらに強化する包括的な開示要求とガイダンスを開発するために、国際会計基準審議会(IASB)との共同プロジェクトを開始する提案を盛り込みました。

ISSBのリーダーによる最近の2つのポッドキャストでは、これらの問題やその他について、ISSB at COP27: podcastNovember 2022 ISSB podcastで議論しています。

証券監督者国際機構(IOSCO)最近、サステナビリティ開示とサステナビリティ保証の基準が、企業の2024年度末の決算に使用できるようになるべきとの期待を示しました。ISSBのS1およびS2基準が最終的なものになれば(2023年)、IOSCOは基準の支持を決定するために直ちに前進する予定です。

これに関連して、IOSCOは、スペイン証券市場委員会(CNMV)のロドリゴ・ブエナベンチュラ委員長が持続可能金融タスクフォース(STF)の議長を務めると発表しました。ブエナベンチュラ氏はSTFの議長として、IOSCOの承認プロセスをリードすることになります。


【Americas】

米国では、SECが気候関連開示規則案について、寄せられた1万5千件以上のコメントを検討し続けています。SECのゲンスラー委員長は、ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで、SECの歴史上、一つの規則案に対してこれほど多くのコメントが寄せられたことはなかったと述べています。

遅ればせながら、SECは人的資本関連の開示規則案を近く発表する見込みです。

最近の協議で、米国の上場企業の監査を監督する公開会社会計監督委員会(PCAOB)は、中間評価基準の適用と利用についてパブリックコメントを求めました。この意見は、PCAOBが同基準の更新を提案するかどうかを検討する際に利用されます。PCAOBの投資家諮問委員会を含む多くの投資家グループは、サステナビリティ情報(たとえば、気候や人的資本関連の開示など)に関する、予想されるSECによる義務化を考慮し、基準の更新を要求しています。

一方、バイデン大統領は大統領令(以下、EO)を発令し、すべての主要な連邦政府の請負業者に温室効果ガス排出量と気候変動関連の財務リスクの公開、および科学的根拠に基づく排出量削減目標の設定を義務づけました。

米国企業とグローバル企業の両方が、特に航空宇宙、防衛、セメント、鉄鋼の各業界について、このEOにより影響を受けると予想されています。

連邦準備制度理事会は先週、総資産1,000億ドル以上の銀行を対象に、気候変動リスクへの対処に関する指針を提案しました。提案された原則は、ガバナンス、方針・手続き・限度額、戦略的計画、リスク管理、データ・リスク測定・報告、シナリオ分析の6つの分野をカバーするものです。


【EMEIA(欧州・中東・インド・アフリカ)】

欧州連合では、CSRDに関連する重要なマイルストーンが達成されました。

  • 11月22日、欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)は、欧州委員会に対し、第一弾の欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)の草案提出しました(欧州委員会プレスリリース)。

  • 11月28日、欧州理事会(EC)はCSRDを最終承認しました。この指令は2022年末から2023年初めにかけてEU官報に掲載され、その20日後に発効する予定です。新規則は、その1年半後(すなわち、遅くとも2024年6月までに)加盟国によって導入される必要があります。

注目すべきは、4月に公表された最初のESRS諮問版と欧州委員会に提出された草案との間に、多くの変更があったことです。これらの変更には、開示要求事項の数の削減、定性・定量的データポイントの削減、追加的な段階的導入の規定などが含まれます。

さらに、ESRS2(一般開示)の構成は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)とISSBの「4つの柱」(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)を反映して調整されています。


【Asia-Pacific】

日本では、金融庁が提案した開示の義務化に関する意見募集が12月7日に締め切られました。

この提案は、2023年3月期以降に適用される予定で、サステナビリティ関連情報の項目を新設し、有価証券報告書に人的資本、多様性、コーポレートガバナンスに関する追加開示を義務付けるものです。



今後の日程

今後90日以上にわたって注目すべき主な日程は以下です。

  • 2022 / 2023年:SECは人的資本開示規則案を発表する見込み。(未確定)
  • 2022 / 2023年:SECは公開企業に対して気候関連情報の開示を義務付ける最終規則を発表する見込み。(未確定)
  • 2023年初頭:ISSBは第1弾のサステナビリティ開示基準を最終化する見込み。
  • 2023年第1四半期:EFRAGは、(a)セクター別基準 (b) 非EU企業向け基準(第三国報告) (c) 上場中小企業向け基準 (d) 非上場中小企業向け任意指針 (e)第1弾の改訂を含む第2弾のESRS草案を公表する予定。
  • 2023年3月:金融庁による「企業内容等の開示に関する内閣府令」の発効。
  • 2023年上半期:ISSBが基準設定の優先順位に関連するコンサルテーションを開始予定。


その他の重要トピック

ネットゼロへの道:企業情報開示のグローバルレビュー

国際会計士連盟(IFAC)は、15の法域における大手上場企業40社の排出削減目標および移行計画の開示傾向を分析した新しい報告書を発表しました。この報告書によると、調査対象となった企業の66%が企業開示の中に何らかの排出削減目標を含んでいるものの、情報開示の一貫性や比較可能性がないため、投資家や規制当局にとって継続的な課題となっていることがわかりました。

New IFAC Report Highlights a Lack of Comparability in Corporate Climate Reporting


〈お問い合わせ先〉
EY新日本有限責任監査法人
サステナビリティ開示推進室


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