EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
第1回 学生ルール形成アイデアコンテスト 2024は、100に近い団体から応募いただきました。
数多くの優秀な作品の中から最終審査を通過し、授賞したチームとアイデアの概要、講評を掲載いたします。
慶應義塾大学 佐々木 悠翔 氏/上智大学 吉田 遼 氏/青山学院大学 遠藤 賢 氏
若いうちから社会のルールは変えられるという規範を形成するための仕掛けとして、学校の校則・ルールづくりに児童・生徒が自ら携わることができるようにするというアイデア。具体的には①学校教育関連法の改正と②文科省通知の見直し(文初高第149号)からなるルール改正案を提案。
①については、学校教育法の教育目標として「国家及び社会の形成者」を新たに追加した上で、民主的な学校運営を実現するための改正案を提言。
②については、児童の権利に関する条約を反映させなくとも良いと説明する文初高第149号の見直しを提言。
「学校の校則を児童・生徒がルール形成できない」という学生ならではの経験と視点で社会課題を特定し、これを解決するためのルール形成アイデアを具体的に提言した点が評価できる。また、異なる校則を持つ他校での校則改革にも意識が向き、多くの学校間で相互作用が期待できるという広がりの大きさを評価。
早稲田大学 張 博文 氏/東京大学 陳 暁陽 氏/東京大学 黄 新越 氏
女性が参画しやすい社会づくりの一つとして、女性の生理に対する偏見を解消し、「職場での突然の生理に対する心理的安全性の確保」という新たな規範を形成するためのルール形成アイデアとして、職場のトイレに生理用品を無料で配布することを企業に求めるルールを提案。
LGBTの視点も織り込み、女性用トイレだけでなく、男性用トイレにも配布を課すルール(例:SDGs投資ルールへの組み込み、関連する取り組みへの助成金・減税、未実施に対する罰金)を提言。
職場での急な生理に対する心理的安全性を担保するという視点も織り込み、生理用品の配布を企業の新たな規範にしていくことの効果と実現するための具体的なルールにまで落とし込んだ点を評価。コスト推計も実施し、企業が実行する場合のコストインパクトも具体的にイメージできた点が高評価につながった。
※今回、第3位につきましては同順位にて2チームが受賞いたしました。
慶應義塾大学 千頭 玲 氏/慶應義塾大学 王 博之 氏/慶應義塾大学 町田 梨里咲 氏
人に会いに行く観光が主流となる(人も観光資源となる)社会の実現に向けた新たなサービスとして「ひとログ」と、これを実現するための観光立国推進基本法などのルール改正案を提案。
同サービス(もしくは、同じようなサービス)を社会に実装し、人を観光資源化していくために、①ひとログユーザーによるプライバシー保護の義務化、②ひとログで紹介されている人のセキュリティの確保、③ひとログユーザーの犯罪からの保護、④観光資源としての“人”の追加からなる4つのルール形成案を提言。
「人」という新しい切り口からの観光機会の発見と、それを実現するための具体的なルール形成アイデアが提案されていた点を評価。また、各地域が「人」を観光資源にしていくことで、自然資本だけに依存しない観光、各地の観光資産の数の増大、人との関係を通じたリピーターの増加など、新たなサービスが地方にもたらす効果の広がりも高評価を得た。
岩手大学 内藤 剛汰 氏/茨城工業高等専門学校 大伏 正泰 氏/筑波大学 沢木 翔太 氏
民主主義において重要な役割を果たしてきた国立、公立図書館において、①読書記録が有効活用されず、②各図書館で選書の役割を担う司書だけによって恣意的と言わざるを得ない意思決定プロセスで選書されており、③図書館の役割が社会において限定的であることの3点を社会課題として設定。
この社会課題を解決し、民主的で開放的な方向へ図書館の仕組みを変革するルールとして、次の3点を提言。
図書館が自由民主主義国家の柱であるという点に着目し、特に「図書館の選書の基準が特定の司書に、そしてその人たちだけで決めた意思決定の方法に委ねられている」という点を社会課題として設定した点が斬新だった。また、この課題の解決にあたり、テクノロジーと科学的な知見に裏付けられた意思決定アプローチを用いた現実的な解決策を提示できた点を評価された。
「日本が活性化しない理由は、若者が社会改革活動に参画する機会が無いからではないか?」という考えのもと、「ルールの提言という“現代型の知的な学生運動の場”をEYが提供することで、若者の建設的な意見表明による日本の活性化と適切な方向への政策改革を実現していけるのではないか?」を形にした第1回のコンテストでしたが、予想を超える反響に驚きました。
理由は、準備期間が短い中で100件近い応募が寄せられたという件数だけでなく、エントリーして来る学生の多くが、EYがこうした場を創ったことに対する喜びの声が浴びせられたことです。あらためて、今の学生には、学生の声をぶつける場が無く、影響力を発揮できない状況に対する諦めと落胆の気持ちがこれほど大きいのかと思い知らされました。
また、表彰には至らなかった多くのアイデアを通じて、われわれでは気づかない学生ならではの多様な視点が存在することも実感させられると共に、学ばされました。
EYSCは今後も継続的にこのイベントを開催し続け、日本の学生にルール形成に取り組む動機と意義を提供し続けられるよう、努力していきます。
多くの学生がルール形成の視点から社会を捉え、友人と議論する学生生活を送り、学生時代の良い経験、そして思い出になってくれることを期待しています。