EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
・英国は洋上風力発電のポールポジションを明け渡し、再生可能エネルギー国別魅力度指数で3つ順位を下げる
・魅力度指数で大きく順位を上げたのが北欧諸国
・日本とチリはプロジェクト展開の課題が影を落としランクダウン
EYは、再生可能エネルギーに関する最新の調査「EY再生可能エネルギー国別魅力指数(RECAI)第62号」(以下、RECAI 62号)を発表しました。本調査では、洋上風力発電セクターが経験している混乱が、今後の大規模エネルギープロジェクトの設計や資金調達の方法を変える可能性があることが、最新の再生可能エネルギー国別魅力度指数(RECAI)で判明しました。洋上風力発電は、ネットゼロ達成のためには不可欠ですが、業界はサプライチェーンのひっ迫とコスト高騰という難問に直面した1年となりました。世界全体の洋上風力発電プロジェクトのコストが2019年から39%も上昇したため、今後10年で、洋上風力発電セクターの設備投資費が当初の予定よりも約2,800億米ドル増加する可能性があります。
こうした状況を背景に、2030年までの洋上風力発電の目標容量を掲げている15カ国のうち約80%が、目標を達成できない見込みとなっています。特に、英国は洋上風力発電プロジェクトを惹き付ける最も魅力的な国の座を明け渡し、全体の魅力度指数ランキングで3つ順位を下げて7位となりました。2023年9月に英国で実施された配分第5ラウンド(AR5)において、洋上風力のストライクプライスの上限が44ポンド(54米ドル)/メガワット時(MWh)となりましたが、これは開発業者の入札を呼び込むには十分な価格ではありませんでした。このことは、英国が掲げている、洋上風力発電の電力容量を2030年までに50ギガワットとする目標達成に強い逆風が吹いていることを物語っています。
EYグローバル・再生可能エネルギー・リーダーのArnaud de Giovanniのコメント:
「気候の非常事態のために、世界全体でネットゼロの目標達成に向けた緊急投資が求められている現在、洋上風力発電セクターは岐路に立っています。洋上風力発電によって地球規模の脱炭素の取り組みを後押しするためには、洋上風力発電開発事業者ではコントロールできないリスクを軽減し、彼らの投資に対して、適正な投資利益(ROI)を保証することが必要です。洋上風力発電のサプライチェーンで起こっている緊張は、技術の標準化によって緩和される可能性があり、これによって、製造メーカーや開発業者はより大きな確実性を得ることができます。そして政府は、プロジェクトを承認するプロセスを簡素化して、加速させる戦略を立案する必要があります。プロセスのスピードアップによって、オフテイク契約の締結時と最終投資決定時の間にリスクが起こる可能性を減らすことができます」
EY 再生可能エネルギー・コーポレート・ファイナンスリーダーでRECAI編集長のBen Warrenのコメント:
「英国の洋上風力発電セクターがこのところ経験している困難は、より広い世界規模で起こっている難局を映し出しています。政府が洋上風力発電の契約を入札する時、その入札は経済条件を反映するように設計する必要があります。コストだけを重視した入札形式を脱却し、環境への配慮や雇用創出などコスト以外の要素を入札に取り入れることは、サプライチェーンの活性化を促し、発電可能量を増加させ、より広範な社会に利益をもたらす可能性があります」
RECAIランキングでトップ3の国には変化がありませんでした。米国は、インフレ抑制法のインセンティブによって太陽光発電が飛躍的に成長したことで、1位の座を保持しています。ドイツは、9月末までに新たに導入された陸上風力発電の容量が、2022年通年の発電容量を上回ったことで、大きな成長を遂げました。こうしたことから、今回も2位の座を維持しています。中国は、国レベルの補助金を一時停止しているものの、洋上風力発電は引き続き成長しているため、総合的には3位を保っています。
意欲的な再生可能エネルギー目標の追及を続けている北欧諸国は、順位をデンマークが2つ、スウェーデンが3つ、ノルウェーが5つ上げました。
日本は順位を3つ下げ、13位となりました。日本は、豊富な天然資源を有し、化石燃料の削減に取り組んでいますが、太陽光発電や風力発電の展開で、他の経済大国に遅れをとっています。同様に、チリも順位を2つ下げ、16位となりました。チリは、太陽光発電の電力貯蔵の新たな目標を掲げているにもかかわらず、太陽光発電の出力抑制による出力不安定という問題と、全国各地で引き続き格闘しています。
EY Japanでリード アドバイザリーのアソシエイト・パートナーとしてインフラ事業関連プロジェクトをリードする 内海 直人のコメント:
「現在、世界の脱炭素化・ネットゼロには洋上⾵⼒が不可⽋となっています。一方で、世界的なコスト急騰やサプライチェーンの混乱が洋上風力発電事業開発に影響を及ぼし、デベロッパーが開発見直しや撤退を余儀なくされています。特に、洋上風力産業が黎明期であり、サプライチェーンを海外に依存している日本においては、それらの影響は大きく、産業の国内現地化および強靭化が急務となります。また、国内の洋上風力公募入札においては、今後、多くの事業者がゼロプレミアム(=FIP基準価格3円/kWh以下の入札)で入札することが予想されます。そのため、これら事業の経済性を安定させデベロッパーが妥当なリターンを得るためには、コーポレートPPAの普及および同市場のより一層の拡大が必要と考えます。さらには事業者が適切なリターンを継続的に得られるように、入札制度を市場変化に対応させていく必要があります」
再生可能エネルギー国別魅力度指数のトップ40ランキング、正規化ランキング、コーポレートPPAランキング、および世界各国の再生可能エネルギーの最新状況の分析結果は、ey.com/recai でご覧いただけます。
※本ニュースリリースは、2023年11月14日(現地時間)にEYが発表したニュースリリースを翻訳し、日本の見解を加えたものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先されます。また、日本語による解説はこちらでご覧ください。
英語版ニュースリリース:
Offshore wind reaches crossroads, as spiraling costs and supply chain issues force developers to reassess projects – EY research
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本ニュースリリースは、EYのグローバルネットワークのメンバーファームであるEYGM Limitedが発行したものです。同社は、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
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