EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EYは、2021年のIPOに関する調査結果を発表したことをお知らせします。世界のIPO市場は、2021年を前に先行きが不透明だったにもかかわらず、結果的には大変素晴らしい一年となりました。IPOの件数、調達額ともに年始から4Qまで過去最高記録を塗り替え続け、2021年全体で合計2,388件のIPOが4,533億米ドルを調達しました。これは、前年比で件数が64%、調達額が67%の増加となっています。これらを含む調査結果の詳細は、こちらをご覧ください。
2021年は、新型コロナウイルスのワクチン接種開始、世界経済の回復、各国政府の景気刺激策が市場にもたらした高い流動性によって、世界のIPOに対する明るい見通しが年初から生まれました。2021年4Qは、IPO件数が2007年4Q以来、4Qとしては過去最高となりました。621件のIPOが1,122億米ドルを調達し、2020年4Qと比較すると、件数が16%、調達額が9%の増加となりました。
2021年は、世界のすべてのIPO市場で、件数、調達額ともに増加を経験しました。特に、EMEIA(欧州・中東・インド・アフリカ)は最も大幅な増加を達成した地域で、IPO件数は前年比158%の増加(724件)、調達額は214%の増加(1,094億米ドル)を記録しました。Americas(北・中・南⽶)も引き続き好調で、528件(前年比87%増)のIPOが、1,746億米ドル(78%増)を調達しました。Asia-Pacific(アジア・パシフィック)における増加は比較的緩やかで、1,136件(28%増)のIPOが、1,693億米ドル(22%増)を調達しました。
全世界をセクター別でみると、テクノロジーが、(2020年3Qより)6期連続でIPO件数の最高記録(611件)を更新しました。また、調達額も(2020年2Qより)7期連続で最高記録を更新(1,475億米ドル)しました。テクノロジーの後を追うのがヘルスケアで、376件のIPOが、654億米ドルを調達しました。僅差で3位となったのは製造業で、310件のIPOが、631億米ドルを調達しました。
EY Global IPOリーダーのPaul Goは次のように述べています。
「2021年は、過去20年間で最もIPO市場が活況を呈した年でした。年初から、経済活動の回復、新型コロナワクチンの接種開始、各国政府の経済刺激策による高い流動性といった明るい見通しが広がり、IPOにとって大きな追い風になりました。しかし、4Qに入ると、新型コロナウイルスの新たな変異株であるオミクロン株の拡散不安、地政学上の緊張の継続、IPOの動きの鈍化および市場変動の拡大といった要因によって、こうした風向きに変化が現れました。IPOを目指している企業が、2022年にIPOを推し進めるにしても、あるいは当面見合わせるにしても、レジリエントな(強くてしなやかな)成長戦略と明確なESG(環境・社会・ガバナンス)計画を求める投資家の要求を満たす必要があります」
Americasは明るい見通し、高い流動性、新型コロナワクチン接種開始により大成功の1年
Americasは、低金利政策、高い流動性、好調な株式市場、消費者心理の向上、一部の国で開始されたワクチン接種による全体的な明るい見通しに下支えされ、IPOが強気に展開された一年となりました。Americas全体で、前年比87%増の528件のIPOが、前年比78%増の1,746億米ドルを調達しました。セクター別では、IPO件数が最も多かったのは、今回もまたヘルスケアで、172件のIPOが322億米ドルを調達しました。しかし、調達額ではテクノロジーがトップとなり、152件のIPOが722億米ドルを調達しました。2022年を目前に、現在Americasの各国市場では発展が続いており、従来型のIPOモデルが試され続けています。こうした状況から、IPOの構造とフォーマットが進化し続けるのは確実で、IPOを行う企業は、株式公開という目標達成の実効性を高めることができることになるでしょう。
米国では、前年比86%増の416件のIPOが、前年比81%増の1,557億米ドルを調達し、IPO市場は非常に大きな勢いを維持しています。今のところ、本調査レポートの21年の歴史の中でIPOが最も盛んな年となることはほぼ確実です。米国ではまた、SPAC(特別買収目的会社)による買収活動が2021年に非常に活発になり、米国の各証券取引所では、従来型のIPOよりSPACの方が多く行われました。SPACの復活は目に見張るものがあり、米国は今後もSPACの活用において、他国をリードしていくでしょう。
Americasの他の国をみると、ブラジルのB3証券取引所でIPOが記録的に活発な1年となり、45件のIPOが119億米ドルを調達しました。これは、ブラジルでは2007年以来最高の結果です。カナダのトロント証券取引所とTSXベンチャー取引所では今年もまた、パイプラインに非常に堅調なディールが控えていたため、47件のIPOが59億米ドルを調達しました。
EY Americas IPOリーダーのRachel Gerringは次のように述べています。
「AmericasのIPO市場にとって、2021年は記録更新の一年でした。高い企業価値評価、低金利政策の継続、投資家の株式に対する高い需要、これらの要因が相まって、新規株式上場する企業の数が増加しました。これから2022年を迎えるにあたって、慎重にはなりつつも明るい見通しがあります。つまり、株式市場は堅調を維持し、IPOを目指す企業が株式上場するのに適したものになるだろうという見通しです。株式上場を目指す企業は、引き続きすべての選択肢を考慮しておくとよいでしょう。従来型のIPOは、株式上場の手段として最も多く試されているアプローチである一方で、従来とは異なるIPOのアプローチが進化しています。これによって、IPOを目指す企業にとって、株式市場にアクセスする方法は、これまで以上に多彩になっています」
2021年のAsia-Pacificの成長は緩やか
Asia-PacificにおけるIPO活動は2021年を通して安定したペースを維持し、前年比28%増である1,136件のIPOが前年比22%増の1,693億米ドルを調達しました。この結果は見事なものですが、Americas と EMEIAが今年経験した過去最高のIPO活動と比較すると、控えめと言えます。業種別では、テクノロジーが件数、調達額ともにトップとなり、通年で257件のIPOが454億米ドルを調達しました。
中華圏では、2021年3Q以降IPOが減速しました。その原因の一つに、中国本土において、一定の基準に該当する、国境をまたぐIPO関連企業に対するサイバーセキュリティ審査要件が厳格化されたことがあります。これに加えて、米国証券取引委員会(SEC)のガイドラインによって、米国の証券取引所に上場する外国企業は、SECと米国公開会社会計監督委員会(PCOAB)の検査規則に従わなければならないと規定されたことによって、米国上場を目指す中国企業の心理が冷え込みました。この結果、複数の中国のメガIPOの計画が遅延または変更されました。中華圏全体では前年比11%増である593件のIPOが前年比3%増の1,228億米ドルを調達しました。
EY Asia-Pacific IPOリーダーのRingo Choiは次のように述べています。
「Asia-PacificのIPO市場の成長速度は、2020年の猛烈なものから緩やかなものへとクールダウンしましたが、2021年後半はそれでもまずまずの水準を維持しました。中華圏では、IPOを目指す企業が新しい規制に適応する必要があり、これがIPO活動をスローダウンさせました。一方、その他の地域では、IPO活動が大幅に増加しました。今後、IPOを目指す企業は、規制の変更、地政学的問題、ESGがますます求められる傾向に迅速に対応できるよう、レジリエントな戦略を立てる必要があるでしょう」
中華圏以外のAsia-Pacificの各国はさらに好調でした。日本では、2006年以来1年間で最大のIPO件数となり、前年比34%増である125件のIPO件数、前年比97%増の65億米ドルの調達という結果となりました。これは、株価が堅調に推移したこと、リスクマネーの増大によるスタートアップ企業への投資増大、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会をターゲットにした上場準備会社の増加、デジタル化の追い風を受けたスタートアップ企業の増加等が要因となっております。これらの要因は、2022年においてもプラスに寄与するとみられ、2022年も多数のIPO企業の創出が期待されます。オーストラリアとニュージーランドも好調で、前年比159%増である197件のIPOが前年比144%増の92億米ドルを調達しました。2021年、韓国、インドネシア、タイのIPO市場も活況でした。
EY Japan IPOリーダー兼 EY新日本有限責任監査法人企業成長サポートセンター センター長の齊藤 直人は次のように述べています。
「2021年の新規上場社数が確定し、EY新日本は4年連続で IPO監査実績首位となりました。EY新日本では、2020年7月に「IPO認定者制度」を導入し、初年度445名をIPO認定者として認定しました。本制度を通じてIPO監査人材の育成を積極的に推進しています。これにより、さらなるIPO監査体制を強化し、IPO監査難民問題の解決を図れるよう努めています。今後も、長期的に世界および日本経済の成長ドライバーとなるスタートアップ企業に対して、高品質かつ高付加価値のIPO監査・支援を提供し、資本市場の発展に貢献していきます。」
EMEIAは一年を通してポジティブなこととネガティブな出来事が起こりました。EMEIAの株式市場は、アントレプレナーにとって理想的であるローリスク・ハイリターンの環境が功を奏して、非常に好調に推移し、EMEIAの全3リージョンが最高の成長率を達成しました。具体的には、前年比158%増の724件のIPOが前年比214%増の1,094億米ドルを調達するという結果となりました。同地域では、新型コロナウイルス感染症が継続的に拡大しており、サプライチェーンへの甚大な影響により、2022年1Qに向けてリスクが高まる可能性があります。
欧州では前年比154%増である485件のIPOが前年比195%増の811億米ドルを調達しました。中東・北アフリカ地域(MENA)も、案件数が205%増の113件、調達額が281%増の110億米ドルという著しい成長を記録しました。これらの地域の経済が回復するなか、原油価格は引き続き堅調で、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の強い企業は、引き続き投資家の関心を十二分に集めています。2021年インドでは、前年比156%増である110件のIPO活動により、前年比314%増の169億米ドルが調達されました。英国の市場も引き続き堅調で、件数で前年比223%増(97件)、調達額で前年比81%増(212億米ドル)という結果となりました。
EY EMEIA IPOリーダーのMartin Steinbachは次のように述べています。
「EMEIAのIPO市場は2007年以来最高の案件数を達成して2021年を終えました。高い企業価値評価と低いボラティリティの波は、アントレプレナーにローリスク・ハイリターンの環境を提供し、その結果、SPACが活力を取り戻したことも含め、EMEIAの目まぐるしく変化する各国市場において例外的に活発なIPO活動が行われました。IPO活動は今後も勢いよく続くと予想されますが、ESGや長期的価値に着目する投資家が、IPO候補企業にとって有利な今の流れを変える可能性があるため、2022年は変化の年になるでしょう」
新年に目を向けると、逆風と追い風の両方が見込まれ、それらがIPO活動に影響を与える可能性があります。地政学的緊張、インフレリスク、景気の本格的な回復に水を差す新型コロナウイルスの新たな感染拡大と変異株の出現、こうした要因がすべて相まって影響を与えています。こうした状況にもかかわらず、比較的高い企業価値評価と流動性のおかげで、2022年におけるIPOのチャンスの扉は今のところ開いたままです。より高い市場の変動が予想されるため、IPO候補企業は、IPO計画に遅延が出た場合に備えて、必要な資金調達を行うための代替案を準備しておき、柔軟に対応し続ける必要があります。
Paul Goは次のように述べています。
「2021年の目覚ましい勢いが2022年にも続くと予想されますが、IPOを予定している企業は、変化する市場の状況、規制の変更、地政学的な緊張に適応できる、レジリエントで柔軟な戦略を導入することが不可欠です」
※本プレスリリースは、2021年12月16日(現地時間)にEYが発表したプレスリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
英語版ニュースリリース:
2012年から2021年は通年のデータです。
出典: Dealogic、 EY
出典:Dealogic、 EY
出典:Dealogic、EY
四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはなりません。
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データについて
本レポートおよび ey.com/ipo/trends に示されたデータはEYおよびDealogicによるものです。2021年(すなわち1月~12月)のデータは、2021年1月1日から12月7日時点で完了しているIPOおよび2021年12月末までに完了すると予想されるIPOに基づいています。データは英国時間2021年12月7日営業日終了時点のものです。本レポートに含まれるすべてのデータは、特に断りのない限り、Dealogic、CB Insights、CrunchbaseおよびEYを出典としています。SPAC(特別買収目的会社)によるIPOは、特に記載のない限り、本レポートのすべてのデータから除外されています。
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