EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
Section 1
自作のアバターを操る体験が、子どもたちにとってコミュニケーションの在り方を考える良いきっかけになりました。
この次世代教育プログラムは、認定NPO法人のエデュケーションエーキューブ(福岡県福岡市、代表理事 草場 勇一氏)と実施したものです。同法人は、福岡を中心に子どもの教育格差をなくすため、学校に通えない子どもたちが通うオルタナティブスクールを運営。本プログラムは、子どもたちが通常の授業とは異なる思考方法や、課題解決の能力を身に付けることを目的としています。
全4回で構成された本プログラムには、小学3年生から高校生までの幅広い年齢層の子どもが参加しました。初回は、日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)をけん引する拠点として設けられたEYデジタルハブ 福岡にて開催。EYストラテジー・アンド・コンサルティング テクノロジーコンサルティングのメンバーがメタバース(仮想空間)やVR(仮想現実)を活用したコミュニケーション体験を提供しました。
子どもたちは1人1台のタブレット端末を用い、福岡市にある鳥飼八幡宮の拝殿や境内を再現した仮想空間上において、各自が作成したアバター(自分の分身となるキャラクター)を操作して境内を探検しながらカードを集めるといったアクティビティを体験。また、VRゴーグルを装着し、よりリアルで没入感のある仮想空間でのミッションクリアにも挑戦しました。
プログラムに用いたメタバース版・鳥飼八幡宮の構築も、EY Japanが支援しました。およそ1,800年の歴史を誇り、信仰や地域のコミュニケーションの場としての役割を果たしてきた鳥飼八幡宮は、今の時代に沿った神社の在り方の「最適化」を検討していました。
一方、EY Japanは新しい取り組みを模索する企業や組織、リアルとデジタルの融合を試みる企業などに対し、メタバースをはじめとする最新テクノロジーとクライアント支援で培った知見を融合させた事業の提案・開発を行っています。メタバース上の鳥飼八幡宮構築も、その事例の1つです。
子ども向けに開催されたこのメタバース体験も、EY Japanのメンバーが日常の業務で企業や組織向けに実施しているデモンストレーションと基本的なアプローチは変わりません。まずはVRゴーグルをかけて体験し、メタバースがどのようなものなのかを体感してもらうことが重要です。子どもたちは「デジタルネイティブ」と呼ばれているだけあって操作に慣れるのが早く、むしろ低学年の児童の方が先に使いこなすほどでした。参加した子どもからは「初めてメタバースの中に入って、最初はびっくりしたけどすぐに楽しくなって、今の技術はすごいなと思いました」との感想が聞かれました。
子どもたちが特に盛り上がったのは、自身のアバターを作成する時間でした。顔や髪型、服装などを自分の好みで自由に選べることから、普段の自分と異なる、いわば「こうありたい自分」をアバターで表現し、メタバース内で操るという体験は、学校に通えない子どもたちにとって、コミュニケーションの在り方を考える良いきっかけになりました。
将来メタバースの世界で仕事や遊びができるという可能性を感じることは、子どもたちの希望につながります。また問題に対して自ら解決策を思考していく過程を学ぶデザインシンキングの考え方に早くから触れることは、変化の激しい時代を生きる子どもにとっても重要なスキルだと考えています
Section 2
子どもたちの反応に応じてプログラムに修正を加え、理解しやすい内容でデザインシンキングの基本アプローチを構築できたことが学びとなりました。
2回目以降は、デザインシンキングのワークショップをオンラインで実施。さまざまなステークホルダー間のコラボレーション促進によるイノベーション支援の拠点であるEY wavespace™のチームメンバーが、根本的な解決策を導く思考方法について学ぶ場を提供しました。
デザインシンキングとは、デザイナーが用いる思考パターンをビジネスシーンに応用し、課題の根本的な解決を図りイノベーションを創出するという手法です。デザインという言葉は「設計・構想」を意味しており、イノベーションを創出する思考方法として米国の著名大学の講義でも取り上げられています。
EYのメンバーが進行役を務め、子どもたちにとって身近な課題について話し合いをリードしました。子どもたちから出てきた課題解決に関する多数のアイデアを整理しながら、さらに話し合いを広げた上で、グループごとの解決案を子どもたちが発表しました。
今回の参加者にとってデザインシンキングは初めての経験です。2回目以降は中学生が中心で、ウェブ会議システムを通じて意見交換しながら、オンライン上のホワイトボードツールに考えたことを貼り付けて思考を進めていきました。最初のうちは難しいと感じた子どもが多かった様子だったため、その反応に応じてプログラムの難易度に修正を加え、さらに議論を進めていくうちに、子どもたちは次第にコツをつかんで積極的に発言し始めました。
「初めての体験だったけれど、普段はここまで突き詰めて考える機会がなかったので、とても楽しかった」と参加者の1人はコメントしています。中学生にも理解しやすい内容でデザインシンキングの基本アプローチを構築できたことは、EY Japanのメンバーにとっても大きな学びとなりました。
大人は既存の枠組みの中で物事を捉えがちですが、子どもたちから先入観のない斬新な発想が飛び出すのも印象的でした。
遠足に持参するお菓子の新製品を考えてみるというテーマで議論した際にも、大人では到底考えつかないアイデアが飛び交いました
メタバースのような最新のテクノロジーと、デザインシンキングという思考方法を組み合わせることで、課題を自分たちで解決できるようになってほしい―。このような思いが込められた今回のプログラムは、EYがグローバル共通で掲げるパーパス(存在意義)「Building a better working world ~より良い社会の構築を目指して」にも通じる活動です。
イノベーションはいくつかのアプローチを掛け合わせることによって生まれるものですから、EY Ripplesは無償のプロボノ活動であると同時に、EYのビジネスの本質を生かして社会にインパクトをもたらす取り組みでもあります。そういう意味でも今回の試みの成果は大きかったと言えるでしょう。
EY wavespace™ Tokyo リーダー ディレクター 天野 洋介
EY wavespace™ は、クライアントの課題解決を支援し、イノベーションを創出するための体験を提供する環境です。その核心は人材と事業成果。人中心のデザインとコラボレーションを方法論の中核に据え、クライアントとディスカッションしながら人の発想力に働きかけ、課題の検討やソリューションの開発を支援しています。
企業としての社会的責任を果たすプログラム「EY Ripples」の一環として、EY Japanは先端テクノロジーを用いた次世代教育プログラムを実施しました。