EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
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水不足が世界的な問題になっています。世界銀行の最近のデータによると、インドには世界人口の18%に当たる人々が暮らしているにもかかわらず、利用できる水資源は世界の水資源のわずか4%であり、極めて深刻な水不足に直面しています。 NITI Aayog(政策委員会)のレポートによると、大都市のデリー、ベンガルール、ハイデラバード、ムンバイ、チェンナイを含むインドの21の都市で2030年までに地下水が枯渇し、1億人の生活が影響を受け、インドの人口の40%は飲料水が入手困難になると予測されています。インドの水不足は国民生活だけではなく、経済にも影響を及ぼしそうです。世界銀行は、水不足と気候変動の複合的影響により、多くの国においてGDPが最大6%減少し、紛争が誘発されかねないと警告しています。
水資源に対する需要が高まる中、世界のあらゆる機関がテクノロジーによる解決策に注目しています。AI、IoTセンサー、データアナリティクス、スマート水道網、スマート水資源管理ソリューションといった新たなテクノロジーが、水資源管理インフラや排水処理施設、かんがいシステムの効率化に資しています。また、さまざまな機関や政府がAIやデータアナリティクスを活用し、洪水や地下水の枯渇などの水資源に関する問題へ対応しています。このような種々のソリューションの活用度・導入度は一様ではありませんが、現時点では、水資源リサイクル・雨水貯留、および漏水・盗水対策の2つを中心に取り組みが進められています。
水資源リサイクル・雨水貯留
排水処理のプロセスは複雑です。処理水質を一定基準以上に保つには高度な技術を要し、処理施設の運用にかかるコストも高額です。データを活用したインテリジェントなアプリケーションを、AI、機械学習、産業IoTなどのテクノロジーと一緒に用いることで、運用の最適化と、汚水処理施設や雨水貯留システム、限外ろ過膜システムのエネルギー・化学薬品使用量の削減を図ることができます。これにより、運用コストの低減と、安全性の向上も実現できます。
機械学習の新たなフレームワークには、ディープニューラルネットワーク(DNN)モデル、ランダムフォレストモデル、変数重要度測定(VIM)分析などが挙げられます。これらのフレームワークでは、浮遊物質や汚泥、化学物質などの排水に関するさまざまなパラメータ、およびタイムラグや温度などの運用上のパラメータについて学習します。学習によって、処理水質の向上と運用コストの削減につながる管理戦略を策定することが可能になります。
多くの場合、水処理施設で消費されるエネルギーの半分以上を占めるのは曝気(ばっき、エアレーション)によるものです。先進的なAIツールにより処理施設のデータを分析し、曝気装置の最適な運転方法を予測することで、エネルギー消費量の最大30%減少につながります。逆浸透(RO)膜施設、汚水処理施設、冷却塔から収集されたデータは、クラウドベースの分析プラットフォームに送られ、処理状況の予測、異常検知、問題解決に向けた情報取得に利用されます。
大規模な上下水道事業体では、効率的なデータコミュニケーション設備により、センサー搭載システム装置の効率的管理、下水処理のスマートプロセス制御、さらにはプロセスの自動化を行っています。例えば、Delhi Jal Board(デリー上下水道公社)は先般、4カ所の下水処理施設にAIを活用するテクノロジーを導入しました。これらの処理施設では、AIソフトウエアを通じてIoTが活用され、データがリアルタイムかつ自動的に共有されています。処理施設と設備の稼働状況は設置されたセンサーにより監視されます。下水道管路網を対象とするAI搭載の予測分析ツール・制御装置により、下水道管内で危険な水位まで上昇すると検知・警告され、詰まりの原因の位置が表示されます。また、水道管の破裂など安全上の危険が発生する可能性について警告サインが送られます。
また、データシミュレーションとデジタルツイン(IoTでの取得データを活用することなどにより、仮想空間に「実物」を再現する技術)により不測の事態に備えることで、施設運営者は処理の効率化を進めるとともに、公共の安全にも貢献できます。これらのテクノロジーを活用することで、施設運営のコスト削減につながり、施設の処理能力と安全性の向上も可能になります。
雨水貯留システムが導入されている建物では、AI搭載の自動化テクノロジーが活用されています。屋上からの雨水の流出量は、自動化されたシステムで制御されています。湿度や温度、貯水槽の水位のモニターにはセンサーが使用されており、豪雨が予測される場合には、屋上と貯水槽で自動的に排水される仕組みのため、雨水の貯留能力を向上させることができます。