税務リスクと税務係争が増大する時代に税務ガバナンスが鍵となる理由

税務リスクと税務係争が増大する時代に税務ガバナンスが鍵となる理由


企業は今後2年間で税務調査の件数が倍増すると予想しており、税務ガバナンスは重要な鍵を握りつつあります。


要点

  • 企業が増大する税務リスクと税務係争を管理するツールとして、税務ガバナンスが注目されている。
  • OECDの第2の柱が新たな税務リスクの発生を助長する中、初めてインセンティブが重要な懸念事項として浮上している。
  • 企業は内外の圧力が高まる中で、税務ガバナンスを強化し税務データに今まで以上に注力することにより、税の確実性を追求する必要がある。


EY Japanの視点

国境を跨(また)いだ課税問題の増加は、日系多国籍企業が直面する喫緊の課題です。多くの日系多国籍企業が、新興国を含む海外拠点において、よりアグレッシブな税務係争への対応を求められています。効果的にグローバルな税務係争に対応するためには、本社を司令塔としたグローバルガバナンス体制の構築が欠かせません。日系多国籍企業については、欧米や中国系多国籍企業と比してこれまで出遅れていた面があります。他方、OECDのBEPS 2.0プロジェクトの進捗もあり、グローバル係争対応も含め、グローバルガバナンスの強化にかじを切る動きが増えつつあるところ、このような内外の動向やプラクティスに注意を払っていくことが必要であると考えられます。


EY Japanの窓口

関谷 浩一
EY Japan メディア・エンターテインメントセクター・タックスリーダー 兼 タックス・ポリシーリーダー EY税理士法人 パートナー

2023年EY税務リスクと税務係争に関する調査 日本における結果(PDF)

2023年のEY税務リスクと税務係争に関する調査から、グローバル企業は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる執行活動の一時停止を経て進化しつつある税務リスクと税務係争の新時代に対応するため、強固な税務ガバナンスが必要となることが明らかになりました。

調査に回答した47の国・地域の2,127名の税務・財務担当幹部のうち、84%が税務リスクと税務係争の管理に対する既存のグローバルなフレームワークアプローチを実装または改善することで、今後2年間でビジネスに「ある程度のまたは大きな」効果があると回答しています。しかし、調査回答者の10人中6人以上(61%)が、ビジネスモデルの変更、新製品、新サービスなど、既存の事業活動の大幅な変更に関して、経営幹部が税務部門に関与することは「たまにしかない」「めったにない」または「全くない」と回答しており、これらの変更に対する予期せぬ税務負担のリスクが高まっています。

回答者のうち、最高税務責任者(税務担当VP〈バイスプレジデント〉やグローバル・タックス・ディレクターなどの役職者)は、税務調査の件数と厳しさが過去2年間と比較して今後2年間で79%増加すると予想しており、この見解は、注目すべき懸念材料となっています。にもかかわらず、同グループの70%は、世界中で進行中の自社の税務係争のすべてを完全には把握できていないと回答しています。またこのように現実と認識が乖離していることにより、これまでにない税務リスクとなっている新しい地政学上、経済上および税制上の変化への対応が困難になる可能性があります。

EY Global Tax Controversy LeaderであるLuis Coronadoは、次のように述べています。「すべての企業にとって、強力かつ効果的な税務ガバナンスの構築が急務となっています。これは世界中の税務当局が、税務におけるグッドガバナンス原則の有無を、納税者をさまざまなリスクカテゴリーに分類する方法として利用していることが一因です。また税務部門も、税務におけるグッドガバナンスのフレームワークが、重要となる環境・社会・ガバナンス(ESG)領域を含む、ステークホルダーの長期的価値構築の機会につながると認識していることもその要因となっています」

この税務リスクと税務係争の新時代を効率的に乗り切るには、企業は以下の3つの主要領域における活動を強化する必要があります。

  • 税務ガバナンス戦略を強化するとともに、政策、役割、統制および説明責任を明確で理解しやすい方法で定義し、税務リスクと税務係争の双方を効果的に管理できるようにする。
  • 税務・財務データ管理へのアプローチを変革し、現行の報告義務に正確かつタイムリーに対応するとともに、税務部門に対してグローバルで発生している、または発生する可能性のある税務係争、相互協議手続(MAP)、および税務訴訟に関する認識と貴重な洞察を提供する。
  • あらゆる機会において税の確実性を確保する活動を増やして税務リスクを管理する方法を模索するとともに、税務当局が提供する積極的な係争防止および解決策プログラムを多数活用する。
     

詳細な情報要求が増えるほど、税務調査活動は活発化する

税務調査活動が活発化するという予想は、税務当局がより詳細な情報を要求する機会が増えていることが主な要因となっています。このような要求は非公式に行われることが多く、回答はあくまでも「任意」とされていますが、何ページにもわたる詳細な質問が含まれることがあり、回答に膨大な時間とリソースを必要とします。通常これらの要求に応じなければならない法的強制力はありませんが、実際はそうした要求を無視することが組織の最善の利益にはならないことが一般的であり、次第に正式な情報収集権の行使や税務当局間の情報交換が行われるようになるかもしれません。「非公式の要求は無害と思われがちですが、将来の税務係争の前触れとなる可能性があります」とCoronadoは述べています。

今後2年間で税務調査の件数と厳しさの増大を予想すると回答した税務・財務担当幹部の半数以上(56%)は、その理由として、情報要求の頻度や詳細さが増していることや、透明性・開示要件が増加していることを挙げています。

非公式の要求は無害と思われがちですが、将来の税務係争の前触れとなる可能性があります

当然こうした情報交換は税務当局間で行われていますし、今後も行われるでしょう。回答者の半数が、各国の税務当局間での情報交換が増加すれば、税務調査活動や厳しさも増すことにつながると回答しています。


新たな税務リスク

一方、外部のさまざまな動向が企業とその税務部門に新たなリスクをもたらしています。
 

調査回答者は、企業間融資取引や移転価格に影響を与える可能性のあるインフレと金利の上昇、進行中のウクライナ情勢、環境サステナビリティ課題など、さまざまな懸念を挙げています。複数の地域で税務・財務担当幹部は、今後2年間は、過去2年間よりも複雑かつ長期にわたる税務当局とのやりとりを強いられると回答しています。


また、税務責任者は、間接税の強化や税務行政のデジタル化によるリスクも高まると予想しています。さらに、回答者の多くは、特に欧州連合やその他の国・地域で今後義務化される国別報告書(CbCR)の公開を考慮して、税務に関連する風評リスクに対する懸念について言及しています。


経済協力開発機構(OECD)の第2の柱とG20が主催する 「経済のデジタル化に伴う課税上の課題への対応」も、潜在的なリスクの主な原因として挙げられています。その理由は2つあります。1つは、現在15%のグローバルミニマム課税に対応する準備が急速に進められており、将来の係争に発展する可能性があるということと、もう1つは、それぞれの国・地域で法律が制定されると、それぞれの国・地域の税制におけるその他無数の領域との相互作用を慎重に検討する必要があるということです。税制優遇措置に関する税務調査活動は、第2の柱に照らして多くの国・地域で積極的に再構築されており、調査回答者が指摘した主なリスク要因の第2位となりました。


EY Global Vice Chair – TaxであるMarna Rickerは、次のように述べています。「各国政府は、これまでは税金を主権的な問題として捉えていました。しかし現在は、かつてない方法で連携を深め、世界的な税制改革の新たな潮流を引き起こしています。各国の税務当局も協働し、既存の税法の執行と今後の改正の準備に取り組んでいます。税務係争を回避したいのであれば、企業も準備を進める必要があります」

最高税務責任者のうち
が今後2年間で税務調査や税務係争がより多く、より厳しくなると予想しています。この数値は税務調査の件数と厳しさが増大したという2021年の報告の数値と比較すると79%も増加しています。当時は多くの税務当局が、税制による経済支援策と景気刺激策の策定に注力していました。

税務リスクと税務係争に対する戦略的アプローチの構築

本調査では、コロナ禍の後の税務リスクと税務係争環境に適応するため、すでに多くの企業が以下のような積極的な変更を行っていることが明らかになりました。

  • 税務ガバナンスをさらに強化する方法を模索する。
  • 税務リスクと税務係争を管理するグローバルなフレームワークアプローチを展開する。
  • 税務リスクの調査と評価、税務統制の管理、および進行中の税務係争の追跡を支援する専用テクノロジーの採用を進める。
  • 最も重要な税務調査、係争および訴訟などの監視と調整を含む、主要なプロセスを一元化する。
  • 特に移転価格や第2の柱で規定された新たな要件に対応した変更に関して、すべての行動が「税務調査への対応準備」となっていることを確認する。

しかし、特に税の透明性と開示アジェンダが劇的に進化していることを考慮すると、まだまだやるべきことはたくさんあります。それぞれの国・地域で納付した税金がそれらの国・地域での企業の経済活動にどのように関連しているかを示す国別報告書(CbCR)は、多くの国で公開されようとしています1。自社の税務政策やポジションが多くの報告書利用者にどのように解釈されるかを把握していない企業にとって、報告書の公開は、新たなリスク要因となる可能性があります。


第1章  第2の柱は新たなリスクの発生を助長する
1

第1章

第2の柱は新たなリスクの発生を助長する

第2の柱により、税制優遇措置と控除可能性が税務リスクの上位に押し上げられましたが、移転価格が引き続き最大の懸念事項となっています。

税務・財務担当幹部が考える、今後2年間で最大の税務リスクをもたらす執行関連事項の上位3項目として、税務調査の件数や厳しさの増大、税務当局からの情報提供要求の詳細化やその回数の増加、およびデジタル税務行政に関するリスクや不確実性が挙げられています。

税務係争の管理に業務時間の半分以上を費やしている回答者の間では、係争関連領域に関する予想が急増しています。例えばこのグループでは他と比べて2倍以上の回答者が、過去2年間と比較して、クロスボーダー問題(国際課税や移転価格など)がより注目されることになると予想しています。

国境を越えた税務リスクは依然として高い
税務当局が今後2年間で国境を越えた税務問題により重点を置くようになると予想する税務・財務担当幹部の割合

移転価格はこれまで税務・財務担当幹部の間で最大の懸念事項となっていましたが、2023年の調査でも再びトップとなり、税制優遇措置を約12ポイント上回りました。世界中のビジネスが直面するすべての税務リスクを最もよく把握しているといっても過言ではない最高税務責任者グループにおいては、移転価格は税制優遇措置を28ポイント上回っています(63%対35%)。かつてないビジネスの変化を含む外部環境の影響、初期BEPSプロジェクトおよびBEPS2.0による移転価格に対する継続的な世界的注目の高まり、税務当局がクロスボーダー取引に重点を置くようになっていることなどはすべて移転価格に対する調査の強化につながるため、これは当然の結果といえるでしょう。

こうした要因(およびその他の要因)から、非常に多くの税務・財務担当幹部(84%)が、取引の同時文書化を改善することで、全般的な税務調査への対応力を高めることができると回答しています。EY Global Transfer Pricing LeaderであるTracee Fultzは、次のように述べています。「税務部門責任者は、同時文書化には、自身が言ったこと・やったことを証明する証拠を収集することが含まれていることを認識する必要があります。各国の税務当局は、より詳細かつ多くの証拠を要求しています。つまり各国が何を要求する可能性があるかを正確に学び、証拠を収集して保持するための体系的な方法を構築する必要があります」
 

第2の柱の導入に伴う不確実性と変化

税制優遇措置がすべての回答者の中で2番目に高い税務リスクとして位置付けられている背景には、第2の柱も関係していると考えられます。多くの国がインバウンド投資とアウトバウンド拡大の双方にとって自国が魅力的であり続けるように、優遇措置の見直しを急速に進めています。費用と利息の控除可能性は、それぞれ3番目と4番目に高い税務リスクとされています。

第2の柱の多国間におけるさまざまな側面は、近い将来係争を引き起こす可能性が高いため、企業は準備を整える必要があります

税務・財務担当幹部のほぼ半数(45%)が、第2の柱によって新たな税務調査や係争の発生する可能性が高まると回答しているのに対し、減少につながると回答したのはわずか11%です。また、回答者が懸念しているのは、第2の柱に関して係争防止および解決策プログラムがどのように運用されるかについて、現在ほとんど情報がないことです。その背景には、回答者の55%が「第2の柱によって全体的な税務コストが増加すると思う」と回答していることが挙げられます。EY Global Tax Policy LeaderであるBarbara Angusは、「第2の柱の多国間におけるさまざまな側面は、近い将来係争を引き起こす可能性が高いため、企業は準備を整える必要があります」と述べています。

調査結果によると、多くの企業で準備は進んでいますが、まだ完了はしていません。回答者のほぼ半数(49%)は、自社が事業を展開する国・地域で第2の柱がどのように導入されるかをすでに把握していると回答し、47%がその仕組みについて調べている、と回答しています。税務・財務担当幹部のうち、自社が第2の柱の影響をモデル化したと回答したのは10人中4人未満(38%)で、ITシステムの準備を始めたと回答したのは29%に過ぎません。

第2の柱は、税務調査や係争を今以上に引き起こすと思いますか?
第2の柱が今以上の税務調査や係争を引き起こすと回答した回答者の割合

税務プロフェッショナルは、すでにOECDや各国政府に対して、第2の柱を巡る税務係争が発生する可能性のある多数のシナリオを提示しています。また、国境を越えた税務問題の多くに移転価格が関係していることを反映して、税務当局による移転価格調整も今以上に頻繁に行われる可能性があります。新しいグローバル税制には、新しいグローバルな係争防止および解決策となるメカニズムが必要です。納税者は、そのようなメカニズムが十分に検討され、それが確実に提供され、現地法の導入前に利用可能であることを確認したいと思うでしょう。それには既存の代替係争解決ツールの改正では十分とはいえません。
 

税務ガバナンスのテスト

第2の柱の導入は、税務当局がかつてない水準で情報を相互に共有し、主張を強めていることに起因しています。その結果、ある税務当局で成果を上げたアイデアは、他国の税務当局でも直ちに採用されることになります。これに関しては、近年、十数カ国以上が新しいコンプライアンス保証プログラムを採用していることが第一に挙げられます。

これらのプログラムは、選定された企業(通常は経済界の大企業)に一連の詳細な質問を行い、企業の納税申告書の精査とともに税務当局がリスク評価を行ってさまざまなグループにセグメント化することができます。税務調査ではないものの、これらのプログラムで通常使用されるアンケートでは、企業の税務ガバナンス戦略の効果的な機能、税務コンプライアンスへのアプローチ、税務テクノロジー、ツール、システムの使用といったトピックに関する詳細情報が要求されます。

このようなコンプライアンス保証プログラムに参加することができた企業は、その見返りとしてさまざまな特典を受けられます(プログラムの内容によっては受けられない場合もある)。その中でも最も重要なのは、法的拘束力はないものの、その後一定期間税務調査の対象にならない、という税務当局からの確約であることが一般的です。

また税務当局の体系的なコンプライアンス保証プログラムと同様の質問ではあるが、これまでよりもはるかに詳細で、体系的なプログラムの範囲外である非公式なアンケートが最近増加していると調査回答者は回答しています。例えば、正式なアンケートでは、企業が税務ガバナンスに対する全般的なアプローチについて説明するよう求める場合がありますが、非公式のアンケートでは、間接税、雇用税、移転価格などに関連して、そのガバナンスが実際にどのように機能しているかを尋ねるような質問もあります。

このような追加的かつ詳細な情報の要求は、多くの場合アンケートへの回答者である最高税務責任者が、今後2年間で税務調査と税務係争の件数と厳しさが増大すると考えている主な理由の1つです。また、これらのコンプライアンス保証プログラムは、民間と公共の両方の側面で、中小企業にも適用され始めています。従って、税務・財務担当幹部は、近い将来、同様の内容のプログラムがさらに導入され、さまざまな規模の企業でより広く適用されることを念頭に置く必要があります。このように納税者と税務当局の関係は変化しています。

これらのプログラムは、組織化されているか、非公式であるか、強制または任意であるかにかかわらず、納税者のリスクを階層別に分類し、税務当局が税務調査や係争解決のリソースをより効果的に集中させるという目的を持っているという点で共通しています。法令を順守すること、そして適切に順守することが最も重要です。


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第2章

(ニュー)ノーマルへの回帰

多くの税務当局が、コロナ禍により一時停止していた税務調査活動を再開しています。

調査結果によると、過去2年間、税務当局は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の救済措置の受益者に対する税務調査に焦点を当てていましたが、現在は従来の精査領域とハイブリッド・ミスマッチルールなどの新しい税法の順守状況にシフトしつつあることが示されています。今後2年間で新型コロナウイルス感染症に関する景気刺激策や経済支援策に関連する税務調査の実施を予想する回答者はわずか22%であったのに対し、過去2年間ですでに経験した回答者は35%でした。

EY Asia-Pacific Tax Controversy LeaderであるMartin Capliceは、次のように述べています。「税務当局は、移転価格、クロスボーダー取引、間接税コンプライアンスなど、より身近な領域に重点を置いており、税務執行の優先領域は、急速により典型的なものへと移っています」

税務執行の優先領域は、急速により典型的なものへと移っています

新型コロナウイルス感染症に端を発した「どこにいても仕事ができる現象」は、税務・財務担当幹部の間でも懸念されています。調査回答者の29%が、遠隔地にいる従業員が無意識のうちにある国・地域に恒久的施設(PE)を造り、当該国・地域での納税義務が発生するという非常に重大な問題など、今後2年間で「どこにいても仕事ができる」という方針を巡る新たな税務係争の発生が予想されると回答しています。これは、過去2年間にすでに経験したと回答した24%から増加しており、注視すべき領域です。
 

間接税リスクの高まり

税務・財務担当幹部は、間接税を巡るリスクも高まっていると指摘しています。回答者の42%が、税務当局による業務やPE問題への注目の高まりなどを含む、付加価値税の課税ベースの拡大を懸念事項の上位に挙げています。また、回答者の36%が、低税率またはゼロ税率の適用を立証する文書(配達証明や顧客のライセンスなど)の欠如が懸念事項であると回答し、35%が、間接税リスクの第3位に挙げられたデジタルサービス税(理論上はBEPS2.0交渉の結果撤回される予定)を懸念事項として挙げました。

EY Global Indirect Tax LeaderであるKevin MacAuleyは、次のように述べています。「間接税は、危機的状況にある政府にとって、しばしば頼りになる歳入源です。多くの国が新型コロナウイルス感染症において間接税率を下げ、免税範囲を拡大しましたが、現在は反対に振り戻し、税率はともかく課税ベースを拡大し、間接税の種類を増やし、税務執行を強化しています」

調査結果では、他にもいくつかの税務リスクや税務係争の要因が残っていることを示しています。その例は以下の通りです。

  • 回答者の24%が、今後2年間で税務当局による刑事罰や訴追の警告や実際の適用が増加すると予想しています。
  • 回答者の29%が、税務係争の結果起こり得るビジネスに対する風評リスクを懸念しています。
  • 回答者の43%が、組織全体のガバナンス構造における税務の位置付けが社内で明確でないことが、税務に関連する最大のビジネスリスクであると回答しています。
  • 回答者の37%が、現地法人のプロフェッショナルが組織の税務プロセスに準拠していないことが、2番目のビジネスリスクであると回答しています。
  • 回答者の32%が、事業再編に伴う税務上の影響が課題であると回答しています。

第3章  税務ガバナンスの適正化
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第3章

税務ガバナンスの適正化

適切な人材、ポリシーおよび統制を導入することで、税務リスクをより適切に管理し、新たな税務係争を抑制することができます。

外部要因に起因するものであれ、内部の機能不全に起因するものであれ、これらのすべてのリスクは税務ガバナンスを改善することでより適切に管理することができます。この領域は、税務リスクを適切に管理し、税務係争の発生を抑えたいグローバル企業が、最初に着目すべき領域です。

人材、政策、プロセスおよび統制に焦点を当てた税務ガバナンスの改善により、以下の3点を達成することができます。

  • 第1に、税務係争を管理するグローバルなフレームワークアプローチの支えとなり、税務リスクを早期に特定し、発生する税務係争を効果的に管理できるより良い環境を整えることができます。
  • 第2に、税務をESG関連の目的など組織の幅広い目的により近づける機会を創出し、複数のステークホルダーの信頼度を向上させるだけでなく、税務部門に追加の予算とリソースを確保することもできます。
  • 第3に、世界中の税務当局が現在採用している無数のガバナンス重視のプログラムへの企業の対応をサポートすることができます。

多くの税務・財務担当幹部は、税務ポリシー、ポリシーの詳細・手続きのマニュアル、また誰が何を、いつ、どこで、どのように行うかを定義する説明責任マトリックスに至るまで、税務ガバナンスに必要な多くの項目を整備していると回答しています。これらのすべてが、税務リスクと税務係争をより効果的に管理するためのフレームワークアプローチの要となります。

税務におけるグッドガバナンス
の回答者が、今後2年間で組織全体として税務ガバナンスに対する取り組みを強化すると予想しています。

項目を整備するのも1つの手段です。また、それらを互いに、そしてビジネスの他の部分と調和させながら、継続的に実行するという手段もあります。ここで調査回答者は、実行面で調和の取れていない領域について明らかにしています。

まず、運用の観点から、税務プロセスやプロトコルは、企業のビジネスラインやサポート部門と緊密に連携して相互作用を図る必要があり、それぞれが企業全体のガバナンスアプローチに従う可能性があります。従って、このような幅広い戦略との整合性は、税務部門にとって必須であるといえます。しかし、税務・財務担当幹部のほぼ半数(43%)は、税務が組織の幅広いガバナンス構造の中でどのように位置付けられるかが明確ではないと回答しています。これは税務部門の有効性を損なう可能性があり、調査回答者が特定したビジネスリスクの中で最も高いリスクとなりました。

次に、税務部門は、幅広いビジネス上の意思決定や活動との強力な関係やコミュニケーションを維持する必要があります。しかし、多くの最高税務責任者は、税務部門がこの目標を達成できていないと回答しています。例えば、最高税務責任者グループの61%は、ビジネスモデルの変更、新製品や新サービスなど、事業活動の重要な変更に税務部門が関与することはめったにない、時々ある、または全くないと回答しています。同様に、このグループの半数以上(60%)は、自社の企業構造の変更や自社が進めるM&A取引のいずれにも、税務部門が関与することはめったにない、時々ある、または全くないと回答しています(58%)。

最後に、現地法人の財務担当者による企業の税務プロセスの順守は、効果的な税務ガバナンス、ひいては税務リスクと税務係争を管理する鍵となります。これがしっかり守られていないと、しばしば「影の税務部門」と呼ばれている現地法人の担当者は、自社に幅広い影響を及ぼす可能性のある進行中の税務リスク、税務係争、または訴訟案件を操作しようとする誘惑に駆られる可能性があります。税務・財務担当幹部の82%は、この領域をコントロールすることができれば、企業にある程度のまたは大きな効果をもたらすと回答しています。

税務・財務担当幹部の69%が、今後2年間で組織全体として税務ガバナンスに対する取り組みが進むと予想しています。税務リスクと係争の新たな潮流は、ガバナンスに関する税務当局の新たな要件と相まって、組織の現在の税務ガバナンスモデルのレジリエンスを問うことになります。そのため税務ガバナンスに対する取り組みは非常に重要です。

税務におけるグッドガバナンスとは

企業の規模に応じて、税務係争の責任者(またはグループ)を指名する

現在、多くの企業が税務係争を担当する役割やグループを新設しています。これらは通常、税務部門の他の部分から十分に連携しながらも独立した部門として、日常的な係争の積極的な管理を支援します。このような役割を設定することで、従来そのような活動を担当していた税務部門責任者へのプレッシャーが軽減されます。税務・財務担当幹部の50%が、税務部門に税務係争の責任者を指名していると回答し、回答者の81%が、そのような役割を設定することで「ある程度のまたは大きな」効果をもたらすと回答しています。

税務リスク委員会またはセンター・オブ・エクセレンスを設置する

このグループは通常上席の税務プロフェッショナルで構成され、各税目や各地域を担当します。意思決定のしきい値の定義、重要な取引に係るリスクのレビュー、税務リスク管理、税務統制、協力的コンプライアンスに関する戦略の定義など、税務リスクと税務係争に焦点を当てた活動を行います。税務・財務担当幹部の38%が、過去2年間にこのようなグループを設置したと回答し、34%は今後2年以内に設置する予定であると回答しています。

実効性のある税務管理体制(TCF)を整備する

TCFは内部統制システムの重要な要素であり、税務方針、説明責任、税務・財務担当者が順守すべきすべての統制、プロセスおよびプロトコルを含む幅広いコンテンツを包含しています。現在、多くの企業が税務当局の新しい要求に応えるため、中央TCFを定義または強化し、必要に応じてローカライズやカスタマイズを行っています。

主要プロセスを一元化する

現在多くの企業で、税務調査や税務係争が発生した場合に、現地法人のプロフェッショナルが本社税務チームに報告しなければならないしきい値を定めています。本社チームはそのような税務係争に対して完全な責任を負うことはできませんが、それでも、現地のリソースとチームを組んで、より高い水準で共同監視と調整を行います。

明確なコミュニケーションプロトコルとエスカレーションプロトコルを策定し、経営幹部に定期的な税務ブリーフィングを提供する

税務リスク環境と企業の財務・風評のすべてのエクスポージャーについて、経営層(多くの場合取締役会や監査委員会)によるレビューと承認のために問題を適切に報告し、判断を仰ぐことは、上級意思決定者との関係を維持するための重要な要素です。 

企業のESGへの幅広い取り組みとの整合性を取る

税務におけるグッドガバナンス、特に税務係争は、ESGの「G(ガバナンス)」に関連する企業目標を達成するための最初のステップとなる場合がよくあります。しかし、税務部門が企業のESG戦略に完全に組み込まれていると答えた回答者は、わずか22%でした。

税務・財務担当幹部は、税務リスクと税務係争に関連する税務ガバナンスモデルをいくつかの方法でテストすることができます。1つ目は、推奨することはできませんが、新たな係争が発生するかどうか様子を見ることです。2つ目は、オーストラリア、ドイツ、オランダ、ニュージーランド、英国などが管轄している強制的な税務コンプライアンス保証プログラムにすでに参加している企業においては、自社のモデルの厳密さに関して税務当局から定期的なフィードバックを受けることができます。3つ目は、シンガポールやマレーシアのように、ガバナンス能力の有効性をレビュー・テストすることができる多くの自主的な税務当局プログラムの1つに参加することです。

税務・財務担当幹部は、一般的にこのような自主的なプログラムに前向きな見解を持っています。回答者の59%が「利用できる場合はある程度参加する、または参加する可能性が高い」と回答し、22%が「すでに参加している」と回答しています。「ある程度参加する、または参加する可能性は低い」と回答した回答者は、わずか19%でした。


金属板を切断する工業用CNCプラズママシン
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第4章

適切なデータで税務リスクと税務係争を効果的に管理する

デジタルツールを活用することにより、税務調査をグローバルに追跡し、次の係争が発生する場所を予測することができます。

より良いデータを活用することは、税務ガバナンスモデルに税務リスクと税務係争を効果的に管理するための洞察を備える重要な方法です。これは、優先的に取り組むべき2つ目の領域です。

税務係争の専門家に税務・財務データを全般的に管理する責任はありませんが、彼らプロフェッショナルは、常に適切なデータが利用できるということに対して強い関心を寄せています。税務申告後にデータや証拠を追加で入手して説明するよりも、常に正確なデータに基づいて納税申告を行うことが望ましいでしょう。

税務部門は、おそらく何よりもまず適切に時間をかけて正しいデータを事前に特定し、税務調査や検査が行われる際にはそのデータに迅速にアクセスできるようにする必要があります。Fultzは、次のように述べています。「移転価格の観点から見たより良いデータは、さまざまな情報源に関連しています。一般的に、税務部門は詳細かつ正確な財務情報、法的契約、ビジネス文書などを必要とします。このようなデータ要求は調査の早い段階で行われますが、財務データ要求への対応が遅れると、調査関係に取り返しのつかない損害を与える可能性があります」。

次に、税務部門は、活発な税務調査や税務係争に関するより良いデータと洞察を必要とします。そのためには、データが正確かつ最新で、再現性があり、利用可能である必要があります。

Coronado は、「また税務部門責任者は、最大または最も喫緊のエクスポージャーがどこにあるかを理解するために、税務係争を完全に把握することを望んでいます」と述べています。しかし、調査結果は、多くの企業がこの目標に達していないことを示しています。世界中のすべての税務係争を「完全に」把握しているのは回答者のわずか25%に過ぎず、2021年の調査(24%)とほぼ同じでした。「おおむね(税務係争の75%以上)」把握している回答者は半数弱(45%)で、「部分的(税務係争の25%から75%)」に把握している回答者は26%でした。

可視性の欠如
世界中のすべての税務係争を完全には把握できていない税務・財務担当幹部の割合

その理由の1つとして、可視性を高めるには、データを解釈し管理できる適切な担当者にデータを伝達する適切なプロセスを導入する必要があることが考えられます。要するに、より一元化された税務部門では、通常税務チームのメンバーではない現地のプロフェッショナルに、税務係争に関するデータを提供してもらう必要があります。

また、税務係争を正確に追跡して取得したデータを分析することで、将来の税務調査が、どこで、どのトピックで行われるかを予測できる新たな洞察を得ることができれば理想的です。

また、税務部門責任者は、最大または最も喫緊のエクスポージャーがどこにあるかを理解するために、税務係争を完全に把握することを望んでいます

EY Global International Tax and Transaction Services Controversy LeaderであるJoel Cooperは、次のように述べています。「強固なデータ戦略を実行するということは、税務調査や検査にタイムリーに対応できるということだけを意味するのではありません。より広義には、組織によるクリーンでセグメント化された正確なデータへのアクセスが向上すればするほど、戦略的な問題(新しいリスクの特定と管理に積極的に取り組み、税務係争に発展するのを防ぐなど)に費やす時間を確保することができます」
 

納税者データの公開

アクティビストや一般市民がこの複雑かつ要約された情報を解釈しようとする際に発生し得る風評リスクを考慮すると、国別報告書(CbCR)が多くの国・地域で近く公開されるという見通しは、回答者にとって特に懸念事項となっています。その結果、税務部門責任者は、新しい国別報告書が公開された際に、国別報告書と既存の公開情報(詳細説明やすべての税金・社会貢献モデルなど)をすべてレビューする継続的なプロセスを構築する必要があります。これは税務部門にとって大きな負担となるため、データ関連業務の一部またはすべてを自動化することが重要になります。

今後、税務係争の専門家は、データサイエンスを十分に理解し、税務係争の目的をサポートするためにどのようなデータが利用可能かを明確に可視化し、必要に応じて税務部門のデータ戦略(および運用)の変更を指示する権限を持つ必要があるでしょう。


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第5章

税の確実性の追求

政府のプログラムを採用することで、税務係争のライフサイクルの早い段階から積極的に行動することを検討する必要があります。

一般的な不確実性の原因は、企業の規模を問わず、特定の年度にどれだけの税金を納める必要があるか分からないということです。本調査では、短中期的に不確実性が高まることで、多くの企業が多額の税金引当金を計上する必要性が示されています。極端なケースでは、税務係争や税務訴訟がきっかけとなり、財務諸表の修正再表示が必要となる可能性もあります。

その結果、多くの企業は、税務係争を未然に防止するために、あるいは発生した税務係争に適切に対処するために、常に税の確実性を高めることに取り組んでいます。確実性を高めるには、企業内の活動だけでなく、多くの税務当局が提供するさまざまなツールやプログラムの採用も検討する必要があります。強力なガバナンスと優れたデータを備えた税務部門責任者は、事前の確実性を実現する最適な立場にあります。

Cooperは、次のように述べています。「企業は納税義務があることを理解していますが、実際にどのような義務があるのかが明確でないことにより、実際の納税額よりも大きな負担を強いられることがよくあります。このような不確実な世界で税の確実性が得られるというのは、逆説的なようですが、確実性を高める方法は必ずあります」

まず税務部門の内部活動に目を向けると、調査回答者は、税務リスクが税務係争に発展する前に、より積極的に税務リスクを特定し管理することが、今後2年間で税務部門に最大の効果をもたらすと回答しています。企業規模が大きいほど、その見解に賛同する傾向が高くなっています。

税務リスクの管理においては、効果的な税務リスク評価プロトコルを確立することによって、まずそのようなリスクを特定できることが前提となります。繰り返しになりますが、この領域で成功するには、本社の税務部門リソースだけでなく、現地の税務・財務担当者との協力も必要です。

このような不確実な世界で税の確実性が得られるというのは、逆説的なようですが、確実性を高める方法は必ずあります

新たなリスクを特定したら、係争のライフサイクルからそのリスクを追跡することが重要です。すでにその対応に積極的に動いている企業は、通常以下の3つの重要な活動を一定の順序で完了させています。

  • まず、税務リスクの「管理簿」を作成します。管理簿を作成することにより、税務責任者や税務係争管理者は、本社と現地の事業体レベルの双方で新たな税務リスクについて注意喚起することができます。税務・財務担当幹部の83%は、このようなリスク管理簿を採用することで、ある程度または大きな効果が得られると回答しています。
  • 次に、税務リスク評価結果を税務リスク管理プロセスに結び付けます。そのためには、企業内税務管理の修正や、事前確認制度(APA)などの税務当局ツールを利用する必要があるかもしれません。
  • 最後に、リスク評価結果を用いて、税務調査が可能で透明性があり裏付文書作成の必要がある取引を特定します。税務・財務担当幹部の84%は、特定の取引に関する同時文書化を改善して全般的な税務調査への対応力を高めることで、組織にある程度または大きな効果をもたらすと回答しています。
回答者の
が、税務リスク「管理簿」を採用することで、税務部門にある程度または大きな効果をもたらすと回答しています。

防止は是正に勝る

多くの税務当局は、対外的に、納税者が提出した申告書が調査されることはないという、税の確実性(必ずしも法的確実性ではない)を高い水準で達成できる各種プログラムを提供しています。

これらのプログラムは、申告前と申告後の両方を対象としています。事前申告プログラムには、タックスルーリングやAPAの活用が含まれ、回答者の80%が、1つ以上のAPAを活用することで、ある程度または大きな効果が得られると回答しています。第2の柱の導入に先立って新しいAPAを積極的に活用しようとしている企業が多いことを考慮すると、これは当然といえるでしょう。

また、オランダの水平的モニタリング制度のような国家レベルのコンプライアンスプログラムや、現在22の国・地域で採用されているOECDが支援する国際コンプライアンス保証プログラム(ICAP)のような多国間のコンプライアンスプログラムなど、さまざまな協調的なコンプライアンスプログラムを申告前に利用することができます。しかし、明確に定義された積極的かつ協調的なコンプライアンス戦略を現在実行しているのは、回答者の半数未満(48%)でした。

税務係争は、最善の努力を尽くして防止しようとしても、しばしば発生するものです。税務当局が要求する文書の種類や範囲は急速に拡大していますが、税務・財務担当幹部は、税務当局の要求に対応するには、まだ課題が残されていると指摘しています。例えば回答者の約54%は、ある取引が税務調査を受けた場合に提出することができる実態または事業活動に基づく税務文書ファイルを現在作成・整備していないと回答しています。偶然にも同じ割合の回答者が、重要な取引を選定し、定期的に裏付文書をレビューしていると回答しています。これは、回答者がもっと時間をかけて検討した方が良い領域の1つです。

税務係争およびその影響により、税の確実性は飛躍的に低下するとみられます。従って、積極的な税務責任者は、税務係争の開始時および係争中に、税の確実性を高めるために何ができるかを検討する傾向にあります。例えば、税務・財務担当幹部は、税務調査開始前に、税務当局の懸念や目的をより深く理解するよう努めることが最優先事項であると回答しています。彼らはまた、いかなる場合でも複数年、複数の国・地域の「レッドフラグ」と波及効果の可能性を考慮したものであることを確認するプロセスを整備するでしょう。最後に、積極的な税務責任者は、現地の税務調査プロセスや文化的アプローチについて可能な限り多くの知識を得た上で、それぞれの税務調査や税務係争に参加します。
 

解決策を探るには遅すぎるということはない

意見の相違が新たな税務評価につながる場合、税務係争解決プログラムは、より高い水準の税の確実性につながります。国境を越えた二重課税係争を解決し、二重課税を防ぐ中心となる手段は、相互協議手続(MAP)です。

MAPは、企業がこのような税務係争の解決に利用できる主要ツールの1つですが、ピアレビュー(BEPS Action 14に基づく)により、所管当局の構造や組織に関する変更が促進され、MAP案件をタイムリーに解決するプロセスが合理化されました。

OECDの取り組みの成果は、徐々に目に見え始めています。税務・財務担当幹部の37%(2021年の調査より1ポイント高い)がMAPを活用していると回答していますが、この割合は大企業の間で伸びています。しかし、MAPは移転価格や利益配分にとどまらず、課税権に関するさまざまな問題に対応できることを知らない企業も多いでしょう。第2の柱などの動向を踏まえると、MAPの検討はより重要になると思われます。

納税者と税務当局の間で合意が得られない場合、税務訴訟が唯一の方法となることがあります。しかし、回答者の3分の2近く(64%)が、明確な税務訴訟戦略を定めていないと回答しています。

今後、第2の柱の導入、国別報告書の公開、そして現地での多くの新しい透明性や開示要件の導入に向け、より高い水準の税の確実性を達成するためのあらゆる努力が最も重要になります。
 

不確実な世界における確実性

現在、多くの税務部門は、係争プロセスの一元化と統合を進め、方針と統制をローカライズし、明確に定義された税務係争の役割を定めています。これらの活動は、現地のプロフェッショナルから責任を取り上げるのではなく、リスクの特定と管理、およびエクスポージャーの回避において、より緊密に協力し合うことを目的としています。

不確実な世界で、ある程度の税の確実性を確保することは、ただ座して最善を望むよりも安全かつ賢明で戦略的であるといえます。強固な税務ガバナンスのフレームワークを通じてビジネスとより密接につながり、最新のデータ機能を活用する税務部門は、ESG、長期的価値、企業の保護など、組織全体の目標に対してより多くの効果をもたらすことができる立場にあります。そしてそれは、リスクをチャンスに変えることにつながります。 

  1. 欧州連合加盟国27カ国およびオーストラリア全体

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