米国公共水道事業の官民パートナーシップに関する三つの質問
公共水道事業における官民パートナーシップの活用はいまだ限定的。EYと米国水道協会の調査で、その理由の一部が明らかに。
民間デベロッパーや投資家たちは長年、米国の公共水道セクターにおいて有意義な官民パートナーシップ(P3)プロジェクトが実現することを慎重ながらも楽観視してきました。実際に進展も見られ、開発中のプロジェクトの数も増えてはいますが、市場はいまだ将来性を期待されているに過ぎません。水道事業においてP3の活用が限定的である理由を探るため、EYは米国水道協会(AWWA)と共同調査を実施し、全米で水道事業に直接携わる各種関係者から意見を募りました。
調査では、AWWAの会員(米国内の飲用水の約80%を供給する公共事業者のほか、環境保護団体、科学者、学者を含む)を対象に、以下の三つの質問に答えてもらいました。
1. P3実施モデルに関心を持つ主な要因は何か。
最も重要な要因として挙げられたのは技術的イノベーション でした。回答者らは民間セクターの参加により、プロジェクトが技術面、運用面で向上することを重要視しているようです。
リスク移転 も重要な要因と考えられています。特に、公共セクターの支払いを民間セクターのパフォーマンスに連動させるパフォーマンスベース契約を採用することで、設計、建設、運用に係るリスクを移転できるという利点があります。
メンテナンス延期リスクの軽減 も挙げられました。資源が別の目的に流用され、メンテナンス延期が度重なった結果、現在多くの水インフラ資産が老朽化に直面していますが、こうしたことを防ぐ上でP3の実施が重要な役割を果たし得ると回答者らは考えています。
2. 水道事業でP3の活用を成功させる上での主な障壁は何か、どうすれば克服できるか。
この質問に対して多く挙げられた回答は、P3の費用とメリットに対する利害関係者の疑念や懸念、資産の技術的な管理権限を第三者に譲渡することへの抵抗、組織上層部の支持や政治的支援の不足などでした。
その他、P3プロジェクトを評価、構築、調達、交渉するための管理職人材や経験の不足、P3の構造に関する財務・法務面での理解の不足といった課題も指摘されました。
3. 今後、米国の水道セクターでP3の採用に最も適していると考えられる分野はどこか。
さまざまな障壁にもかかわらず、60%の回答者は、自らの資本計画における個別のインフラプロジェクトでP3を採用することに積極的な関心を示しています。
P3の実施に最も適していると考えられている分野は、新規建設される水道、廃水、エネルギー回収、再利用インフラなどでした。
本調査の全体的な要点を以下に示します:
- P3に対する考え方は、理解が深まるほど好意的になる
- 利害関係者はP3実施モデルの汎用性について懐疑的であり、P3によるリスク移転の価値が発揮されるほどの規模、技術面・運用面の複雑性、およびリスク特性を有するプロジェクトは一部のみだと考えている
- 新しいことを試すには客観的かつ熟慮された根拠が必要だが、実務的なガイダンスが不足している、他の公共事業体の考えがわからないといった声もある
- 公共セクターだけでは実施できないインフラプロジェクトに民間セクターの人材、スキル、経験および規律を取り入れることにより、既存の公共サービス提供を代替するのではなく補完するP3が最も好まれるようである
- 米国の水道セクターが高度な廃水処理、エネルギー回収、処理済み廃水の飲用再利用、淡水化、およびその他の複雑なインフラへの投資を拡大している中、こうした多数の重要プロジェクトの進展においてP3は大きな役割を果たすだろう
- 水道セクターでP3を前進させるのに必要なことは三つ
- P3を実施モデルとして採用することが本当にメリットとなる場合には公共事業の利害関係者がそれを実行できるよう、サポートする
- 成功とみなされた契約を通じてP3の予測メリットが実現されるよう、適切な取引構成、効果的な調達および契約構築によってプロジェクトを成功させることに注力する。多くの回答者は、成功するためのさまざまな前提条件を認識しているが、それらを完全に実行することができないため(当然ながら)P3の採用に消極的である
- 公共事業機関の成功が良い前例・見本となり、他の機関がその後に続いていくポジティブ・フィードバック・ループを作り出す
サマリー
EYと米国水道協会の最新調査では、インフラプロジェクト開発における官民パートナーシップの採用をめぐる関係者の姿勢や障壁を理解するため、三つの主要な質問への回答を求めました。
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